LVMHによる日本へのてこ入れが積極性を増してますね。4月に2025年フォールコレクションを京都の世界遺産、東寺で開催したり、大阪万博のフランス館に協賛したり、村上隆とのコラボを復活させたり、ロエベの〈Crafted World〉展を開催したりと、華やかなニュースが続いています。
こうした取り組みは、LVMHグループによる「文化的影響力の再構築」と「日本市場におけるブランド再定義」を目指す一連の戦略ではないでしょうか。
2025年4月15日にDiorが京都・東寺で開催したショーは、フランスのクチュールと日本の歴史文化との対話を演出した文化装置になっていました。大阪万博におけるフランス館へのLVMHの協賛も、「未来のラグジュアリーとは何か」という価値観を提示する象徴的な試みです。村上隆とのコラボレーション再開は、2000年代に日本市場で築いた強固なブランド愛を再活性化させる狙いがあります。さらに、ロエベの〈Crafted World〉展は、日本の「つくる文化」への敬意と、クラフツマンシップを軸とした価値観共有の表明と受け取れます。
では、なぜラグジュアリーブランドはここまで日本に惹かれるのでしょうか?
第一に、美意識とクラフツマンシップの親和性があること。日本文化に根づく「侘び寂び」や「職人の精神」は、本来のラグジュアリーが追求するタイムレス、素材の美しさ、手仕事の価値と深く共鳴しています。実際、多くのメゾンが「日本は自分たちのクリエイションを最も深く理解してくれる市場」と語っています。
第二に、日本は「戦略の試金石」でもあります。審美眼が鋭く、体験重視でブランドリテラシーの高い日本の顧客に評価されることは、国際市場での展開においても一定の保証と見なされる傾向があります。だからこそ、LVMHやリシュモンは、日本で店舗設計や展示手法、クラフトコラボレーションを実験的に展開するのでしょう。
第三に、日本での存在感は「文化的ステータスの証明」でもあります。もろもろのイベントは、「自らの文化的立ち位置を再確認する場」として機能しているように見えます。
日本は単なる売上拠点ではなく、ラグジュアリーブランドが自らの哲学を再考し、物語を深め、世界に向けて文化的威信を再定義するための重要な「知的実験地」になっているように思う。
Photo: 東寺 2004年 CC BY-SA 3.0
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