藤巻幸夫さんのお通夜。増上寺に少なくとも1000人以上が焼香の順番を待っていた。

お気に入りのケイタマルヤマのジャケットを着た笑顔の写真。いまにも大きな声で「よーかんちゃん行こう!」と喋りだしそうな…。よーかんちゃんとは、名物店主のいる藤巻さんお気に入りの店。

共通の知り合いと会場で会ったら、あらためて楽しい時間がよみがえり、泣けてきた。

ちょうどこのタイミングで、ある新聞社から「男のおしゃれと美容」について電話取材を受けた。

いずれ灰になるのに、おしゃれするなんて虚しいことだろうか。いや、いずれ灰になるからこそ、生きているうちはかっこよく装え。って藤巻さんなら言うだろうな。

男は女のようにヘアメイクできないから、と藤巻さんはメガネを4種類持ち歩いていた。藤巻百貨店オープンの対談のときに、4本すっきり収納できるメガネケースとともに見せてもらった。昼間のオフィシャルな会議用。昼間、人に会うとき用。夜の会食用。深夜、アブナくなるとき用(笑)。いちばん最後のメガネは、レンズの形が左右で違うのだ。右が□で左が○。メイクなんかよりはるかに変身効果がある。

なんのためにここまでするのかといえば、サービス精神なのですね。目の前の人に最大限楽しんでもらいたいという、無邪気なサービス精神。その結果、コミュニケーションが深まり、忘れがたい時を共有する結果につながれば、それはおしゃれの功績といえるのではないか。いや、そもそもそんな功績を計算する精神はおしゃれじゃないが。

WWD編集長だった山室さんも、ちょうど去年の今頃、50代前半の若さで、東京コレクションの直前に急逝した。やはり過剰なほどのサービス精神とファッション愛の持ち主で、周囲を引き立て、結果として周囲に信頼され、愛された人だった。藤巻さんと同じ魂の持ち主だ。みんなの喪服がダサイね、もっとおしゃれにならなきゃだめだね。なんて向こうで二人熱く議論を交わしていらっしゃるだろうか。

藤巻さんのいるところ、いつもにぎやかで熱気と笑い声にあふれていた。ときどき、楽しいユーレイになってこちらの世界のパーティーにも遊びに来てください。

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