アカデミー賞授賞式。昔ほど熱心にフォローしていないのですが、アダム・サンドラーがブルーのスウェットパーカで出席し、ドレスコードを派手に破って追い返された「シーン」が印象的でした。帰り際にサンドラーが抱きついたのは、全身黄色いスーツのティモシー・シャラメ。
一瞬でしたが、視覚的なインパクトは明白。ブルーとイエローのふたりでウクライナ―カラーを作っていたのです。
前々日には、ウクライナのゼレンスキ―大統領がホワイトハウスに赴き、「スーツ着てないのは失礼」という趣旨の指摘を記者から受けていました。
(この件については、今週末の日経連載「モードは語る」で書きました。8日に掲載されます)
タキシード着てなくて追い出されたサンドラーとシャラメのメッセージ、スーツ着ないで追い出された大統領に届いたかな。
さてもう一点、ちょっと残念だったのがデミ・ムーアに主演女優賞がいかなかったこと。
前日に「サブスタンス」の試写を見ました。すさまじい狂気とSF的グロテスクに瞬きもできないほど見入ってしまいました。ルッキズム・エイジズム・承認欲求がもたらす未来を描くホラーですが、ホラーを通り越して最後はジョジョ味も加わった阿鼻叫喚。あらゆる感情を分離不能なほど沸騰させ、狂気爆発の花火が揚がる感がいっそ痛快な、これが映画的感情だったなあと思い出させてくれた世界。ひとえに演技を超越した内臓さらけ出しを見せるデミ・ムーアの迫力ゆえです。
そんなデミにまたしてもオスカーが行かず、若い女優にもっていかれた。映画の内容そのもので皮肉さえ感じました。
これほど限界を超えてがんばっても、不当と思われる評価に終わってしまうこともある。内心、悔しくて辛いだろうな。とはいえ、彼女の復活と貢献は多くの人の心をつかんだと思う。究極におそろしく醜く悲しい姿(演技においては誉め言葉)を見せてくれて……ありがとうと伝えたい。彼女の勇気と覚悟そのものに力をいただいた。
*写真は東福寺の庭園。水の流れと波紋を表現しているという。見る人によって受け止め方も変わってくると思いますが、すべては流れ続けてダイナミックに変化していく、同じ瞬間はなく変わり続ける、という無常観を感じ取りました。
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