◇やはりガリアーノの解雇は免れなかったようだ。先週木曜の暴言事件(2月25日の記事を参照してください)につづき、新たなスキャンダルが飛び出し、これが解雇の決定的要因となった。

昨年12月にパリのバーにて携帯で撮影されたという動画が、ネット上に投稿された。日本から動画で見ると、問題部分はビープ音がかかっているが、英「インデペンデント」3月1日付の記事は、そこで交わされた会話の問題部分を掲載している。酔っぱらったガリアーノはこんなことを言ったとのこと。

Galliano: ……  I love Hitler and people like you would be dead today.  Your mothers, your forefathers, would all be fucking gassed and fucking dead.

Females: Oh, my God.

Female 2: Do you have a problem?

Galliano:  With you — you’re ugly.

Female 2:  You don’t like peace? You don’t want peace in the world?

Galliano: Not with people, like ugly peole.

Female 2: Where are you from?

Galliano:  Your asshole.

ガリアーノに容疑がかかっているタイミングに、昨年撮られた動画がアップされるのは、弱いものいじめのようなもんではないかとも思うが、この新スキャンダルで、ガリアーノの反ユダヤの立場が確認されたかたちだ。少なくとも、酒癖の悪さは。動画がアップされるまでは、彼の処分はまだ保留されていた。動画が世界的に広まったことで、ディオールのイメージダウンは決定的となり、解雇となったのだ。

これはまるで、インターネット裁判である。

25日の記事で、人種差別的暴言に対するフランスの法律はどうなっているのかだれか教えて、と書いたが、同記事に答があった。フランスの法律では、人種差別的発言は19,000ポンドの罰金と6か月の禁固刑が科せられる、と記事にあった。

◇一連のガリアーノ・スキャンダルに関し、英「テレグラフ」のヒラリー・アレクサンダーは「堕ちたアイドル」と題した記事のなかで、悲しみと同情を表明。これまで20年間ガリアーノの天才ぶりを追い、涙するほど感動することもあったという記者は、いま、別の種類の涙を流している、と。

アレクサンダー・マックイーンの自殺から一年。常に新しい商品を世に送り続けなければならないプレッシャー、ストレスは、(彼の場合と同じような)自己破滅行動を招く、とヒラリー。

ガリアーノの行動は今のところ弁護の余地なしとはいえ、一つだけ確かなことがあって、それはガリアーノが助けを必要としている、ということである、とヒラリーは結ぶ。今こそ彼が、これまで彼が貢献してきたファッション業界からの支援と愛をうけとるべきときだ、と。

ヒラリー・アレクザンダー、この「ゼロ・トレランス(人種差別主義者に対しては断固たる態度をとる)」のムードのなかで、よくぞ言ったと思う。マックイーンもガリアーノもイギリスが生んだ天才デザイナーながら、繊細なところがあり、グローバルモード界の容赦ないサイクルに巻き込まれて自己破滅行動をとったような感がたしかにある。ガリアーノは、いまこそリハブでもなんでも、助けを必要としている。だけどやはりトレダノとアルノーは容赦しなかった。

◇オスカー授賞式で、この時期にあえてディオールを着た大女優がふたり。ニコール・キッドマンとシャロン・ストーン。でもガリアーノを弁護する言葉は誰からもでなかったそうである(英「ファイナンシャルタイムズ」)。セレブ世界の「お友達」関係なんて、その程度のものか。

主演女優賞を獲得したナタリー・ポートマンは、ディオール社の香水「ミス・ディオール・シェリ」の顔でもあるが、ロダルテを着用(ロダルテは「ブラックスワン」のバレエコスチュームをデザイン)。「ユダヤ人であることを誇りに思っている一人として、今後一切ガリアーノとかかわりたくない」とコメントしたという記事が、英「ガーディアン」に出ていた。

ガリアーノはケイト・モスのウェディングドレスをデザインしている最中だった。

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