ここ一年以上、『「イノベーター」で読むアパレル全史 増補版』(仮タイトル、6月刊予定)にもっとも多くのエネルギーを割いています。ファッションを巡る状況が5年前から激変しており、多くの重鎮が亡くなり、多くのクリエイティブディレクターが去る一方、日本のアラフォー男性を中心に世界を舞台として目覚ましい活躍をするデザイナーやディレクターに注目が集まるようになっています。

ラグジュアリー・コングロマリット間の格差も大きくなるとともに、デザイナーが単なる「金をもたらす駒」として扱われるケースも少なくないことが明らかになるにつれ、むしろ経営者に脚光があたるようになっています。

すべての方々を取材できるわけではないのですが、可能な限り、一人一人、一社一社にインタビューをしたり史実の確認をしたりしていると、予想以上に時間がかかってしまっています。

ただ、その過程はとても充実しており、話を聞けば聞くほど、書けば書くほど、ファッション史を書くとはデザイナーが服にこめた物語をひもとくことでもある、という確信が強くなっていきます。真剣にそんなファッションを創りだす方々への敬意や愛情が深くなっていきます。

浮沈の激しい業界にあって長く仕事を続けている人に共通するのは、あたたかな人間性と一貫した強いビジョンです。作品や言葉からはこぼれ落ちそうな些細なコミュニケーション、表舞台には見えない対応に、彼らの誠実さ、やさしさとともに、一貫性のあるビジョン(人間観といってもいい)が表れることを実感し、作品を見る目も変わっていきます。

このプロセスは、長い長いトンネルではありますが、ファッションを通して人や社会を学ぶまたとない貴重な機会になっています。

それぞれにご多用のなか、親身になって、惜しみないご協力をくださっているデザイナー、ブランド、企業には感謝してもしきれません。よりよい完成版を出すことが恩返しになると信じています。

(掲載を拒否されたブランドさんも複数ありました。現代ファッション史の大切なピースが欠ける悲しさは書き手としてはありますが、それぞれご事情がおありと思うので恨みません。ご発展をお祈り申し上げます)

 

この本を終えたあとにも3つほど、長年温めている本の企画があります。AIが何でも書いてしまう時代からこそ、AIには書けないニッチを極めたいところではあります。

 

写真は10年来、毎年お花を贈ってくれるお弟子さんからのお花。ありがとうございます✨

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