20代にイギリス文化を研究する環境に偶然、身を置いて以来、 その面白さに魅了されてきたのだが、 2年ほど前に「RRR」を見たときに世界が反転する衝撃を受けた。

ジェントルマンシップという倫理は、時代に応じて変化する。19世紀の「植民地開拓」時代のジェントルマンシップは 男性のエゴイスティックな暴力的征服欲を覆い隠すための美装という一面をもった。「RRR」は、 そんな「紳士の裏側」をインド側の視点で見せてくれたのだ。

これまでも「紳士の闇」や「紳士の醜悪」を告発する小説や映画はあったが、 イギリスの内部からだった 。「植民地」側からスケール大きく見せた意義は絶大だった (酷い描かれようをしたイギリス人も「RRR」を高評価していたのが救い)。

何かを研究するのに一点、深堀りもいいのだが、 視野を広げれば広げるほど、見え方が変わってくる。 反対から、上から、下から、広い視野をもつことで全体像に近づける。

全体像に近づくことで、矛盾だらけの人間に対する理解も深まる 。ただの「好悪」が、すべてをあきらめと共に受け入れる「慈愛」に変わることがある。

不毛な争いの要因の一つは、あらゆる角度から知ろうとする態度の欠如にあると思う。

もちろん、知る努力を尽くしたうえでどうしても対立せざるをえないこともあるだろう。現代はそんな争いがあちこちで増えてきたようにも見える。

 

そんな分断に悲しくなったときにも、「RRR」は癒しのパワーを発揮しますね。

写真は近所の公園です。葉の色の変化が青空に映える季節になりました。

0 返信

返信を残す

Want to join the discussion?
Feel free to contribute!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です