「ゴシップガール」シーズン1のボックス2をすべて見終える。
狭い社交界のなかでの駆け引きと仲間意識と虚栄と恋と友情と陰謀と家族愛がぐるぐるにねじりあいあって、さらにヒートアップ。ブレアとジェニーのバトルの行方が二転三転するさまに目が離せない。目の上のたんこぶを蹴落とすための、おそろしいワナをしかけていくブレアの率直な邪悪さが、なぜか憎めない。ブレアに振り向かれない腹いせに、ブレアを陥れるメールを流布させながら、「誰からも相手にされなくなったお前には魅力がない」と足蹴にするチャックの正直さが、なぜか「そういうものだろうな」と腑に落ちる。偽善のかけらもない。洗練された社交界を舞台に、野蛮に近い人間心理の闘いが展開する。親同士が恋愛したり結婚したりという複雑な関係も加わり、このくだらないかもしれない世界の異様な面白さはなにごとだろう、と引き込まれる。すっかり製作者のワナにはまり、シーズン2のボックス1&2を予約注文。
感覚のバランスをとろうと思ったわけではないが、たまたま知人が薦めてくれていて積読中だった、つげ義春の「大場電気鍍金工業所/やもり」(筑摩書房)を、移動中に読む。いくら描かれる時代が違うとはいえ、「ゴシップガール」の世界と同じ人間の世界とは思えない、貧乏と悲惨と不潔と愛なき欲情の世界が、淡々とシンプルに描かれる。虚飾のかけらもない、地べたをはうような生活を「ど」リアリズムで描く世界は、読み終えると、不思議にすがすがしい。
その秘密をとく赤瀬川原平の解説も、なっとくの読みごたえ。
「焦らず、力むことなく、全部同じスピードで、安全運転のように描き進んでいる」
「職人の快感のようなものを感じるのだ。仮りに貧乏と悲惨の中であっても、いつものように刃物と鋸を使っていくと、いつものように木製品がひとつきっちりと仕上がっていく。その流れがまったく無意味に快い」
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