明治神宮大全に収録予定の「婚礼のモード」のための研究メモその2です。石井研士先生『平成以後の結婚式の併用と儀礼文化の現在』を関連事項に絞って要約。

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戦後から平成期までの結婚式の姿を通じて、社会の価値観や儀礼文化の変容を描き出した論文。

戦後復興期には、神社での神前結婚式が都市部でも定着し、結婚式は「家」と地域社会の秩序を確認する重要な儀礼であった。やがて高度経済成長期に入り、結婚式は「家の祭典」として豪華化が進み、1970年代後半には玉姫殿の「ゴンドラ演出」に象徴されるような「派手婚」が注目を集める。テレビ番組でも空中や船上での「アイデア結婚式」が話題となり、結婚式は見世物的な消費イベントとして進化していった。

ところが、1980年代から1990年代にかけては、新たな個人主義の波と女性の自己決定意識の高まりにより、結婚式の意味が急速に書き換えられる。従来の「家のしきたり」から解放されるように、チャペルウェディングや海外挙式が急増。結婚式は新郎新婦の個性を演出する「自己表現の場」へと変貌する。

そして平成期に入ると、一転して「ナシ婚(結婚式を挙げない婚姻)」が注目されるようになる。若い世代では、形式的な儀礼に価値を見出さない傾向や、経済的負担への懸念から結婚式を省略する例が増加。これは単なる合理化ではなく、社会の流動化や個人の価値観多様化を映し出す現象として位置づけられる。

著者の石井先生は、こうした「派手婚」と「ナシ婚」という両極の現象が、いずれも儀礼文化の「空洞化」ではなく、むしろ結婚という人生の通過儀礼をめぐる新しい物語の模索であると論じる。豪華演出であれ簡素な式の放棄であれ、結婚式は個人の幸せの演出であり、社会的役割を再確認する場として依然として重要であると結論づける。

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この流れの中に、ダイアナ妃のあのウェディングドレスや、キャサリン妃のドレス、そして桂由美先生の革新的な和装ウェディングドレスが位置付けられるわけですね。おぼろげに関連が見えてきました。

*写真は明治記念館 螺旋階段の下から衣装室を見上げた図 筆者撮影

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