芦田多恵さんにお誘いいただき、石井竜也30周年記念コンサートに出かけました。24日、音楽の殿堂、上野の東京文化会館大ホールにて。

東京フィル・ビルボードクラシックオーケストラの管弦楽×石井竜也。オーケストラの演奏を背景に、休憩をはさんでほぼ2時間、石井竜也がひとりで歌いきります。約2300人収容できる大ホールはほぼ満席。そしてステージには石井さん作のアート作品も飾られています。作詞・作曲をして歌まで歌い、アクセサリーも作り、衣装もデザインし、絵も描くという石井さんの多才なルネサンス人ぶり。

第一部はオーケストラによる米米CLUBのヒット曲の序曲から始まり、「 THE WING OF DREAMS~夢の翼~」「 Pink Champagne Night」「LOVELY SMILE」と続いていく。

聴き慣れていたポップな曲が、オーケストラのしっとりと格調高い演奏になじんでいることに驚きます。というか、本来、交響曲として作られたんじゃないかというくらいぴったり。オーケストラのテンポに合わせて丁寧にゆっくりと歌われるので、ひとつひとつの歌詞が心に確実に届けられます。

編曲は千住明さん、指揮は大友直人さん。この三人は家族ぐるみのお付き合いが長いそうです。この日も、大友さんの奥さまと、石井さんの奥さまマリーザさんにご挨拶させていただきましたが、お二人とも、このような仕事での競演は夢にも思っていなかったことで、実現したのはほんとうにうれしいと語っていらっしゃいました。

「 Party Joke」「 HORIZON」「出逢い」と続くうちに調子も上り、合間、合間にはさまれるトークでも笑わせてくれます。大好きだったおじさんのエピソードというのがひときわ印象深かった。「僕がガレージに火をつけて燃やしちゃった時もおじさんだけが僕の味方になってくれて、僕を浜辺に連れ出して 『竜也、おまえ、なにやった?』『(泣きじゃくって)燃やっ、燃やしちゃった』『それはいいこと?わるいこと?』『(泣)わ、わるいこと』…」(というようにこんこんと諭してくれた)。「そんなおじさんが大好きで、愛してるとか、尊敬してるとか、そんなことばだけじゃ表せない感情、愛してる以上の感情があるなって。そんな思いで作った曲です……」というすてきなトークの後に「愛してるだけじゃない」と続く。ぐっときますよね。

そして第一部最後の曲として「 君がいるだけで」。照明も巧みで、歌に合わせてドラマティックに変わっていくのです。石井さんのステージ衣装も、ご自身のデザインだそうですが、燕尾服の変形型。白いウエストコートの後ろがひらひらとたなびくように作られており、オーケストラの黒×白の正装と違和感なくなじみながら、スターのオーラを引き立てます。目にも楽しいコンサート。写真は、公演パンフレットより。

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休憩をはさんで、第二部はドヴォルザーク「スラブ舞曲第8番 ト短調」からスタート。「これト短調だから好きなんです。ヘ長調だったら嫌いですね。ぼくもいつかト短調作りたい」というコメントで笑わせながら、「Where is Heaven」「 天地の乱舞」「Eternal Ligth」と続いていきます。

千住明さんのこの曲は、本来はウィーン少年合唱団のような感じで歌うべき曲なのに57にもなるおっさんが歌っていいものか、などと笑わせながら客席から見守っていた千住明さんをステージからご紹介。客席の千住さん、指揮台の大友さんとの三人の強くてあたたかな友情が終始感じられたのも、このコンサートの大きな魅力でした。

そして、米米からソロになって初めてのシングルを拾い上いあげてくれた企業としてJALへの謝辞を述べて、「 WHITE MOON IN THE BLUE SKY~FLYING HEART」「浪漫飛行」のクライマックスへと続きます。前者は東京から沖縄へ行くとき、後者は沖縄から東京へ向かうときに流れているそうです。ちなみに私が石井竜也ワールドでいちばん好きな曲は「浪漫飛行」。ishii tatstuya white

第二部では、このように白一色に衣装替え。写真は同じく公演パンフレットより。

そしてアンコールに入るのですが、そのときのトークが今回のピカイチでした。「子供の頃からお調子者で好奇心が強く、誘われるとついふらふらとそっちに行っちゃうんです。どうか誘惑しないでくださいね」。

実は最近のスキャンダル報道があってからの、最初のコンサートでした。そこでこのギャグ。会場も爆笑で拍手。ファンはみんな寛大で、あやまちをすぐ認めて謝った石井さんを愛をもってゆるし、変わらず応援している、そんな優しい空気が満ちていたのです。この優しさに包まれたことが、最大の収穫だったような気がしています。

私の隣には妻のマリーザさんが座り、一曲一曲、祈るようにステージを見つめ、うなずき、安堵し、拍手し、ステージ上の石井さんの心と一体になっていらっしゃることが伝わってきました。強い信頼の絆を、マリーザさんの表情、振る舞いすべてから感じとることができました。

 

そして歌われる「幻想の理想」。途中から、マイクを下ろし生の声で熱唱します。オーケストラも音量を絞っていき、会場が石井さんの声で一体となった瞬間でした。「人は幻を求め 現実に夢を見る そして気がついたら 何もないことを知る」歌詞がすべてリアリティをもって迫ってきます。あちこちで涙ぐむ人が。

次の「君に戻ろう」で歌い出しを間違えるミス。これがかえって爆笑を呼び、大友さんと石井さんの絶妙なやり直しのかけあいで、ひときわ会場の一体感が強くなります。ぜったいにミスをしないことも大切ですが、ミスをすみやかに挽回し、かえってそれを利点に変えていく力量にその人の真価があらわれるものですよね。ここにおいてもそんなことを感じました。

最後に、熊本・大分の地震で被災した人々へのメッセージもこめて「まだ早いかもしれませんが」とお断りを入れ、「ヒハマタノボル」。

「日はまた昇る この町に 雨も雪も風も闇も それでもまた日は昇る」……。さいごに合掌しながら深々と礼。感動の余韻を残してステージを去っていきました。

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写真は、石井竜也公式フェイスブックページより。

終了後、芦田多恵さん、ご主人の山東英樹さん(Jun Ashida社長)、広報の熊井美恵さんとともに、楽屋に感動を伝えにうかがいました。こんな貴重な経験をさせていただけるのも、山東さん、多恵さんご夫妻と石井さんご夫妻の日頃のおつきあいがあるおかげ。私までご相伴にあずかり、心より感謝します。

実は多恵さんは2月のオーチャードホールでのこのコンサートにも参加しており、この日が二度目です。内容がすばらしいので何度も聴きたくなるということももちろんありますが、報道で落ち込んでいるかもしれないマリーザさんを”We are here on your side”と励ましたいという思いも強かったのではないでしょうか。このような友情にも胸があつくなります。

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左から山東英樹さん、芦田多恵さん、石井竜也さん、中野、マリーザさん。写真を撮ってくださったのはジュンアシダの有能な広報、熊井美恵さんです。写真は、みなさまのご了解を得て掲載。

奇しくも私も人生の新しいスタートをきったばかり。今後の方向を希望の光とともにさし示してもらったような忘れがたい一夜でした。友情、愛、寛大なゆるし、ユーモア、そしてことばと音楽によって人と人とがやさしくつながりあい、心を支え合うことができるというヒューマニティのすばらしい一面を共有できた約2000人を超える観客のみなさまにも、お礼を申し上げたい気分です。

 

 

三菱一号館美術館にて大好評開催中の「パリ・オートクチュール」展。遅まきながらようやく観ることができました。

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オートクチュールとは、顧客の注文に合わせてデザイナーの主導でつくられる一点ものの服。19世紀後半にパリに誕生してから現在までの歴史を、およそ130点のドレスや小物とともにたどることができます。

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撮影が許可されている部屋がひとつあるというのも、いいですね。カタログの平板な写真ではなく、「来た、観た、撮った」で完結したい願望がささやかに満たされます。笑

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ディオール、バレンシアガ、ジバンシー、シャネル、サンローラン、ゴルティエ、ラクロワ、アライア。やはり現物の立体的な構築感は迫力が違い、とりわけ20年代のビジュー縫込みドレスや、バレンシアガの複雑な構成のドレスなど、文字通り目がくらみそうな美しさ。

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グローブに金の爪がついたこの手袋は、スキャパレリによるもの。さすがシュールレアリスムの女王。
ドレスは着るとまたちがう顔を見せるので、着てみたらどのようになるのか、あれこれ想像しながらの充実の体験でした。

5月22日まで開催されています。

三菱一号館美術館開館6年目にして初めてのファッション展。今年はあちこちでファッション展が開かれていますね。喜ばしい限りです。

 

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Special Thanks to Ms. Hanae Sakai

明治大学リバティアカデミー(公開講座)、プロデュースさせていただいた地引由美先生の「香水学」が開講しました。

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土曜の朝、キャンパスに入るとふわっと漂うよい香り。かぎられた人生の時間をより深く濃くしていくための香水の基礎知識、教養と同じで「鼻につく」と言われないためにも(笑)自分自身の自然な構成要素のひとつとなるほどあたりまえに身につけておくことで、魅力も、ひいては、周囲に対する影響力も、変わってくるはずです。

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右脳も左脳も五感も、天からのギフトにタブーなし。持てる身体能力はすべて活かし、その特性を学び、磨けるものはすべて磨いてまいりましょう。

今日、地引先生のお話で興味深かったこと。肌に直接つけるものである香水は、心が嬉しいと感じることで、いっそう香りが前面に出ていくのだとか。逆に、気持ちが引くと香りも引いていくそうです。言われてみれば。

一方、繊維に入り込む洗濯用の芳香系柔軟剤はケミカルでできており、ところかまわず平板な匂いをまきちらし、身体にも嗅覚にも文化的にも必ずしもよいものではない、ということ。

一考に値します。

 

また、地引先生によれば、香水は人の肌の上で命を得るものだそう。「香水は、私たちとともに、何時間か、生きている」のだそうです。そのように香水を扱うことで、効果が違ってくるのは当然ですね。

京都国立近代美術館にて、ポール・スミス展が開催されます。詳細はこちら

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7月3日(日)午後2時よりトークセッションがあり、私も登壇させていただきます。関西方面のみなさま、よろしかったらぜひどうぞ。お目にかかれますことを楽しみにしています。イベント詳細は、こちらです。

 

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トークセッション「メンズファッションの歴史と現在」
日時:7月3日(日)午後2時~3時30分
ゲスト:中野香織氏(明治大学特任教授)
百々徹氏(京都造形芸術大学准教授)
モデレーター:蘆田裕史氏(京都精華大学講師)
会場:京都国立近代美術館 1階講堂
定員:先着100名(午前11時より1階受付にて整理券を配布します)
※聴講無料(本展覧会の観覧券が必要です)

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明治大学リバティアカデミー「メンズファッションイラストレーションの世界」。

5月の水曜の夜(11日、18日、25日)、ご一緒に楽しい学びをいかがでしょう。

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第二回目(18日)のトークゲストはホイチョイ・プロダクションズの馬場康夫さんです。

ホイチョイの最新刊『電通マン36人に教わった36通りの「鬼」気くばり』(講談社+α文庫)も面白いですね。
これを読んでからの私のビジネスマナーはがらりと進化したはずです。笑

綿谷寛×馬場康夫×中野香織で、ファッション&カルチュア&〇〇〇の濃いお話を展開します。どうぞお楽しみに!

 

詳細は、こちらです

 

アジア圏初の(!) ナジワ・カラームのインタビュー、後半です。

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―――ナジワさんは、日頃常にパパラッチに追われる生活を送っていらっしゃいますが、今回、プライベートでの初来日で、パパラッチを意識しなくてもいい数日間を過ごされていますね。そのギャップは、失礼ながら、どのように感じていらっしゃいますか?

「いい面とよくない面があるわね。いい面は、自由でいられること。良くない面は、いつもつきまとうものがなくて物足りないこと(笑)。私は母国でファンやカメラマンに追いかけられると、彼らからの愛を感じるの。それがないと、ちょっとさびしいわ」

ここで、彼女の親友が少し補足します。ナジワはファンのために、いつ、どのような頻度で、どこに現れると効果的なのかということをよく考えているのだ、と。ファンにとっての「プレザンス・ヴァリュー(存在の価値)」を常に頭に入れて、意識的に行動しているのだそうです。

これはスターの責任感というものを通り越して、もはや愛ですね。ファンからの愛に応える思いやり。それを伝える行動。

―――ここでちょっとナジワさんの恋愛観を聞いてみたいと思います。男性に自分を追いかけさせ続ける秘訣のようなものがあったら教えてください。

「それは男性に聞いてみないとわからないけど(笑)。リレーションシップにおいて大切なものなら、お答えできるわ。男女間にもっとも必要なのは、信頼(trust)ね。お互いに率直で何も隠すものがない(clean and clear)、という透明性から生まれる信頼、そして謙虚さは、リレーションシップに不可欠よ」

謙虚さと透明性。これは仕事で成功をおさめる多くの一流の人々の哲学にも通じるもの。

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(By Courtesy of Najwa )

さらにここから、彼女の幸福論が展開していきます。まったく予想もしていなかったこの展開。途中で、私も、ナジワ自身も、他の同席者も、思わず涙ぐむシーンがあったりもしました。すべてを書いていると非常に長くなりますので、かいつまんでご紹介することをお許しください。

「女性は守られているという安心感が必要。一方、男性は女性を愛したいと思っている。男性は、仕事で成功するために、そしてよりよい人間になるために、愛を必要とするんです。この両者のバランスが大切なの。女性はどんなにキャリアを積もうと、決して男のようになってはいけません。女性は、どんなにリッチになろうと、有名になろうと、地位が高くなろうと、忙しかろうと、常に女性であることを忘れず、女性らしさを保ち続けなくては。女性らしくあること、これがすべての根本になるのです」

「樹は、根っこをしっかりと地中に張ることで、どんなに高くなっても、嵐に負けません。女性らしさは、根っこのようなもの。中身(substance)がきちんとあって、かつ、女性らしさを根本として保ち続けることができれば、どんな障害にも負けない強さを手に入れることができるのです。まずはあなたが主体となって女性らしくいようとすることで、リレーションシップをうまく機能させることができ、ひいては、自分自身を強くすることができるのです」

―――仕事や子育てや社会奉仕に没頭していると、つい「男」になってしまう身には、耳が痛い話です……。女性らしくい続けたいと思っても、仕事とのバランスをとることは、本当に難しいと感じます。どうすればいいのでしょう。

「目覚めること(awakening)ね。自覚すること(awareness)! それがすべて」

まずは女性が女らしさをきちんと自覚して、それを根本として保つこと。愛情を注ぐこと。これこそが、リレーションシップにおける幸福をもたらし、ひいてはそれが仕事上の成功をももたらし、人生全般の幸せを感じられる秘訣である、というこの考え方、というか古くて新しい「智恵」。人類に普遍的な「智恵」としてどの文明にも古くからあった考え方であったと思うのですが、女性の解放が進むうえで、いつのまにか「古い」ものとされてきた。でも、いま、自分自身を含むあらゆるところで進行しているアンハピネスを救うのは、まさにこの「智恵」、そして女性がそこに「目覚める」ことなのではないか。

見ないようにしていた痛いところを直撃され、それこそ目覚めをもたらしてくれたような経験でした。

ナジワの歌やファッションばかりではなく、ニューフェミニズムと呼べそうな哲学も彼女の魅力を構成しており、このようなマインドを持つからこそ、彼女がかくも長きに渡り大スターとして活躍し続けられるのだということが実感できました。

今回、同行した彼女の親友がナジワを表して、「One of a kind」(ほかに代わりがいない)と表現したことが印象的でした。
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屋形船のパフォーマンスから得たインスピレーションで、日本とアラブの音楽をミックスしてなにかできないかと真剣に考えているそうです。次回の来日では、ぜひそのような音楽を聴きたい!

さらに、彼女のコミュニケーション手段として、香水があります。もうね、ほんとうによい香りがするんですよ。ナジワの人がら、女らしさを、ことば抜きに、ダイレクトに伝える香り。アラブの香水と、西洋の香水数種類をコンバインして作る、オリジナルな香りだそうです。ご自分の名を冠した香水ブランドを作ることも考えているそうで、こちらも楽しみ。

次の来日を指折り数えない理由はないでしょう?

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それにしても今回のきらめくようなご縁には、ただただ感謝するしかありません。ナジワの左は、彼女の親友のビジネスパートナーであるニッケイグローバルの代表、皆見友紀子さん。2月のブガッティのパーティーでお会いしたのが、ご縁の始まりでした。彼女の通訳っぷりがあまりに大胆すぎて面白く、場もわきまえずわははと笑ってしまったのが打ち解けるきっかけでした。だってほんとに面白いんだもん。次回来日時もお会いしましょう、と言っていたのが実現したわけですが、それにしても今回、彼らがまさかこんな大スターを伴っていらっしゃるとは誰が想像できたでしょうか。

ソウルメイト云々の言説を持ちだすとうさんくさくなりますが、しかしほんとうに、スピリットというかソウルとかマインドと呼ばれるようなものを淡々と地道に磨き続けていると、時に、予想もできないような出会いがプレゼントされるものなのですね。目の前の人にフェアでオープンであること、自分の心にも目の前の人にも率直であること、ジャッジせず寛容とユーモアで包み込むこと、こちらがひとつ大きめのギフトを差し上げるつもりで接すること。心がけてきたのはそんなことでしたが、ナジワがまさにその理想型のような人でした。しかも究極の「ザ・ウーマン」!これからは「女性らしくあること」も心がけなくてはね。言葉遣い、心遣い、香水使いも含め、あたたかで愛ある「ウーマン」の余韻を残していくこと。ナジワから学んだことはとても大きい。

 

 

前項で紹介したような中東の大スター、ナジワ・カラームが、プライベートで初来日するということじたい、スリリングで興奮ものだと思うのですが、来日中に二度もゆっくりとお会いすることができたナジワは、スター気取りなどとは全く無縁の、周囲への気配りを絶やさないあたたかくてオープンマインドな女性でした。

屋形船に続き、二度目に会ったリッツカールトン東京のスイートルームでも、大きな目をまっすぐに私に向け、「まちがいない。あなたに会ったことがある」と再び真顔で言われたのでした。嘘をつくような人ではなく、お世辞や社交辞令を言うような人でもない(私にそんなことを言う必要がそもそもない)。私も心の深いところで、同じような懐かしさを覚えたので、これは真実として受け止めました。たぶん、前世で会っているか、同じ魂を共有しているのかもしれません。そういう不思議な感覚って、あるのですね。

いずれにせよ、私を全面的に信頼してくれて、今回のようなインタビューができることになりました。通常であれば、マネージャーや事務所を通した、写真制限・時間制限ありの不自由なインタビューしか許されないところです。スマートフォンでの写真なのに、ナジワはわざわざハンサム&セクシーなスーツに着替えてくれ、言葉を選び、誠実に話をしてくれました。その場に居合わせた全員が、涙ぐむほどの深い愛を感じさせる言葉も発せられたほどのこの経験は、生涯忘れがたいものになるでしょう。najiwa 12
(By Courtesy of Najwa.  話に熱が入ると、英語からアラビア語になり、それを彼女の親友が英語に訳してくれました)

中東文化にほとんどなじみのない私は、中東といえばイスラム教と結びつけがちだったのですが、彼女の生まれた土地、レバノンのザハレという地方都市は、住民のほとんどがクリスチャンという町です。ナジワもカトリックの家庭で、フランス語で教育を受けています。英語も話します。ファッション上の制約もほとんどないそうです。

保守的な家庭で、四人兄弟の末っ子として育った彼女は、キリスト教系の大学を卒業して教師になりますが、幼少時からの歌手への夢をあきらめることができず、テレビのオーディション番組に出場します。ここで優勝し、厳しい父の許しを得て、レバノン音楽院で4年間学び、1989年にプロの歌手としてデビューしました。22歳のときです。

デビュー後しばらくは売れない時代が続きますが、キャリアのためには大手レコード会社からアルバムを出すことが必要と痛感し、1994年、アラブ語圏最大のレーベルである「ロターナ」と契約します。そこから出した最初のアルバム「Naghmat Hob(愛のリズム)」が大ヒット、その年の最優秀アーチスト賞を受賞し、以後、快進撃を続けて、活躍の幅を広げ続けているのは、前項で紹介した通り。

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(Photo cited from the official Facebook page of Najwa Karam)

―――ナジワさんは私とほぼ同世代ながら、ほとんど年齢を感じさせない美しさをキープしていらっしゃるのですが、若さや美しさを保つ秘訣は?

「あら、日本人は世界でいちばん若さを保つことが上手な国民でしょう?(笑) それはともかくとして、純粋なスピリットを保つことがもっとも大切。スピリットは天からのギフトで、歳をとらないの。スピリットを高めれば、それが肉体に影響を及ぼして、心のレベルに相ふさわしい肉体でいられます」

このようなスピリチュアルな考え方は、信仰というよりもむしろ「ウィズダム(智恵)」である、と隣に座る彼女の親友が解説してくれます。

―――デビューから30年近く、第一線で活躍し続けていらっしゃるというのは偉業だと思いますが、成功の秘訣は?

「モデスティ(謙虚であること)ね。私はゼロから出発したわ。自分で自分のことはよくわからないけど、他人が自分のことをどのように見るか、評価するかはとても重要視してきた。ファンや周囲の人の意見に対して謙虚であることは大切ね」

彼女の親友はここで「とうもろこし」の喩えも出してくれた。とうもろこしは実れば実るほど穂を垂れる、と。中身が充実している人ほど、謙虚なんだ、と伝えたいのですね。同じような喩えが、日本にもありました……。成功のためには「モデスティ」がなによりも大切、という考え方は、同じレバノン出身の成功者である彼女の親友と共通するもの。

―――ナジワさんはポップ・ミューシャンであるばかりでなく、ファッションアイコンでもありますね。ファッションの影響力をどのように考えていらっしゃいますか?

「世界から見るアラビア語圏のイメージには、きなくさいものも多いけれど、それだけじゃない。アラビアの文化には、美しいもの、夢や愛や幸福に満ちたものもたくさんあるのだということを、私自身の歌やファッションを通して世界に伝えることができれば、うれしいわ」。

ここで親友の解説が入る。「彼女は、アラビア語圏の女性のシンボルであり、アラビア女性のロールモデルになろうとしているんだ」。

―――アラビア語圏の女性のファションアイコン、ビューティーアイコンといえば、ほぼナジワさんが第一号と言ってもいいくらいなので、シンボルとなれば責任が重大ですね。

「私はとても保守的な家に育ったの。歌手になったのは22歳の時ですが、父は当初、猛反対しました。でも、私は父と約束をしたのです。レバノンや、ザハレや、ファミリーに、恥ずかしくないよう、誇りと思ってもらえるよう、良い女性でいつづけると。歌手というキャリアを築くこと、世界的に有名な歌手になることにおいて、中東では女性の前例がなく、私が第一号です。だからこそ、アラビア文化のよい象徴になれるよう、後進の女性たちのロールモデルになれるよう、努力しているわ。私は天から歌の才能を授かりました。それを使って、アラビア女性のイメージをより良いように変えたいのです」。

ナジワ・カラームはアラビア語圏の女性のファッションアイコンであるだけでなく、教育、キャリア、女性のあり方においてのリーダーであり、ロールモデルなのですね。それを自覚し、行動しているナジワの責任感、芯の強さ、謙虚さ、あたたかさ、純粋さに心を洗われる思いがしました。

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そしてインタビュー後半は、次項に続きます。

 

まったく思いもかけなかった幸運な出会いに恵まれるというのは、人生が与えてくれる最高の幸福の一つだと思いますが、私のささやかな生涯のなかでも最も運命的な、印象深い出会いになるだろうと思われるもののひとつが、この4月に訪れました。ナジワ・カラームとの出会いです。

2日の屋形船でご一緒したとき、「あなたを知っている。あなたに会ったことがある」と真顔で言ってくれ、私に好感をもってくれたナジワに、なんとアジア圏初の独占インタビューをするという機会に恵まれました。たっぷりと90分近く、ナジワに親しく話を伺いました。その余韻が、数日たった今もなお続いてます。

その詳細を書く前に、日本の読者の皆さんに対し、ナジワ・カラームとは何者かという話をしなくてはなりません。

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ナジワ・カラーム(Najwa Karam)は、1966年レバノンの地方都市ザハレ生まれの中東を代表するアーティストです。日本では言葉の壁が大きく、なかなか情報が入ってきませんが、中東、ヨーロッパ、北米、オセアニアではすでに60ミリオンのレコードを売り上げ、数え切れないほどの賞を受賞しています。18枚のスタジオアルバムのうち、大半がミリオンセラー。1999年、2000年、2001年、2003年、2008年には、中東でもっとも多く売れたアーティストとして記録されています。

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ポップミュージシャンとして成功するばかりでなく、テレビのスーパースターでもあります。「Arab’s Got Talent」という人気タレント発掘番組のメインジャッジを4年間つとめ、どこへいってもパパラッチに追いかけられているというセレブリティです。

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コマーシャルの世界においても、アラブ首長国連邦の不動産会社、Pearl Propertiesのブランドアイコンを務めたり、高級宝飾会社Mouawad Jewelryの時計ライン、La Griffeの「顔」として活躍、ブランドイメージのアイコンになっています。また、2012年は化粧品のロレアル・パリから初のアラブ系スポークスマンとして選ばれ、アラビック・ビューティーの代表的な存在になっています。

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ファッションアイコンとしても名高く、カンヌのレッドカーペットで着たZuhairのマーメードドレスをジェニファー・ロペスがその年のゴールデン・グローブで着用する(まねする)など、彼女が何を着るかは、ファンばかりではなく、他のスターたちからも注目されています。

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当然、ソーシャルメディアでの人気も高く、たとえば今年のニューイヤーコンサートで披露したこの姿には、スターのフェイスブック史上最高値である432,000のLikesがつきました(写真は、Likes 最高値のものではありませんが、そのドレスを着てのパフォーマンス風景)。ドレスは、Nicolas Jebranのもの。

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どのくらい人気のある大スターであるか、以上の情報でおわかりいただけましたでしょうか…。本欄では、ナジワの公式フェイスブックページから写真を引用させていただきましたが、Najwa Karamと検索していただければ、ほかにも多くの美しくゴージャスな写真や輝かしい情報が出てきます。

そのナジワに独占インタビューさせていただいた内容は、次の記事で。

レバノン出身のラスベガスの不動産王、フィリペ・ジアード氏のフォーブズジャパンによるインタビューに立ち会いました。4.6.1

フィリペが滞在するリッツカールトンのスイートにて。

不動産や投資に関するハードな話題は、門外漢の私には難しいところもありましたが、成功し続けるためのマインドセットに関しては、前回、うかがったとき以上に論理的にお話くださって、共感するところ大。

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仕事に対するフィリペの哲学に関しては、またあらためて別媒体で書きます。

それがいかに彼の人生とリンクしてくるのかに関しては、アジア圏初の(!)ナジワ・カラム独占インタビューで知ることになるのです……。これについては近日中に。

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記念写真です。左端が今回インタビューしてくださった、フォーブズジャパン副編集長の谷本友香さん。中央がフィリペ。その左が日経グローバルの代表、皆見友紀子さん。

 

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コニャックのLouis XIIIより、 100年後の2115年に公開予定の映画“100 YEARS: THE MOVIE YOU WILL NEVER SEE” のお披露目パーティーにお招きいただきました。アンダーズ東京にて。

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100年かけて作られるルイXIII。解説するのはルイXIIIのグローバル・エグゼクティブ・ディレクター、ルートヴィッヒ・デュ・プレシス氏。

100年前。第一次世界大戦の真っ最中でした。

100年経って、人はなにを学んだんだろうか。

100年後、地球はまだ人が住める環境を保っていられるんだろうか…。

「100年後に公開される映画の予告編」と「100年後に開栓されるルイ13世」を見ながら、過去・現在・未来を考える機会になりました。
会場は150名のゲストでたいへんな熱気。コラムニストの中村孝則さん、フォーブズジャパン副編集長の谷本有香さんと記念フォト。実は谷本さんとはこの日の日中にも仕事でお会いしました。一日に二度も偶然に会えるとは!。

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