◇「サライ」記事のためロングホーズの取材@新宿伊勢丹。プレスルームでバイヤーの方にお話を聞いたあと、メンズ館靴下売り場でロングホーズの存在感やメンズ靴下の現状などを確認。しばしミッションを忘れて、かわいくポップな靴下の数々にも見とれる。トルコ製の遊び心いっぱいの柄靴下など、思わず笑みがもれてくる。誰が買うんだろう?! さすがは伊勢丹メンズ、圧巻の品揃え。

同フロアの靴売り場も、愛好家が通う売り場だけあって、ぴーんと清澄なオーラが漂っている。販売員の表情や姿勢が違う。並みならぬ意気込みとプライドが感じられる。ちょっとこわいくらい。手頃な価格の靴も、超高級品も、カジュアルシューズも、一足一足、手をぬかず丁寧に陳列されている。靴に対する愛とプロ意識が感じられて、気持ちがいい。

◇ヘンリー・ペトロフスキー『フォークの歯はなぜ四本になったか』(平凡社ライブラリー)。新装復刊させた平凡社に心から敬意を表したい。大昔に一度読んでいたが、モノについても書いたり調べたりするようになった今の方が、この本の面白さを味わえる気がする。

・17世紀、イギリスにフォークをもちこんだコリヤットは「フルキフェル」と呼ばれた。「文字通りに解せば、『フォークを持つ人』の意味だが、『極悪人』つまり絞首刑に値する人間をさす言葉である」

・「われわれがすでに手にしているモノ―それが何であれーに内在する問題を見きわめることから発明が始まる」

・ポストイット・ノートを発明した「3M」は、「ミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチャリング」という会社。1902年設立で、金剛砂を採掘する会社だった。砥石車→紙やすりの製造を細々としていた。

1925年、ツートンカラーの自動車が人気。自動車をツートンカラーに塗り分けるにあたり、はじめにぬった部分を紙かなにかでマスキングする必要があった。でも接着剤が強いと、紙と一緒にペンキもはがれてしまう。つまり、「粘着力がさほど強くない接着剤のついたテープ」が求められた。試行錯誤をくりかえしたのち、テープができた。

ところが最初は溶剤が少なかったために、紙の重さにまけてテープがはがれる。癇癪を起した塗装工が、「このテープを、お前の上司のスコッチ(スコットランド人&けちけち野郎)のところに持ち帰って、もっとたっぷり接着剤をつけるように言えや」と。これがタータンチェックの「スコッチ」というテープが生まれるようになったきっかけ。

「会社側が接着剤をけちったからではなく、むしろ、消費者がそのテープを使って数多くの家庭用品を経済的に修理できるからそう命名されたのだろう」

1974年、3Mの化学技術者、アート・フライは、日曜日には教会の聖歌隊の一員として讃美歌を歌っていたのだが、二度めの礼拝のときに、しばしば讃美歌集にはさんでおいた紙片がもとの位置から抜け落ちて困惑するはめになった。で、自社の弱い接着剤のついたしおりを試す。一年半の試行錯誤の末、ポストイットの原型を完成。

→紙やすりに使う金剛砂を掘っていた会社が、スコッチテープやポストイットを開発するにいたった過程。けなされたり、バッシングを受けたり、不便な思いをしたりしながら、それを受け止めて、ネーミングに使ったり新しいものを生む契機にしたりする作り手の姿勢がすばらしい。わくわくする。

ほかにもクリップ、ジッパー、マクドナルドの包装などなど、身近なもののデザインが秘める奥深い歴史。

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