「シン・ニホン」に続き、安宅和人さんの本。「イシューから始めよ」。聞いたことがあっても実態がよくわからなかったコンサル用語もバンバン出てきて勉強になるとともに、ビジネスパーソンは基礎的教養として読んでおくと互いに「今自分たちが何をやろうとしているのか」についての理解が早まり、仕事が進めやすくなる類の本。もっと早く読んでおくべきだったと背筋が伸びる思いがした。とはいえ、知的生産の方法としては、人文学の訓練でたたきこまれた「論文の書き方」にも通じるなと納得。ただ、人文学は人間の在り方にも関わるので「犬の道」的な回り道がともすると逆説的な豊かさに結びつくことがある。でもビジネスでこれをやっていると疲弊するだけ。そこが人文学とビジネスの成果主義との違いかなあ。人文学は経済的に余裕のある豊かな時代しかまともに成立しえないということ、あらためてひしひしとわかる。

以下、備忘録的なメモです。これだけ読んでも何のことやら、と思われたら本書をお読みくださいね。

・「悩む」=答えが出ない。「考える」=答えが出るという前提のもとに建設的に考えを組み立てること。

・バリューのある仕事は、イシュー度と解の質から成る。イシュー度とは、自分のおかれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さ。バリューのある仕事をして世の中にインパクトを与えようとするなら、イシュー度こそが大切。

・意味のない仕事を断ち切ることこそが大切。「正しい問題」に集中した「正しい訓練」が成長に向けた鍵となる。

・情報をかみしめる人、つまりさまざまな意味合い、価値、重さを正しく理解できる人。

・そもそもこれは何に答えを出すためのプロジェクトなのか、というイシューを明確に共有すること。

・よいイシューの表現は、whyではなく、where, what, howのいずれかの形をとることが多い。何について白黒はっきりさせるのかを明確にする。

・よいイシューの条件は、本質的な選択肢である。深い仮説がある。答えを出せる。

・常識を否定する=Counter Intuitive (直感に反したもの)。肌感覚の常識が反証されたときのほうがインパクトが大きい。

・新しい構造で説明する=共通性の発見、関係性の発見、グルーピングの発見、ルールの発見。

・コールドコール=知らない人に電話でインタビューを申し込むこと。

・聞き手の想定=賢いが無知。聞き手は完全に無知だと思え。聞き手は高度の知性をもつと想定せよ。

・本質的でシンプルをめざせ。「本当に大切」だけがあればよい。

・Complete Staff Work. スタッフとして受けた仕事は完遂せよ。プロフェッショナルの世界では努力は一切評価されない。すべての仕事は結果がすべてであり、結果があるレベルの価値に到達しないと、その仕事は価値を持たず、多くの場合害悪になる。人から褒められることではなく、生み出した結果によって変化が起きることが報酬。

 

時折読み返して自分の仕事をチェックするものさしとしたい。

 

“The fundamental issue is the moral issue.” (By David Attenborough)

おそらくファッションがテーマであろうと、モラルに関するイシューを見つけることができれば、領域を超えて多くの人に響くのだ。

 

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