機内で見た映画のなかから。”Call Me By Your Name”.

知的で繊細で官能的な、完璧なほどの「ひと夏の恋」映画でした…。

これほど瑞々しくて贅沢な感覚を映画から与えてもらったのは久しぶりという気がする。CG登場以前の80年代~90年代にはこういう感覚の映画がふんだんにあったような、懐かしい感じもした。

陽光まぶしい北イタリアの夏の風景の幸福感。アーミー・ハマーのギリシア彫刻のような美しさ。ティモシー・シャラメのギリシア神話に出てくるような繊細さと正直さ。

そして脚本がジェームズ・アイヴォリー、なるほどの美しいセリフ。

とくにパパ・プロフェッサーがときどき差しはさむ人生訓みたいなのがいいですよね。

最後のほうでパパ・プロフェッサーがエリオにかけることばもじわっとくる。

“I may have come close, but I never had what you two have. Something always held me back or stood in the way. How you live your life is your business, just remember, our hearts and our bodies are given to us only once. And before you know it, your heart is worn out, and, as for your body, there comes a point when no one looks at it, much less wants to come near it. Right now, there’s sorrow, pain. Don’t kill it and with it the joy you’ve felt.”

(心も肉体も一度だけしか与えられない。心はいつのまにか擦り切れていくし、肉体に関してはそのうちだれも見なくなるどころか、近寄られることもなくなる。今の悲しみと苦しみを押し殺そうとするな。感じた喜びとともに大切にしなさい)

知的なママも、ほどよい距離感で見守っている。

何の「説明」もしないのに、あたかもごく自然に撮った情景であるかのように、17歳のひと夏の恋に伴って起きる感情のおそらくほぼすべてを、五感を通してまるごと伝えている。本物の「映画」ですね。

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