携帯サイト連載の最終章のための資料をまとめて読む。婚活とファッション、モテとファッション、エロスとファッションっていうのは、実際のところ、どういう関係があるのか、ないのか。婚活にもモテにもエロスにもまったく縁がない、地味~な書き手としては生活実感を欠いたところからスタートすることになるのだが、それゆえ逆に、「なまぐさく」なく、主観やルサンチマンに流されずに書ける、というメリットはあるかもしれない(なまぐさいのが好きな読者には物足りないかもしれないが・・・)。資料として読んだ本のなかで、直感的に気になったことを覚え書きまで。こうしてメモしておくと、頭のなかで勝手に「発酵」したり、ほかのデータと想定外の化学反応を起こしたりして、あとから思わぬところで生きてくることがあるんです。

○白川桃子・文、ただりえこ・漫画『結婚氷河期をのりきる本!』(メディアファクトリー)。モラトリアム王子と別れ、結婚に対する意識革命を起こし、結婚市場に乗り込み、さまざまな「婚活」をし、自分からプロポーズして「ゴール」にたどりつくヒロインの物語の進行にあわせ、具体的な方法のポイントが解説される。恋愛観・結婚観がひとむかし前とは確実に変わっているんだなあとわかる、楽しい本だった。

「最初のきっかけ作りは『女子から』が基本。狩りに行かなければ、恋人はできません」

「王子様は、ガラスの高い塔に閉じこもっています」

「男の沽券をはずした男子が買い!」

「(プロフィールカードには)男子が話を広げられそうなネタを書くこと。趣味=華道、茶道などは、今どきピーアールにはなりません。それよりも『サッカー観戦が好き』だとか、男子にもわかりやすいものを」

「(お見合いパーディーでは)スカートで行くこと。どんなファッションか迷う人は、こういう時こそ雑誌『Can Cam』がお勧めです。男受けファッションとは、ちょっとダサイぐらい、わかりやすいのがいいのです。もちろん足元はヒール!」

「玉の輿を射止めた女子がいました。『擦り切れたバッグを持っていた』ことが、セレブ男子の目に留まったとか(笑)。そう、お金持ちはケチなのです! (中略) あまりに高いブランド品を持つのも、得策ではないかもしれませんね」

「一緒に生活する男に必要ないのは、『学歴』『肩書き』。女子がキャリアなら『高収入』すら必要なし。『ワインに詳しい』とか『おしゃれなお店やブランドに詳しい』『プライドやコンプレックス』も、もちろん不必要」

「ワインがわかる人よりも、『火が起こせる人』『魚がさばける人』の方がアピールできます」

「結婚に至る出会いの基本は『囲いこみ』『時間の共有』『目的の共有』です」

「今は男女とも、『私に何をしてくれる?』と様子見をしています。それをやめて、先に『はい!』と笑顔で差し出す人が、結婚をつかむのでしょう」

○門倉貴史『セックス格差社会』(宝島SUGOI文庫)。所得格差が恋愛格差を生んでいること。高収入ほどセックスレスになりやすいこと。貧困と「できちゃった婚」、それによる貧困の再生産というスパイラル。中年童貞と負け犬が市場経済に及ぼしている効果。人口減少社会と国際結婚。などなど広範にわたり現在の状況の見取り図を示す。が、なんだかデータから結論にいたる因果関係分析の過程が、あまりにも一元的で短絡的過ぎて味気ない気がした。見取り図を示すには、このくらいの強引な単純化が必要だったんだろうか?

独身男性が結婚相手を探す際に重視するのが、女性の容貌→化粧品市場と美容整形市場が大きくなっている、という説明。

男性優位社会が崩壊し、性差の違いがメルトダウン→男性的アイデンティティからの逃避を背景にしたニューハーフの増加、という説明。

男性優位社会の崩壊→大人の女性が「女らしさ」を失っていく→「ジュニアアイドル人気」という因果関係の説明。

・・・そんな乱暴な。ちがうな~と反論する当事者もいそうな気がするのだが、それをいちいちとりあげるとこの分量の新書にはおさまらないんだろうなあ、ともぼんやりと思ったり。

○斎藤薫『されど”服”で人生は変わる』(講談社)。「彼との運命度はカジュアルの相性で決まる」とか「別れ話の服」とか「倦怠期に着るべき服」とか。こちらもやや短絡的な因果関係の説明はときどきあるものの、一理ある話ではあるよなあ、と興味深く読んだ。斎藤さんはとにかく有無を言わせずにぐいぐい読ませるのがすごい。

○山田昌弘&白河桃子『「婚活」時代』(ディスカヴァー携書)。ブームを生む契機になった本。いちばん最初に挙げた白河さんの本とかぶるところも多かったが、これはこれでキーワードの解説が多く、わかりやすかった。

「女性経験値が浅い人ほど、女性に対するビジュアルの要求水準が高い」

「高いビジュアルレベルを求める見た目重視社会は、カップリングの成立にマイナス」

「性欲よりもプライドが大事なガラスの王子様」

などなど、納得の決めフレーズも多。

それにしても、現実にべたっと密着した散文的な本ばかり読んでるとなんだかどっと疲れる。うそくさい本が読みたくなってくる・・・。

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