14日火曜日に参加した、宮内淑子さんオーガナイズによる第124回次世代産業ナビゲーターズフォーラム。講師は(株)日本総合研究所 副理事長の高橋進さんで、テーマは「2011年内外経済の展望」。

内容がぎっしり、みっちり詰まったお話&質疑応答で、聴いたことを全部きれいに整理してからアップしようと思っていたら、いつまでたっても終わらない(苦笑)ので、以下、個人的に強く印象に残ったことのみ、メモ。高橋さんのお話はもっと専門的で複雑高度であった。経済ど音痴の私にわかったのはこの程度という、かなーり偏りのあるメモである。

・<世界経済の展望> 金融危機の後遺症がまだ尾を引き、低迷を脱するには時間がかかりそう。先進国がおこなっている長期にわたる金融緩和が、ムリな投機マネーとなり、それが後進国に不健全なバブルをもたらしている。いわば通貨戦争とも呼ぶべきものが起きている。

世界的な不均衡是正のカギを握るのは、アメリカと中国。とりわけ、これまで高い生産能力を輸出に向けてきた中国は、内需主導型へと方向転換してほしいところなのだが、中国にそれができるかどうか。

・<日本経済の展望> 輸出の低迷。景気刺激策(エコカー補助金、エコポイント、地デジ切り替え)の反動減のあらわれ(今の需要は「先食い」でしかなく、刺激策終了後は大幅に落ち込む)。内需回復力が脆弱なまま。ということで、当面は足踏み状態が続く見通し。7月以降は、個人消費の減少を主な原因として、実質GDPが大きめのマイナス成長となる。2011年度全体で見ても、実質GDP成長率はプラス0.2%(かぎりなくゼロ)。

・<日本経済の構造問題:失われた20年をひきずる日本経済> 分配構造がゆがんだまま、産業構造もゆがんだまま、成長産業が不在、日本型ビジネスモデルが疲弊。少子高齢化を勘案すれば、医療・介護・健康・保育・教育分野の成長余地は大きいはずだが、強い参入規制があって、成長を阻害している。現在の日本は、貯蓄によってなんとか黒字を保っているが、家計貯蓄率が低下し、民間貯蓄も減少していけば、10年以内に経常黒字が消滅する可能性が高い(=このままのペースでいけば、あと数年で貯蓄を食いつぶして日本経済は破綻する?!)

・<日本経済の政策課題> 政府が6月に策定した「新成長戦略」。戦略5分野として以下のものがある。1.インフラ関連・システム輸出(原子力、水、鉄道など) 2.環境・エネルギー課題解決産業(スマートグリッド、次世代自動車など) 3.医療・介護・健康・子育てサービス 4.文化産業立国(ファッション、コンテンツ、食、観光など) 5.先端分野(ロボット、宇宙など)。

この政策に異論はないが、そもそも民主党政権の運営能力、調整能力に疑問が残る。政策の縦割り構造を打破できなければ、新分野の創出は理想だおれになる。 

財政健全化のためには、徹底した歳出の効率化と、最低でも名目3%、実質2%の成長を維持して自然増収を確保する必要がある。その条件が満たされても消費税を10%引き上げる必要がある。

格差の固定化による人材の劣化ばかりか、現場でも人材の質の劣化が深刻になっている。若年層を中心に社会全体が、内向き・下向き・後ろ向き志向になっていることも問題。女性の活用が進まないことも、人材の高度活用を妨げる一因。

・<日本経済再生への道:ローカルパワーによる地域経済の活性化> 日本経済再生のためには地域経済の再活性化が不可欠。東京都も地盤沈下している。中央政府の支援を当てにせず、横並びの発想から脱却して、ダイレクトに世界を相手にするようなやり方もあっていい。山形でおこなわれているグリーンツーリズムなど、よい例。

……と膨大なデータをもとに、さくさくすっきりと、日本経済の分析と今後の課題を聴かせていただいたのであった。異論の余地のない事実だけを厳然とつきつけられると、ああ、2011年も暗そうだな、で気持ちが沈んでしまうのだが、よくよくこの事実を見つめるうちに、それで「流してしまう」わけにはいかんな、という思いがひしひしとこみあげてきた。「そのうち誰かがなんとかしてくれるだろう」とこのまま流されていては、ホントに数年で日本は非常事態に陥る。人も社会も、「変わろう」「変らなくては」「変えなくては」と口では言い続けているが、実際に変わろうとすると、足をひっぱる周囲の圧力に負けたりして、現実は変わらないまま。とりわけ日本は、ぎりぎりの非常事態にすとんと落ちて、切羽詰まった事態にならないと、本気で変われないのではないかとすら思う(第二次世界大戦後のように)。

委員の北川高嗣先生(筑波大学大学院教授)から、少し希望の光が見える道の示唆あり。現在、インターネットによって、世界中の40億の人が作る世界が、すでに存在している。成長を阻む要因になっているゾンビを取り除くことが現在の産業構造(とりわけ農・商工業分野において)の課題でもあるが、インターネットを使って、ゾンビをすり抜け、ダイレクトにマーケットにつながる方法がいくらでもある! マーケットにダイレクトにチャンネルを合わせることで、中間のややこしい構造や足をひっぱるゾンビの阻害をすり抜けて、いきなり高利益を上げられる時代なのである。その意味では、現在は人類史始まって以来の黄金期でもある。これを理解している人達でダイレクトなチャンネルを作っていくことは可能ではないか、と。

狭い周囲に遠慮してゆで蛙となるか、外に目を見開いて黄金期のヒーローとなるか。選択と決心と行動力が、問われている。

 

 

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