Chavs: The Demonization of the Working Class

2019年1月10日

先日ご紹介した「エスタブリッシュメント」に先立つオーウェン・ジョーンズの衝撃のデビュー作、「チャヴ」。

最初の作品だけあって、こちらのほうが鮮烈に、よりエモーションをゆさぶる筆致で描かれている。翻訳もうまい。

サッチャー主義こそが、地域のコミュニティの団結と、労働階級の美徳や倫理を壊してしまった。その結果、もたらされた「自己責任論」。弱者はますます虐げられ、かつてあった労働者階級の美徳はどこへやら。今はまったく新しい、くず扱いされて当然という「チャヴ」という階層を生み出すに至った。

チャヴの生態、チャヴをめぐる数々の事件の描写もすさまじいけれど、そういう階層は人間以下だから虐げて当然、というイギリスの中産階級以上の階層の態度や言動はさらに信じがたい。人種や宗教や性的嗜好が異なる人は寛大に受け入れるし、差別を許さないけれど、同じ民族の下層階級チャヴはいじめほうだい。なんだこれは……。労働者階級の味方であるべきだったニューレイバーも、結果として同じ「エスタブリッシュメント」側としてチャヴ増殖に寄与していたことが示され、空恐ろしくなる。

新自由主義の結果、似たような状況がおそらく世界中で起きている。日本でも。

なんでもかんでも民営化、規制緩和してしまい、自己責任ですべて片づけられてしまう社会というのは、こういう末路をもたらすのか。

ブレグジットの国民投票の結果がああなってしまったのも、原因の源をたどればサッチャー主義にあることを気づかされる。

もう「キングズマン」のエグジーをこれまでと同じ目では見られない。これを読めばエグジーの家庭や育った地域がなぜああだったのか、痛みとともに理解できる。

現代のイギリスに関して何かを語るためには、これを読んでおかねば話にならない。弱者にツケを回し、「自己責任」でなんとかやれという現代日本の行く先を考えるときにも、たいへん参考になる。それほどの必読書。読んだのが遅きに失した感もあるけれど、でも読むことができてよかった。

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