セルジュ・ルタンスの新作「ラ・ニュイ・トンベ」発表会。銀座・資生堂のサロンにて。

La Nuit Tombéeとは、「夜が降りる」という意味。 昼が静かにその座を譲り、最初の星が宿るまでの、あの捉えがたい一瞬を香りにした作品です。84歳を迎えたルタンス自身が綴ったテキスト全文が淡々と朗読されるという文学的な時間。香りと言葉のみごとな響き合いにより、「夜」に向かうかなしみとあきらめと切なさの混じる感情が搔き立てられました。


「すべての終わりには始まりの気配が宿る」。過去を手放し、未来を迎え入れる黄昏のひとときを香りにすると、こうなるのか…という未体験の香りの世界。

中心にあるのはオリバナム(乳香=フランキンセンス)。古代には黄金より貴いとされ、神聖な場で焚かれてきた樹脂です。

香りはピンクペッパーの弾けるトップから乳香へ、奥にはスモーキーなアンバーレザー、シダーウッドとパチュリが奥行きをつくる。「ネオ・シプレ」と呼ぶべき構築です。肌の上で秘密を囁くような佇まい。

ルタンスにとって香りは「読むもの」であり、一つの香りが一つの物語として構想され、言葉と香りが互いを照らし合うように作られています。だからこその朗読。

1992年「フェミニテ ド ボワ」以来変わらぬ、影と光・抑制と大胆さのあいだの緊張感が、ここにも確かにあります。

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