ブルネロ クチネリのアートサロン。2021年の開店以来、「日本とイタリアの文化が交差する場」として、半年ごとに新たな作家がフィーチャーされてきました。

今回披露されたのは、現代美術家・宮島達男さんの「時の海・東北」プロジェクトです。

宮島さんのLEDは、9から1へと数え、0で一瞬の闇に沈み、また灯ります。生まれ、生き、死に、再び生まれる——その光の「固有の時間」を、東北の人々が一人ずつ決めていきます。0歳の子から89歳の方まで、めいめいの速さに、それぞれの思いを託して。

今回サロンに置かれた一作は、その数字をあえて止めたもの。3.11のあの瞬間、誰かが抱えた記憶や感情を、そっと留めているかのようでした。

構想は、海の見える福島・富岡の丘に、3,000の光を宿す美術館を建てること。3,000とは、仏教で全世界を表す数だといいます。建築は、土地の記憶に耳を澄ます田根剛さん。完成は2029年を見据えています。

クチネリは2015年から東北と歩み、震災を「忘れない」ための行動を静かに重ねてきました。魂が真善美を思い出すというプラトンの「アナムネシス」を掲げるブランドにとって、記憶を呼び覚ます器を支えることは、ごく自然な選択だったのでしょう。


服に哲学を託すメゾンと、数字に生命を託す作家。言語は違いますが、問いは同じです。あの日の思いを、私たちは忘れてはいないか。


「時の海 – 東北」プロジェクト 現代美術家 宮島達夫 展覧会

期日:5月31日~12月31日
(9月1日~4日は作品入れ替えのため休館)
場所:ブルネロ クチネリ表参道店B2F

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