肖像画で読み解くイギリス王室シリーズをまとめ読み。
 君塚直隆先生の『肖像画で読み解くイギリス王室の物語』。これすばらしい。豊富な文献を押えて、これまでぼんやりと眺めていた、あるいは初めて目にする、王室のメンバーが描かれている肖像画を、謎解きのようにスリリングに読み解いていく。とくに「群像」で描かれている絵の解説がいい。さりげなく書かれたフレーズから、これまで盲点だったイギリス史に関する知識を学んでいける。新しい発見の宝庫で、わくわくしながら読んだ。安定の君塚先生の技量が堪能できる、充実の一冊。

 

 こちらは齊藤貴子先生の『肖像画で読み解くイギリス史』。君塚先生がとりあげていない王室のメンバーとその周辺の人物を、君塚先生よりも情緒的な筆致で描いていく。(同じようなタイトルなので、つい比べちゃいますね、ごめんなさい。)後半は王室メンバー以外の人々を描く肖像画から、近現代のイギリスに迫る。男女の関係を書くとき、齊藤先生の筆致はより光る。エリザベス1世の50代のときの愛人、20代のエセックス伯のこととか。
君塚先生、齊藤先生の読み解き、それぞれに丹念に調べぬいたうえ、読み方と文体にオリジナリティがあって、豊かな読後感が残ります。

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ニコラス・ヒリヤードが描く、エセックス伯ロバート・ドヴルー。50代のエリザベス1世を惑わせた「白タイツの王子様」。写真はWikimedia Public Domainより。

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