使い古された言い方だが「 興奮のるつぼ」に叩き込まれるようなSFだった。とんでもなく飛躍する想像力。でも現実とのつながりが失われていない。読み終わる頃には本当に「三体人」が地球に向かっているということを信じ始めている。ナノテクノロジーを使うアクションシーンなんて映画で再現されたらどれほどの迫力になるのか。見たこともないシーンがこれでもかと続くだろう。

現状の世界のあまりな不平等、自分勝手すぎる政治家とそのお友達の横暴、底なしのモラルの低下、若い世代の絶望、まったく「進歩」する気のない人類の蛮行etc. を見ていると、三体人を地球に招くべく行動を続ける人々にいたく共感できるのだ。

何千回と絶望してきた三体人と、人類にもはや絶望しきった地球人。互いに相手に一縷の希望を託し、接近の日が近づく。

読み終わってすぐ「三体II」の上下を買ってしまった。これ以上スケールアップするってどんなだろう。いまの中国文化の底力は、こんな小説からも伺うことができる。

 

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