トルーマン・カポーティのドキュメンタリー映画を拝見しました。「トルーマン・カポーティ 真実のテープ」(The Capote Tapes)。

「ティファニーで朝食を」「冷血」で世界的に有名な作家カポーティ―の、きめこまかい人間描写にぐいぐい引き込まれる。

背が低い。ゲイ。声が女性っぽい。母は社交界に憧れて願い叶えられず自殺。孤独。愛されない。そんな生い立ちや背景を知ることで、数々の名作が立体的にエモーショナルに立ち上がってくる。

カポーティは作家であると同時にセレブリティだった。社交界の「道化」の役のような立ち回り。なぜそんな振る舞いをしたのか。人々が自分を「フリーク」として見る。そのぎょっとした視線を感じる。だから、カポーティはわめき、騒ぐ。そうすることで人々を気まずさから救ってやるために。「砂糖漬けのタランチュラ」「指折りの人たらし」「一度は会いたいけど二度は会いたくない有名人」「掛け値なしの奇人」などなど、彼を表現する悪態すれすれの呼称から、どんな印象を周囲に与えていたのかうすうす察することができる。

20世紀最大のパーティー、「白と黒の舞踏会」は、世界中から500人の著名人を選び抜き、招いた。ベトナム戦争のさなかに開催された、虚飾の極みのザ・パーティー。これについては25ansにも記事を書いておりますが、カポーティの生い立ちや立ち位置を知ることで、壮大なリベンジであることが感じられた。叶えられなかった母の祈りを、こうして叶えたのだろか。

スワンと呼ばれた社交界の華、当時のニューヨークのリッチ層の描写が豊富できめこまかく、文化史としての発見が多々ある。「白と黒の舞踏会」のセレブリティのファッションも、言葉を交わし合う当時の著名人たちの立ち居振る舞いも圧巻。

1977年のカポーティ。Photo by Arnold Newman Properties

セレブの秘密大暴露本でもある「叶えられた祈り」の発表がもたらした余波とバッシングのくだりも興味深い。いまにつながるゴシップ込みのセレブカルチュアは、この人から始まっていたのですね。文化史、文学史を学ぶ上でぜひ見るべき生々しいドキュメンタリーであると同時に、「特別な生き方」を貫こうとした一人の天才の栄光と転落、孤独と喧騒、愛と冷酷にも迫る見ごたえある映画になっています。

 

監督・製作 イーブズ・バーノー
配給 ミモザフィルム
11月6日よりロードショー

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