パリ在住の皮膚科専門医、岩本麻奈さん著『生涯男性現役 男のセンシュアル・エイジング入門』(ディスカヴァー携書)。同時発売された女性向けのピンクのカバー『生涯恋愛現役』の、男性向けセンシュアルエイジング入門書。

ドクターだけあって、男女間のかなり生々しい関係や、男性のデリケートな問題にまですぱすぱとメスを入れていきますが、筆致が理知的でエレガントなので、それこそ読後の印象は、センシュアルです。

センシュアルとは、官能性であり、岩本さんによればそれは「身体感覚と知性が統合された生命的な理念」。「都会的な環境で研ぎ澄まされたエレガントな野性」(↞この定義、好きです)。センシュアリティを年齢とともに育み、磨いていくことが、ビジネスや男女の関係を潤滑にするばかりか、社会全体を良いほうへ変えていくことにつながる、と具体的エピソードを交えながら指南してくれます。

なかでも、第一章の「ビジネスとセンシュアリティ」は、よくぞ言ってくださいましたという指摘が多い。一流の仕事人はみなセンシュアルというのは、何人かの著名な経営者の顔を思い浮かべても、納得。では、具体的にどのようなことをセンシュアルというのか? 本書に豊富な具体例が紹介されています。

セクハラ上司とセンシュアル上司の紙一重の違い、の話も興味深い。これ、時々聞かれるので、いつも答えに困っていました。「どこからがセクハラなのか? 同じことを言ってもあの人はOKでオレはセクハラと糾弾されるのはなぜか?」みたいな質問。岩本先生の答えはブレがない。「センシュアルな人になろう」です! 具体的にどうすれば? 本書に紹介されています。

スーツ、香水、時計をはじめとした小物選びについても「センシュアル」という観点から具体的な助言がなされる。髪、口腔、ボディライン、指と手、デリケートゾーン、男の更年期問題などに関しても、最新のケア情報を得られるともに、意識を向けるべきポイントもわかる。

コラムでマニアックに紹介される女性のボディパーツの話なども、「官能的な知性」を刺激する艶っぽい文体で書かれます。

ビジネス書に分類される本なのかもしれないですが、安っぽくない潤いがあり、とげとげしくない知性に貫かれ、いやらしくない官能があり、手厳しいけど人間愛のある日本社会への批判が盛り込まれます。

「婚活やおひとりさまに欠けているのは単なる愛だけではありません。それは、破滅を引き受けてやるぞとのセンシュアルな無頼で『いま・ここ』を生きる勇気にほかならない」。最後の「センシュアル0地点」はむしろ女性が読むべき項目かもしれません。

 

 

 同時に発売された、女性版。多くの「恋愛現役」の方のエピソードが興味深い。というか私には縁のない色っぽい話や自信と喜びにあふれたマチュアな女性の話が盛りだくさんで、恋愛先進国フランス的な感覚に基づいた指南の数々は、中学生レベル以下の草食系には敷居が高い。笑。ヨーロッパ映画をみるような感覚で(取材に基づいた実話なのですが)楽しみました。センシュアルとは生命力だな、と感じ入った次第。こんなセンシュアルな男女が増えると、社会はもっと潤いに満ちて、いろんなことがうまく回り、幸福度も高まることでしょう。センシュアルで世直し、賛成です。

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