スーツとか大人の男性服を扱う時に、「モテる服」「女性ウケ」とテーマを設定すると食いつく方も多くいらっしゃるのかもしれないですが、根本的に間違っているのではと感じることが少なくありません。もちろん、個人的な意見なので、「それでも売れるからやる」と言われればもちろん反論はしません。

漠然とした「モテ」や「異性ウケ」は、装いの価値を他者から選ばれることに置く発想です。

およそ主体性をもつ、成熟した人間に求められるのは、選ばれるための服というより、自分がどのような人物であり、周囲にどのような空気をもたらすのかを示す服なのではないかと思うのです。「女性からモテるか」 から 「誰と、どこで、どのような関係を築く人に見えるか」を考えるべきところです。

さらにいえば、「女性ウケ」を第一におくことは、男性の装いを女性の承認によって価値づける、古い異性愛的な構図でもあります。女性向けファッション番組で、街の若い男性に女性モデルを並べて「どれがいちばんおしゃれか」と選ばせれば、かなり露骨な違和感が出るでしょう。性別を逆にすると見過ごされがちな非対称性が、ここにも残っています。そこにすがっていることじたいが、「古く」見えてしまいます。

本当の意味でモテたいのであればむしろ、モテ云々の発想に振り回されることから脱するのが早道です。「モテを脱する」とは、魅力を捨てることではなく、魅力の射程を広げることでもあります。異性から選ばれる魅力から、性別や世代を越えて信頼され、また会いたいと思われる魅力へ移る、ということです。そのために不可欠な要素こそ、主体性。

もちろん、「(具体的な)相手の喜びそうな服」を想像して着ることは主体的に考えている行為の一つでもあります。漠然とした不特定多数に近い「女性ウケ」なるものとは別物です。

筋の通った主体性をもって初めて、大人の男性の装いは次の段階に入っていくのでしょう。

中里唯馬さんらが率いるFashion Frontier Program で「エレガンス」をテーマに話しました。

会場のMon Takanawaがおしゃれな空間。足湯まであります。


FFPはファッションを通して社会をどう良くしていくかまで考える、次世代デザイナーのための学校兼コンテストです。世界から集まった若い感性が頼もしく、みずみずしくて、質疑を通して意外な学びも多々。

倫理的正しさを新しい美しさとして組み込んで、ファッションを通してよき世界を創っていってほしいと切に願います。

「25ans」 10月号発売です。

連載「ロイヤルの肖像」Vol. 10は、スウェーデンのヴィクトリア皇太子です。

性別を問わず第一子が王位を継ぐ完全長子相続制を他の欧州王室に先駆けて導入したスウェーデン。

ヴィクトリア皇太子が即位すれば1720年以来、約300年ぶり、スウェーデン史上4人目の女王となります。

夫ダニエルはジムのトレーナーでしたが、7年にわたり王室にふさわしい教養を学び続け、婚約が承認されました。

このカップルのあり方も素敵です。

詳しくは本誌でお読みいただけましたら幸いです。

北日本新聞「ゼロニイ」連載 「ラグジュアリーの羅針盤」Vol.46は、空海と秘仏が教えてくれたこと。欲望は否定しない。でも、その力を向ける方向を変えよう。

富山・西部と能登で水害に遭われた方々に心よりお見舞いを申し上げます。

記憶のなかにある美しい地域が、みるみる水に埋まっていく光景に、なすすべもなく、衝撃を受けております。遠方においてできることは限られていますが、ずっと心を寄せています。

日本各地で地震や水害が続くばかりかネパールでも大きな洪水の被害があり、人為的な戦争なんかしている場合ではないことをあらためて実感します。権力をもつリーダーは、力を向ける方向を変えるべき。

NHK 4K プレミアムカフェ<ファッション> アンコール放送のお知らせです。

8月27日(木)「イブ・サンローランの革命」

8月28日(金)「アントワープ王立芸術アカデミー ファッション科」

木曜日は9:30~    22:30~
金曜日は9:30~ 23:00~

 

2月2日、3日に放映された番組の再放送です。

アナウンサーは渡邊あゆみさん。イギリス科の大先輩です。

ドリアン・ロロブリジーダさん(マサキ型)との「映画×スーツ」対談の後半です。

こちらからご覧いただけます。

ドラァグクイーンと女性がスーツを語るという異色対談。後半は、「オーシャンズ8」「ムーラン」「ジェイミー」などをネタに異性装、不謹慎とタブー、紳士の定義まで。

ドラァグクイーンのタブーの話に触発されて紳士の定義に行きついた奇跡的なラストでした。対話の醍醐味です。

ドリアンさんはさすがトークが面白く、現場も楽しく盛り上がりました。

ドラァグ・クイーンのドリアン・ロロブリジーダさん(マサキ型)と映画史に残るスーツについて対談しました。

前半は「スティング」「華麗なるギャッツビー」「アメリカンサイコ」etc.

女装と「クイーン」の違い
男性を装うこと
完璧であるほど空虚なスーツと名刺
暗黙の階級コード
衣装デザイナーのねらい……
着ることに対する深い愛情と冷徹な視点をあわせもつドリアンさんと「ならでは!」な話が展開します。

こちらでご覧いただけます。

制作チームはLuaaz です。

ドリアンさんのスーツはDiorだそうです。私のスーツはThe LOAの廣川輝雄さん作。なんと10年着ております。

大阪中之島美術館ついでに、大阪に昨年できたウォルドーフ・アストリアを訪問しました。

ウォルドーフ・アストリアは、ヒルトンが展開する最高級ブランドの一つです。原点は1893年創業のニューヨークの名門ホテルで、王侯貴族、歴代大統領、映画スター、実業家が集う「社交界の舞台」として名を上げました。

大阪はその日本第1号として、2025年4月、グラングリーン大阪に開業。31~38階に252室を備え、大阪の街から湾岸まで見渡せます。公式の報道によれば、内装は香港の建築家アンドレ・フー。ニューヨークのアール・デコと、日本的な静けさを混ぜた、重厚すぎない現代型ラグジュアリー、とのこと。NY社交界の華やかな伝統を、大阪の空中に移植したホテル、という印象ですね。

吹き抜けのラウンジ「ピーコック・アレー」でお茶をいただきました。マカロンがついてきました。ちょっとうれしい。

『ゴシップガール』のブレア・ウォルドーフを連想しますが、公式な血縁も設定上の関係もないようです。ホテルの「ウォルドーフ」は、19世紀ニューヨークの富豪アスター家に由来します。一方のブレアは架空の名門家の令嬢。ただし、同じニューヨーク、富、旧家、社交界、完璧な装い――と世界観は近い。「ブレア・ウォルドーフが好みそうなホテル」ではあります。

今回の大阪は日帰りでしたが、いつか泊りに来てみたい。大阪はいま新しいラグジュアリーホテルが集結する激戦区になっていますね。

GQ JAPAN に寄稿したポール・スミスが語るスーツの未来についての記事が、ウェブ公開されました。『遊び心の裏側にある、冷徹なリアリズムーーーポール・スミスはなぜ、カラフルな色で遊びながら、スーツについてだけ禁欲的なのか』

ピカソ展に際し、来日していたサー・ポール・スミスに、食卓で、予定になかったインタビューをしたときのものです。あまりにも面白い話だったので、ご了承を得て、記事を書かせていただきました。 スーツの未来についての、冷徹な見方。 「スーツを未来につなぐために、とくになにもしなくてよい」と語る根拠が、人間を深く知る人の言葉です。

20日、大阪中之島美術館でフェルメール展の内覧会に参加しました。

14年ぶりに来日した「真珠の耳飾りの少女」の見せ方がドラマティック。というかほんの十数点の絵画を映像や資料で盛り上げ、クライマックスにこの少女を持ってくるという手法そのものに学ぶところが多い。

この少女の絵に学ぶラグジュアリーの本質に関して原稿を書きました。近日中に公開予定です。

アンバサダーのミッフィーがかわいかった。ひとつひとつの仕草がね、何とも上品で「らしい」のです。耳飾りの位置はこれでよいのかという指摘は各所からちらほらありましたが……。

関係者の皆様のおかげで、感動の体験ができました。ご尽力に心より感謝します。

展覧会:フェルメール「真珠の耳飾りの少女」展 17世紀オランダ絵画の名品、奇跡の再来日
会期:2026年8月21日-9月27日
会場:大阪中之島美術家 5階展示室

ラグジュアリーの羅針盤Vol. 45がウェブ公開されました。

「存在することが、機能になる」

役に立つこと、効率がよいことではなく、そこに在ることそのものが機能である―家具についての言葉のはずが、有用性で人間までが査定される時代には、私たち自身への激励のようにも響きます。

ソットサスの展覧会は、楽しくて元気が出ます。お勧めします。

『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』についてはすでに多くの方々がレビューや感想を寄せていらっしゃいますね。

不老不死がラグジュアリーのテーマになっている現状と重ね合わせて拝見してしまい、やや読み込みしすぎ感があるかもしれませんが、JBpressに寄稿しました。「『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』が映し出す現代日本の肖像、働かされ、食べられ、永遠に売られる」

 

ネタばれがありありなので、まだご覧になっていない方はお読みにならないでくださいね。

令和8年8月8日8時に公開されました。「王妃の名で、時代を読み替える」。

これまで「ルイ16世様式」と呼ばれていた時代を、「マリー・アントワネット・スタイル」としてとらえると何が見えてくるか? を見せてくれた展覧会でもあります。

マリー・アントワネット・スタイルにヒントを得た現代の作品群もセンスよき。右の2点はモスキーノですが、「パンがなければお菓子を」(本人が言ってないのに広がったことば)から連想された、ケーキドレスです。

25ans ロイヤルの肖像Vol. 9 は、モナコのシャルレーヌ王妃。ウェブ公開されました。

南アフリカ出身の元競泳選手でシドニー五輪で5位入賞。アルベール2世との出会いもモナコでの水泳大会。 時に大胆な刈り上げヘアで宮廷の定型を心地よく裏切り視線を奪います。水やスポーツに関わる事業や公務を数多くおこなっていらっしゃいます。

モナコの王室のレジェンドにはあのグレース・ケリーがおり、何かと彼女と比べられがちでしたが、ご自分のペースを貫いているところに鍛錬から生まれる強さを感じます。

おかげさまで『エレガンス入門』が重版となりました。
また、韓国語版が出版される運びとなりました。
お支えくださったみなさま、ありがとうございます。

トップ写真はマリー・アントワネット展より。武器でなく優雅さで勝負しようとした宮廷社会もまたエレガンスを発展させました。

I’m grateful to share that An Introduction to Elegance has gone into a second printing.

I’m also delighted that a Korean-language edition is now forthcoming, bringing the book to a new community of readers.

My sincere thanks to everyone who has read, supported, and helped carry this work forward.

監修として関わらせていただく『スーツポーズ大全』、ホビージャパンより12月18日発売です。

スーツキャラを描きたい方にも。愛でたい方にも。スーツの細部やルールを学びたい方にも。武器をとるアクションを含む多様なシチュエーションとポーズを想定し、数千点の特大ボリュームで4種類のスーツ(ビジネス、タイト、ダブル、スリーピース)の表現をマニアックに求道する本です。

各ECサイトで予約受付も開始いたしました。

AIが描いてくれる時代になっても「自分で描きたい!」方は多いそうで、このジャンルは根強い需要があるそうです。実際にプロのコスプレイヤーのモデルにスーツを着せてポーズをとってもらい、細かく撮影していく、という贅沢なプロセスを経ています。愛が支える領域は、生き続けますね。

 

ちなみにトップ写真は同じホビージャパンから10年前、2016年に発売されていた「スーツ男子の描き方」の表紙です。今回は前回の本に大幅な改良を加え、質・量ともにグレードアップし、情報をアップデートして新しく創りなおされます。

 

7月22日発売予定だった大型本が、不測の事態を受けて発売直前で中止を余儀なくされたことで、ボディブローのようにショックが響いていましたが、次の仕事に目を向けることで、その間は悲しみを忘れていることができます。宙づりになったテキストの価値も失われたわけではないと信じるので、別の形に再生させたく、奮闘中です。

*当初、10月発売予定でしたが、撮影スケジュールの遅延により12月に延期されました。

 

〇Precious.jp に「Tokyo Fashion Chronicles」を掲載していただきました。ありがとうございます。

 

 

NHK「ステータス:社交界デビュー」再々放送です。

8月2日(日)午後3:50~

「ステイタス」はATP賞テレビグランプリ最優秀賞を受賞した、NHKの異色の教養エンターテインメント番組です。司会はアンミカさん、東野幸治さんで、解説ゲストとしてお招きいただきました。

番組制作会社はten-ten filmです。デビュタント舞踏会にあれほど時間をかけて密着撮影できたのは前例がないのでは。スタッフの粘り強い努力に敬意を表します。

ル・バル・デ・デビュタント(社交界デビュー)のシステムについては、『エレガンス入門』第9章「階級演出装置としてのエレガンス」をあわせてお読みいただけますと、理解しやすいと思います。もともと社交界は政治・経済ネットワークの基盤でしたが、現代ではグローバル資本主義やラグジュアリー産業とも接続しています。ただのお姫様の舞踏会ではありません。

タキシードはSyuhari制作です。

本日より横浜美術館にて「マリー・アントワネット・スタイル」展が開催されます。

V&Aの展示にもなかった日本独自の、世界初公開の展示品も公開されます。内覧会での関係者のお話もすばらしかった。

まさか本物のギロチンの刃まで見られるとは。フェイクニュースの恐怖、革命のリアリティまで想像できる、甘いだけではない展覧会。

関連記事を書きました。近日中に、詳しい記事がJBpress autographにて公開されます。