山口周『外資系コンサルの知的生産術 プロだけが知る99の心得』(光文社新書)。

いままでの自分の方法が正しいのかそうでないのか、振り返りつつ今後より良い成果を上げるために外資系トップコンサルの書いた知的生産術を学ぶ。

無意識にやっていたことが的確なことだったり、あるいは意識的に行ってきたことが実は改めるべきダメダメなことであったり、発見多々で付箋の嵐。全部覚えておきたいことばかりだが、とりわけ「これは!」な点を、著者のアドバイスにしたがって「忘れるために」(!なるほど!)転記しておきます。

・知的生産における成功・失敗は、あくまでも「顧客の期待値と実際の成果物とのギャップ」によって決まる。だから顧客の期待値をコントロールすることが必要。

・プロフェッショナルというのは80%の力でクライアントを継続的に満足させられる人のこと。適切なミニマムラインの設定をおこなうのが、管理職の大事な仕事。(私のフリーランス駆け出し時代には、常に120%を心がけていた。じゃないと次の仕事が来ないから。でも仕事が多方面に増えた今もなおこれをやっていると、どこかに「穴」をあける。80%でもなおハイレベルを継続的に保てるということが大事になってくるのだろう)

・イノベーションのほとんどは、「思いついた人」ではなく「あきらめなかった人」が実現している。

・私たちが知的成果として世に訴えられる情報は三種類。「事実」「洞察」「行動」。ビジネスにおける知的生産は「行動の提案」まで踏み込むことで初めて価値を生み出す。「評論家」は恥ずかしい。偉そうに「洞察」を語り、中途半端なところで放り出しているだけ。(これがいちばんガーンときましたね。アカデミズムにおいては、「洞察」でとどめ、それを読む人に判断をゆだねるということが上品とされていた。長年にわたってたたきこまれてきたこの「上品」さ、これはunlearnしなければならないのだ、と強く自覚)

・プラトン以降、哲学者が向き合ってきた問題は「世界はどのように成り立っているのか?」と「その中で、私たちはどのように生を全うすべきなのか?」の二つ。

・ポジションを取れ。決断力というのはポジションを取れるかどうかということ。知的生産のクオリティというのは、異なるポジションを取る人と摩擦を起こすことで初めて高まる。(これもショックでした。教えられてきた「上品さ」とはポジションを取らないことでもあったので。それってビジネスの世界では単に「何を甘えたことを言っているのだ?」とスルーされてしかるべき態度だった)

・「考える」と「悩む」は違う。「手が動かなくなる」と、それはすなわち「考えている」のではなく「悩んでいる」状態であって、知的生産のプロセッシングは進まない。知的生産のプロセッシングはほとんど手を介して行われる。

・「よい答え」というのは、ニュアンスとしては、力づくに探し出すものではなく、ごく自然に目の前に立ち現われるもの。出てこない場合は「問いの立て方」「情報のインプットの仕方」に問題がある。

・「長く考える」のではなく「短く何度も考える」ほうが突破口を見つけやすい。

・視点・視野・視座のとり方を他人と変える。視座は、社長の視座より高い「革命家の視座」まで上げてみる。

・アンラーンを繰り返す。「昔取った杵柄」を廃棄し、常に虚心坦懐に世界を眺めながら、自分が学んできたことと常識を洗い流すことが必要。

・「どうしてそうなのか?」「もし~だったらどうなのか?」という質問を多用して、思考レベルを深めていく。

・情報の非対称性は経済価値を生む。

・アウトプットは、What, Why, How の三点セットで。

・抽象的行動用語を使わない。抽象的行動用語とは、検討する、推進する、強化する、実践する、注力する、連携する。(うわー確かに。お役所向けの報告書にはこういう謎の動詞が乱舞している) 知的生産の品質は行動の品質に直結し、行動の品質は成果に直結する。

・ベクトルではなく、到達点を伝える。

・説得より納得、納得より共感。知的生産の最終的な目的は、行動を起こさせ、よりよい社会や世界の建設に人々を駆動させることにある。リーダーはすべからく共感を追い求めていく態度を。

・ロゴス(論理)、エトス(倫理)、パトス(情理)のバランスをとる。

・集団浅慮=グループシンク。似たような意見や嗜好を持つ人が集まると知的生産のクオリティは低下する。

・文化相対主義は感性の鈍麻。表面的な差異を文化相対主義の名のもとに全肯定してサラリと受け流してしまうということではなく、差異を見出し、その差異を生み出す構造的な要因まで踏み込んで理解したうえで、その違いをリスペクトしつつ全肯定する。差異を無感覚に全肯定する態度は、それを全否定するのと本質的には同じこと。(これも……深く考えず「寛容」「リベラル」の名のもとに受け流すのは、怠慢で鈍麻だったと悟る。反省)

 

99のアドバイスのうち、きっと明日のあなたを変える助言があるはずよ。

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