1月11日(土)大安、J-Lux Salon あらため雅耀会が始動しました。アドバイザーを拝命し、基調講演をさせていただきました。「次世代ラグジュアリーと日本の卓越技能の未来」。

ラグジュアリービジネスの現在 / ウェルビーイングと日本/ 各国で起きている次世代ラグジュアリービジネスの考え方 / 日本の伝統工芸・卓越技能の長所と課題 / 世界各国のラグジュアリー組織は何をしているのか? / ラグジュアリー教育 / 日本がとるべき戦略と目指したい未来

について大きな見取り図としてほぼ90分と質疑30分ほど。

行政に携わる方々、ブランドのデザイナー、伝統工芸に携わる方、経営者、メディア、教育関係者を中心に関心の高い方々が遠方からも集まってくださいまして、未来への手ごたえを感じる幸先のよいスタートになりました。

情熱と関心の高い方々をどんどん巻き込み、大きな渦を生んでいけることを願い、応援しています。

 

On Saturday, January 11th—an auspicious Taian day—the J-Lux Salon, now rebranded as Gayo-kai, officially launched. I was honored to be appointed as an advisor and to deliver the keynote speech on “The Future of Next-Generation Luxury and Japan’s Artisanal Excellence.”

The lecture offered a broad perspective on key themes such as:

  • The current state of the luxury business
  • The relationship between well-being and culture of Japan
  • Emerging concepts of next-generation luxury across different countries
  • Strengths and challenges of Japan’s traditional crafts and exceptional skills
  • How luxury organizations worldwide are evolving
  • Luxury education
  • Strategies Japan should pursue and the future it should envision

I spoke for nearly 90 minutes, followed by a 30-minute Q&A session.

It was a promising start, filled with a sense of momentum for the future, as passionate and engaged participants—including government officials, brand designers, traditional artisans, business leaders, media professionals, and educators—gathered from near and far.

I look forward to seeing this growing wave of enthusiasm and passion expand, drawing more people in and creating a powerful movement.

コラージュ上の左から、Fashion Studies 主宰の篠崎友亮さん、若きスポンサーの菊地耀仁さんです。雅耀会の「耀」はこの上なく光り輝くという意味ですが、菊地さんのお名前の中の一文字でもあります。

 

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全方向から、さらに分解された内部の構造から、歴史上の衣服の詳細を視覚的に明らかにする驚きの西洋近代服飾史。447ページにおよぶ、ずしりと重いオールカラーの写真本は類例がない。長谷川彰良さんの情熱の結晶、『近代服飾史の教科書』。本当におめでとう。

本HPの長い読者の方には記憶があるかもと思われるのですが、まだアパレル企業に務めていた彼から初めて衣装コレクションを見せていただき、これは世界で誰もやってないはずだからGO!と背中を押してしまってから10年。

こんなに素晴らしく結実した成果を見て深く感動しています。10年は実に長く、でもあっという間だ。私も次の10年を視野に入れて着実に行動を積み重ねていこうと気持ちを新たにしました。

重ねて、おめでとう。そしてありがとう。

日経の記事として扱わせていただいた「ザ・リュクスプレナー」の著者、エリザベス・ソラルにインタビューした記事の全文をnote に公開いたしました。3パートに分けています。

In Conversation with the Author of Luxpreneur. Part 1 – The Emerging Future of Luxury | 記事編集 | note

 

In Conversation with the Author of Luxpreneur. Part 2 – Misconceptions About the Luxury Business and |KAORI NAKANO / 中野香織

 

In Conversation with the author of The Luxpreneur. Part III – Unveiling Japan’s Hidden Potential in L|KAORI NAKANO / 中野香織

 

とりわけPart IIIは、日本の企業あるいは起業家に対する助言として伺っています。お役に立てば幸いです。

次回の日経コラムでも引き続き、海外のラグジュアリーセクターで働く方にインタビューした記事を掲載いたします。どうぞお楽しみに。

本日12日付のNIKKEI the STYLEに「スーツに宿る内部の美学」というタイトルで寄稿しました。分解マニア長谷川彰良さんの功績にフィーチャーしつつ、スーツ360年の歴史を2000字余りで一筆書き解説しました。この図は記事の紙面をAI アート化したものです。ぜひ本紙でご覧ください。

11日付の日本経済新聞夕刊連載で、『ザ・リュクスプレナー』の著者、エリザべス・ソラルさんにインタビューした記事を書きました。電子版はこちら

「ラグジュアリーは、哲学である」と言い切り、この分野で起業するための心得と方法をサクサク説き行動でも示すソラルさんには共感し、多くのインスピレーションをいただいた。

アントレプレナーは社会課題解決をめざすが、
リュクスプレナーは人生を変えるほどの体験といった価値を提供する。

あなたの価値は、あなたが叶える願望とあなたがもたらす夢によって決まる。

これからは「見せるラグジュアリー」から「知るラグジュアリー」へ移行する、という予言は彼女だけではなく、スペインのラグジュアリーセクターの方からも聞いた。

人生を格上げするだけでなく文化を格上げするラグジュアリー、 日本に大きなチャンスがあります。

 

記事の英語版はこちらです。

昨日は今年の初出張、日帰りで高知。フレッシャーズのぴんと伸びた姿勢にこちらの気持ちまで洗われる。初心に還り、希望を語り続けようとあらためて決心する。

帰途の空港売店では、激辛からフレッシュまで、柚子胡椒を数種類、購入しました。高知の柚子胡椒はおいしい。やみつきです。

休む間もなく、『アパレル全史 増補改訂版』(仮タイトル、5月刊行予定、あくまで予定)に新しく加える34項目ほどをとりあえず全部提出した。2年以上かかった。

何名かには直接インタビュー、取材できなくても文献と作品読み込み、必要あればお写真の依頼や事実関係の確認、それぞれの項目でぜんぶ一人でやって書ききった感あり、ぐったり疲れたけど心地よい達成感もある。

わかる方にはわかっていただけると思うが、ファッション業界は検閲が厳しい。せっかく原稿を書いて事実関係を確認しようとしたら「そもそも掲載を控えろ」と言ってきたデザイナー(のご遺族)もいらっしゃる。この人がいないと歴史のピースが埋まらないのに。

「並び」(名前が出るのは競合の先か後か)を気にされるブランドも多くて、すべてに配慮していたら倒れそうになる。

そんなこんななので、現代ファッション史を書くのはおそろしく難度が高い。

でも、だからこそ、挑戦してしまう。

インタビューや写真の提供にご協力くださったデザイナーやブランドには、感謝してもしきれない。本当にありがとうございます。

これからチェックや写真をお願いするブランドもある。

どうかどうか、寛大にご協力ください。

ラグジュアリーの研究が楽しい理由のひとつは、 この業界に関わる人々のコミュニケーションの作法である。

ヨーロッパのラグジュアリービジネスに関わる方々の多くは、うっとりするくらいに美しく、情緒に訴える知的な英語を使う。

心の底からあなたとのかかわりを光栄に思っているという言葉の使い方に長けている(本心はどうあれ)。

コミュニケーションがきめ細やかで愛情を感じさせ、また連絡を取りたいと思わせる。そんなコミュニケーションが幸せなので、お付き合いが続く。

ちなみに私は顧客でもなんでもない、一研究者である。

ラグジュアリーマネージメントにおいて必須とされる 「(顧客)エンゲージメント」というのは、まさにこのことなのだ。 あなたのことを深く気にかけている、と相手に感じさせるコミュニケーションの魔法。

その体験が実は世の中にはそれほど多くはないために、価値も高くなる。

日本には別のエンゲージメントの作法もあると思う。プロダクトやサービスを磨くとともに、ここを意識的に鍛えると 必ずよい結果がついてくる。

日本には「控えめ」であることを美徳とする文化があり、海外に倣おうとしてここをはずすと無理が生じることがある。

「予測的な配慮」、つまり相手の気持ちの動きや行動を先読みして察し、それに備える、というのはおそらく日本人(とりわけホスピタリティ業界のプロフェッショナル)が傑出して持つ特技ではないかと推測する。「言葉で言わねばわからない」文化との違いというか。それをあたたかさをもって行うことが、日本的な顧客エンゲージメントにつながるようにも思う。

 

One of the joys of studying luxury is observing the art of communication practiced by those involved in the industry.

Many individuals in the European luxury business communicate in English that is not only intellectually refined but also emotionally evocative—so exquisite it feels almost enchanting.

They excel at conveying a profound sense of honor in engaging with you (sometimes regardless of their true feelings).

Their communication is meticulous, warm, and heartfelt, leaving you with a desire to connect with them again. This attention to detail and genuine tone creates a sense of happiness, fostering enduring relationships.

For the record, I am neither a client nor anyone of importance—just a humble researcher.

The concept of “engagement,” a cornerstone of luxury management, is precisely this: the magical ability to make others feel genuinely cared for.

This kind of experience is rare, which is why it holds such extraordinary value.

Japan, I believe, has its own unique approach to engagement. By consciously honing this skill alongside refining products and services, it is certain to lead to remarkable results.

Japan has a culture that values being “reserved” as a virtue, and disregarding this in an attempt to imitate foreign practices can sometimes lead to unnatural outcomes.

“Anticipatory care”—the ability to intuit and prepare for the emotional movements or actions of others—is likely an exceptional skill possessed by Japanese people, particularly professionals in the hospitality industry. This contrasts with cultures where “things must be explicitly stated to be understood.” Conducting such anticipatory care with warmth, I believe, leads to a uniquely Japanese form of customer engagement.

<ラグジュアリー文脈のなかで日本の卓越を支援する>サロンの第一回のご案内です。

続く災害で大打撃を受けながら何度も立ち上がり、世界で共感の輪を広げている輪島塗がテーマです。ブルネロ クチネリ ジャパンに賛同いただき、表参道店B2アートスペースが会場になります。輪島塗の最高峰の作品に囲まれながら、輪島塗の千舟堂・岡垣祐吾社長のお話を伺います。

もっとも嬉しい支援は「買っていただくこと」という職人さんたちの声を輪島で聞いていたので、会費にはすでに輪島塗のお土産代が含まれております(ランチ代も含まれます)。

岡垣社長とクチネリ ジャパンの宮川ダビデ社長にはどこか似た雰囲気を感じます。守るべきもののために献身する優しい覚悟を感じるところも通じているかなあ。クチネリ ジャパンさんのご厚意で、最後に表参道店のツアーもありますので、輪島塗の世界とブルネロクチネリの哲学をともに体感できるまたとない機会になります。

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Salon Explore #001 会食&トークセッション

輪島塗の物語 災害を乗り越え、共感の輪を未来へつなぐ
ゲスト:岡垣祐吾 千舟堂/岡垣漆器店 代表取締役
聞き手:中野香織 著作家/服飾史家

日程 2025年2月22日(土)12時~16時(11時30分から受付開始)
会場 表参道のレストラン&ブルネロ クチネリ 表参道店B2Fアートスペース

詳細、お申し込みは、こちらからお願いいたします。

「ラグジュアリーの羅針盤」VOl.26がウェブ公開されました。「牛首紬の復活」ストーリー、前編です。 建築業から伝統工芸の復活・継承に携わることになった西山家の奮闘。こちらでお読みいただけます。

建築業から伝統工芸の復活・継承に携わることになった西山家の奮闘。伝統継承のために必ずしも「家」にこだわる必要はないのだという証明にもなっています。

取材に応じてくださった西山博之さん、ありがとうございました。

Here is an English version.

謹賀新年。 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

海外でビジネスを展開することの重要性が説かれており、条件がかなえば良いと思います。

一方、現在は国内にとどまり力を蓄え磁石のように惹きつけるというやり方も強いと感じています。わたくしごとで恐縮ですが、

昨年は日本の産地や職人の取材が増えて、海外には一歩も出なかったのです、しかし、

ふりかえると、海外のラグジュアリー関係者が私の方に来ていた。

英ラグジュアリー統括団体ウォルポール関係者の来日時に講演する機会もあったし、スペインのラグジュアリー領域で働く方にも日本旅行中の面会を申し込まれた。

フランスのラグジュアリー起業家の来日時の取材も請け負ったし、イギリスの若きラグジュアリー起業家の本を紹介する機会にも恵まれた。

フランスの大手コングロマリット日本支社、 その傘下のイタリアの宝飾ブランド日本支社での講演をする機会まであった。

こちらから売り込まずとも、関心をもっていただければ来てくれる。

モノは輸出できても、文化や思想は押し売りできない。

来る方はすでに価値を感じているので価格競争にも強い。

エネルギーを、磁石としての力を磨くことに集中するのもありです。

もちろん、機会があれば海外にも積極的に行動を広げるのは楽しいし、知見を広めるためにもどんどん行ったらいい。ただ、円が安い今の時代は国内にとどまり強みを発揮する可能性を広げるチャンスかもしれませんよ!

どなたにとりましても、可能性を最大限に発揮できる良い年となりますよう、お祈りいたします。