佐藤優氏講師による「カール・マルクスの『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』を読む」会@衆議院第一議員会館。

なぜ、政治の世界で「風」が起きるのか? 小泉純一郎氏は、立派な政策をもたなかったにもかかわらず、なぜあれほど国民の支持を得たのか? 田中真紀子氏は、いっとき、なぜ「風」を起こすことができたのか? ひるがえって、浮動票を使うためには、どのようにしたらよいのか? 

こうした「制度の盲点」というか「民主主義のおとし穴」のような政治的現象を、共和制下フランスのルイ・ナポレオンが圧倒的支持を得た状況と照らし合わせながら考え、日本人の集合的無意識を言語化していく、というとても興味をそそられるテーマ。

歴史的現象は、「一度は偉大な悲劇として、もう一度はみじめな笑劇として」現れる。つまり、モノゴトは無意識のうちにらせんを描きながら反復する。だから過去の事例から類似の「構造」というかモデルを探し出すことができる、という本書にも記される考え方を確認したうえで、現代に起こっている政治・経済・社会の大小さまざまな現象を、過去の事例と比較しながら次々に分析していく過程は、たいへんに刺激的である。

現在の円高。民主党の党首選。普天間問題。浅田次郎「終わらざる夏」が今、売れている理由。団地の中で白骨化した死体と同居できる日本人がいることの意味。村木裁判のウラの意味。検察と官僚と民主党の力関係。「官僚」という一つの塊をなす階級の存在を認めなくてはいけない現状。自衛官が反旗を翻すことができる現状の不気味さ。民族と国家と市場とのバランス関係。「帝国」の本来の意味。卑近な話題では、マルクスとエンゲルスの、俗っぽくどろどろの私生活。足利義満が建てた金閣寺の中にある、むだにも見える広間の政治的意味。

革命(Revolution)の本来の意味の解説も、目からうろこが落ちる思い。レボリューションとは元来、「天体が回ること」であった。つまり、「天体の運行が変わると、それに応じて地上が変わる」というのが「革命」で、これはどちらかといえば、あきらめの思想に近い、と。

(こんなふうに、語源順に意味が書いてある英和辞典は、Oxford English Dictionaryに準じてつくられた「岩波英和辞典」のみで、1970年代に出たのが最後の版とのこと)

ちなみにレヴォリューション=革命、と訳されることになったのは、孟子の易姓革命から。天の意志が変われば、地上の王朝が変わる、というのが、易姓革命の思想。その「天の意志」に呼応するのが、ほかならぬ、民衆。

前回に引き続き、多岐にわたる圧倒的な情報のシャワーを浴びた思いがする。

外は満月。

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