Netflix で”Diana: In Her Own Words “。2017年のドキュメンタリー。ダイアナ妃がアンドリュー・モートンに語ったインタビューテープ(1991年)を用いて、彼女の肉声で、生涯をたどっていくという構成。
笑顔の奥で、幸せを感じたことなど実はほとんどなく、誰も彼女の苦悩をわかろうともせず、「おとぎ話」のプリンセスと見えた一生は、「いけにえ」としての生涯だったという衝撃。「いけにえ」というのは、彼女自身の言葉である。華麗なウェディングドレスに身を包み、彼女がdeathly calm(死んだように冷静)という状態で自覚したのは、「自分はいけにえになるのだ」ということだった。
皇太子が繰り返したセリフ。「愛にもいろいろある。」
いまだとわかる、このことばのズルさ。
過食症は、婚約一週間後から発症した。チャールズ皇太子の「ウエストが太めだね」という一言。70㎝を超していたウエストは、吐くことを繰り返し、60㎝になった。
最初は洋服なども全く持っていなかった。ドレスとシャツと靴をワンセット。婚約後は6セットに増やした。
驚くべきは、婚約時代から王室のサポートがほとんどなかったということ。かの悪名高い、胸元が見えそうな黒いデビュードレス。最初にチャールズ皇太子がそれを着たダイアナを見た時のひとことは、「その色は喪の時しか使わない」。あらかじめ、王室の誰かが教えてあげなかったのか。会場ではバッグの持ち方すらもわからず、恐怖と不安でいっぱいだった。
カミラもしたたかで、チャールズ皇太子の外遊中にダイアナをランチに誘う。そして質問「ハンティング(狩猟)はするの?」。ダイアナという名は、ギリシア神話では狩猟の女神の名。でもダイアナ妃は狩猟はやらない。それを知って、カミラはチャールズに会う機会を、ハンティングの時に定めるわけである……。
ハネムーンの時も、チャールズ皇太子は、ふたつの「C」がデザインされたカフリンクスをつける。カミラからの贈り物。ダイアナがとがめると逆ギレする。ハネムーンにおいてすら愛されないダイアナは、吐き続ける。
ウィリアム王子妊娠中は絶望し、階段からわが身を投げる。それでもチャールズ皇太子は心配のことばをかけない。エリザベス女王がわなわなと震える。
女の子を望んだチャールズ皇太子は、ハリー王子誕生の際には「なんだ男か」。
ダイアナの心の叫びに寄り添う人が誰一人いなかったという悲劇。すべて「ビョーキ」と片づけられ、大量の薬を処方されて終わり。
あるとき、ついに倒れてしまう。その後、「役割をまっとうする」覚悟を決める。
離婚後、覚醒し、「人類愛」のために生きる。イギリスから離れ、メディアに追われない外国で生きようとする。その矢先に…。
狩猟の女神の名を持ちながら、終始メディアにハンティングされ続け、そのあげくに「殺された」ダイアナ。
彼女の死を悼み、涙を流す人々、ケンジントン宮殿に捧らた花の山。
最後は涙なしには見られない。華やかな笑顔の映像に重ねられる、孤独な肉声。ドキュメンタリーとしての作りも巧い。
予告編はこちら。
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