ルブタンが日本のエイゾーコレクションを相手取って、商標権侵害の訴訟。レッドソールはありふれたものとして、損害賠償請求は却下されました。

 

ニュースはこちら

 

以下は、NewsPicksで書いたコメントです。

 

レッドソール裁判。10年前もルブタンはイヴ・サンローランとやりあいましたね。あのときはルブタンは一審で敗訴、二審では「靴底と上部の色にコントラストがある場合にのみ商標権が認められる」と認定されました。結果、イヴ・サンローランの「ぜんぶまるごと赤」のシューズは商標権の侵害に当たらないとされ、「引き分け」の形になりました。

あのときサンローランの弁護士が持ち出したのは、「ルイ14世も赤い靴底のヒールをはいているし、オズの魔法使いのドロシーの靴底も赤だった。赤い靴底に特異性はない」という理屈。今回の「日本には漆塗りの下駄の底に赤を配する伝統もあり…」という趣旨の弁護と重なりました。歴史をさかのぼれば必ずどこかに前例はあるわけで、どこを切り取って独創的なアイディア」と見るかは本当にデリケートな問題ですね。

法的にはたしかに「みんなの赤、これまでも使われてきた赤」でしょう、まあそれは正論ではありましょう。

ただ、現実的な感覚としては「ルブタン=靴底の赤」というブランドイメージがあまりにも強く輝かしく、申し訳ないのですがエイゾーさんの靴がコピー商品に見えてしまうという危険がどうしても生じます。それを履いている人まで、「コピー商品を身に着けて平気な人」のように安っぽく見えてしまうかもしれない。だから「ファッション常識」のある人は手を出さないでしょう。それがブランド力という「法の圏外」にある力。

1950年代にシャネルスーツのコピーが大量に出回った時、オリジナルを作ったココ・シャネルが「コピーが出回れば出回るほど私の価値は高まる」と言って、そのとおりになったという事実があります。このケースも(ルブタンは容認はしないかもしれませんが)、そうなる予感がします。

 

(Photo from Wikimedia Commons)

 

NewsPicksにも書いたことなのですが、こちらにも記しておきます。

ケリンググループがファー使用に関して傘下全体で毛皮不使用を宣言したニュースについての私の意見です。

(ケリングのファー・フリー宣言はこちらで全文が読めます。

とりわけZ世代の顧客に寄り添いたいというこうした流れがある一方、(人為的な無理をせずに使われる)毛皮はオーガニックな素材であり、孫の代まで受け継がれるうえ、最後は土に還るので環境にとっては優しい、という見方もあります。極寒地に行けば毛皮は必須です。いずれの考え方にも正当性があります。

やみくもに毛皮はNG、という一方向のみに走るのは歴史的に見ても地球全体を見ても視野狭窄という印象を免れません。人類が最初にまとった衣類が毛皮だとされています。人類の歴史とともに毛皮加工の技術も進化してきました。歴史のどこかの時点で、人間のエゴイスティックな虚飾のために生後間もないミンクやフォックスの毛が使われはじめてから、自然に対する敬意や節度がなくなり、おかしくなった。動物虐待と裏腹になった虚飾の権化のような毛皮はもうなくていいけれど、地球の自然なサイクルの中で使われるサステナブルな生活必需品としての毛皮は、存続していっていいと思う。

ケリングの代表、フランソワ=アンリ・ピノー氏は、環境問題、サステナビリティなどにおいてフランスのファッション業界をリードしたいという立場をとっています。そんな立場をより明確にするための宣言でもあったでしょう。

毛皮と人間の歴史に関しては以下の大著があります。

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〇震災から10年ですね。

あの日、ヘリに乗って津波を撮影した記者の思い。翌日、ヘリから助けを求める人々を見てしまった記者が背負う十字架。こちらの記事が胸に迫ります。昨日公開されたこのインタビューも。津波映像を撮影した記者はNHKをやめ、アートの世界にいることを知りました。

 

 

 

〇北日本新聞まんまる4月号発行です。

ファッション歳時記Vol. 115 「ジュエリーには、詩情を」。

 

富山発ジュエリーのご健闘をお祈り申し上げております。

 

 

 

〇しつこく英王室の話で恐縮です。女王のコメントの原文が確認できたので。

“The whole family is saddened to learn the full extent of how challenging the last few years have been for Harry and Meghan. The issues raised, particularly that of race, are concerning. While some recollections may vary, they are taken very seriously and will be addressed by the family privately. 

“Harry, Meghan and Archie will always be much-loved family members.” 

日本の新聞の英訳ではニュアンスが伝わってないところもありました…。

“While some recollections may vary, “ 「いくつか記憶が異なるところもあるが、」。この一言、この表現。効いています。

メーガン・マークルが「息子にプリンスの称号が与えられない」と不満をこぼしているのは、ひとえに無知からきているのです。

君塚先生もツイッターでご指摘くださっていますが、このサイトに次のように説明されています。

 

On 6 May 2019, Prince Harry, the Duke of Sussex, and Meghan, Duchess of Sussex, welcomed the birth of their first child, a boy named Archie. Archie has no title, he is not an HRH (His Royal Highness) or a prince. According to the current regulations of the House of Windsor, Archie, as the son of the second-ranked grandson of the sovereign of the United Kingdom (in terms of hierarchy), did not have the title HRH by right – though the Queen had the option of extending this courtesy as she did for the younger children of the Duke of Cambridge, Princess Charlotte and Prince Louis. But when the Queen dies and the next reign begins under Prince Charles, Prince Harry’s children will move up one rank, from great-grandchildren to grandchildren of a sovereign, and will thus be entitled to the ‘Royal Highness’ styling by right, according to the ‘house rules’ of the Windsor dynasty.

(アーチ―くんには称号もプリンスとしてのタイトルもないが、それは現在のウィンザー家のルールによるもの。女王がケンブリッジ公爵の子息にプリンセス・シャーロットとかプリンス・ルイなどとつけることができるオプションはあるものの、ヒエラルキー上、下位ランクであるハリーの子息であるアーチ―くんにはルール上、つかないことになっている。でも、チャールズ皇太子が次の国王となった場合には、ハリーの息子はランクアップし、「ロイヤルハイネス」の称号がつく権利を得られる)

 

 

レイシズムに敏感な時代だから、なんでもかんでも人種差別と紐づけたがる方がいらっしゃいますが、今回のことは、人種が違うから葛藤やトラブルが起きたというわけではなくて、嫁ぎ先の文化をまったく知ろうともせずに我を主張するばかりの野心家メーガン・マークルだから起きている問題、と見たほうがフェアだと思います。

メーガン&ハリーのテレビでの王室告発に対し、エリザベス女王が速やかにコメント

 

さすが貫禄のエリザベス女王、迅速で的確な対応だと思う。コメント内容もすばらしい。「一部異なるものがあるものの」という一言に痛烈な皮肉を読み取った人は少なくないでしょう。

かつてダイアナ妃が事故死したとき、王室を離れた人だからと沈黙を貫いたら王室と女王に対する反感が募り、その後にようやく対応したという経緯がある。あのときの苦い経験が今回生きているという印象です。

この「格が違う」と思わせるコメントによって、かえって王室の格が上がり、メーガン・マークルをいっそう卑しく矮小に見せる効果は絶大。

字面のまま受け取って被害者意識をふりかざすアメリカ人にはこのくらいのコメントがちょうどよいのでしょう。

「肌がどのくらいダークになるのか」って別に人種差別発言ではなく、単純にフラットに肌の色がどうなるのかと、と聞いただけだとなんで思えないのか。

 

メーガンとハリーは、いいかげんウォリスとエドワードの例に倣い、誰にも「傷つけられる」心配のない田舎で静かにお暮しになるのがよいと思われます。

 

(Photo from Wikimedia Commons)

こういう場面ではこのように対応する、というロイヤルスタイルのお手本を見せてくれる94歳の女王。最高です。

さて、この騒ぎでいっそう英王室への関心が盛り上がり、エリザベス女王の偉大さがさらに証明されたところで(笑)、ケンブリッジ公爵夫妻ご結婚10年となる4月に、楽しいロイヤルイベントを企画中ですよ。

 

 

 

 

ケンブリッジ公爵夫妻のロイヤルウェディングから10年。あっという間で、私にとっては全く何の変化もない平凡な10年でしたが、ご夫妻はその間に美しい2男1女を生み育て、ますます国民の信頼を受け、着々と「キング・ウィリアム時代」への駒を進めていらっしゃいますね。

というわけで、世紀のロイヤルウェディング10周年を記念する素敵なイベントが東京・青山で開催されます。
プレイハウス(ヴァルカナイズロンドン)のBENEにて、これを記念した、British Royal Breakfastが体験できます。
ロイヤルウェディング当日にバッキンガム宮殿にて振る舞われたロイヤルメニューはそのままに、BENEシェフ布施真さんとBLBG社長の田窪寿保さんが、プレイハウス流にアレンジした朝食です。

前菜はサーモン、ズワイガニ、手長エビ、ハーブと当時と同じ食材をより洗練されたプレゼンテーションで。メインは当時お二人がセレクトした仔羊をスパイシーに仕上げ、彩り鮮やかに。デザートは蜂蜜のアイスクリーム、トライフル、チョコレートパフェの3品。という朝からゴージャスなコースです。

イギリス通で食通の田窪さんは、プリンスホテル東京シティエリアのボンドブレックファストやボンドディナーでもすばらしいアレンジをご提案くださっています。今回もどんなアレンジになるのか、楽しみですね。

 

夜の社交が難しい時期ですが、休日のブランチタイムというのが素敵ですね。みなさま、ご結婚10周年のお祝いのどさくさにまぎれて(?)ぜひご一緒にロイヤルブレックファストを楽しみましょう。

【価格】

¥4,400(税込)¥6,050(税込)乾杯スパークリングワイン付

【開催日時】

2月28日(日)10:00~12:30 (9:45開場)

【場所】

BENE- @ THE PLAYHOUSE (3F)

詳細、ご予約はこちらから。

 

アメリカの新しい大統領が誕生しました。分断のない、風通しの良い社会になることを願ってやみません。

それにしても。就任式のニュースをアメリカと同時間で見ていたのですが、Qなんとかの陰謀論の方々は最後の最後まで大騒ぎして何かが起きると信じていたようです。まずは暴動もなく、つつがなく式典が終わったことに、ほっとします。

全世界が注目するこの瞬間は、新進デザイナーにとってのシンデレラ・モーメントでもあるわけですが。

ジル・バイデンはアレクサンドラ・オニールがデザイナーを務める「マルカリアン」。カマラ・ハリスはクリストファー・ジョン・ロジャース。

前夜のリンカン・メモリアルでのプレ就任式では、ハリスはカービー・ジャン=レイモンドがデザインした「パイアー・モス」のコートにオスカー・デ・ラ・レンタのドレス。バイデンはジョナサン・コーエンの紫のアンサンブルだったそうです。デ・ラ・レンタ以外は初めて名前を聞くデザイナーばかり。しばらくアメリカのファッション界に新しいスターが登場していませんでしたが、こうして名前がメディアに踊ることで、活躍のジャンプボードになるとよいですね。

紫は赤と青の融合で、あのミシェル・オバマも選挙戦を勝ち上がっていく途中でうまく使っていましたね。

 

レディ・ガガはスキャパレリの前衛的なドレスで国歌を熱唱。

若きアフリカン・アメリカンの詩人、アマンダ・ゴーマンは、「The Hill We Climb」を朗読(というか暗唱)。黄色いジャケットと赤のヘッドアクセサリーで強いインパクトを与えました。

 

伝統であれ新進であれ前衛であれハイブランドのフォーマルな装いで続々登場する政治家、著名人のなかにひときわ目立つ装いのお方が……と思ったらバーニー・サンダース! 若い世代に絶大な人気を誇る上院議員は、装いもSNSで大人気でした。

バートンのジャケット(いつもの)。ミトンのデザイナーはジェン・エリス……ってエセックスの教師だそうです。彼女からバーニーにプレゼントされたもの。「らしい」スタイルに笑顔にさせていただきました。就任式でもっとも印象に残ったのがバーニーでした。

1789年、ジョージ・ワシントンの大統領就任式。描かれたのは1903年。200年後の大統領は何を着ているでしょうか。

アメリカでは親トランプ派暴徒による連邦議会乱入(4人亡くなる)。アメリカのメディアの報道をずっと追っていましたが、バルカン半島かどこかの政治事情の不安定な国で起きているクーデターのようでした。現職大統領がデマを流して大衆を煽る。ツイッターとFBが暴力を扇動した大統領のアカウントを凍結する。警備がゆるゆるであっさり暴徒が侵入できる(むしろ警官が暴徒を招き入れていた動画まで流れてくる)。鎮圧された暴徒はなぜか手錠もかけられず、釈放される。世界に民主主義国家の大恥をさらしたあと、最終的にはトランプも政権移譲を認める。ドラマでもお目にかかれない議会炎上の光景。一方で陰謀論をいまだ根強く論理的に展開するインテリの方々。

夏のBlack Lives Matter との違いも浮き彫りになりました。あのデモははるかに平和的なものでしたが、武装警官はデモ隊に発砲したりひどい暴力をふるったり権力によって必要以上の弾圧をしようとしていました。今回の白人の暴徒に対するゆるゆるの甘さは何なのか? この差はいったいどこから来るのか。

(Capitol at Dusk. Photo by Martin Falbisoner. Wikimedia Commons)

 

*いくつか残る謎に関しては、こちらの記事が整理してくれています。

 

イギリスではEU離脱に全土ロックダウン。香港での言論弾圧。中国では当局を批判したジャック・マーが行方不明。

日本では緊急事態宣言。

個人的にも、それを受けて、1~2月のために計画を進めていたイベントがすべて4月以降に延期となりました。1月の講演やミーティングのキャンセルなどの影響も受けました。穏やかなスタートとはとても言い難い2021年の最初の一週間です。

感染症の脅威が広がっているときに右往左往しても何もならないので、月並みですが、騒音をシャットアウトして、冬眠のなかでできることに没頭するというのが最善の策。こんな時にも言葉を交わしてくれる人には、できるだけコロナコロナと言わないようにします。医療従事者の方々には本当に頭が下がります。

 

 

 

コロナで打撃を受けている業界のなかにはホテル業界もあります。ホテルだけでなく、ホテルに食材やお酒、リネンやアメニティ、家電などを納入している業者の方々も大変な状況にあります。

年末年始の需要を見込んで仕入れをしたのに、まさかの突然のGo To 停止でキャンセル続出。新鮮な高級食材の行き場がありません。業者は悲鳴を上げています。

この危機を救うべく、東京プリンスホテルで2日間マルシェが開催されます。KOTO MONO MARCHE 18日、19日です。ホテルに納入される高級食材が特別価格で販売されますよ。参加企業一覧↓

(プリンス会員様限定ですが、無料ですぐに会員になれます。)

みんな、クリスマス用品を買いに行って、このピンチを少しでも救おう?

企画したマーケター、あっぱれ。

高田賢三さんがCOVID-19 に感染し逝去されました。訃報は海外でも詳しく報道されています。

1970年代に、伝統的なパリモードの世界に鮮やかな色彩、大胆な花やジャングルのモチーフ、民族衣装から着想を得たデザインなどを持ち込んで衝撃を与えました。パリに大きなインパクトを与えた最初の日本人デザイナーです。

ミシェル・オバマが来日した時、黄色が鮮烈な印象を与えるケンゾーのドレスを着てタラップを降りました。ミシェルが日本に対するリスペクトを示すために選んだデザイナーが、高田賢三だったのです。

パリに住んでいらしたこともあって、パリ市長もすぐにツイートしています。「深い悲しみにつつまれている。パリは息子の一人を失った」。

寛斎さんに続いてまた一人、大きな功績を遺したデザイナーが旅立たれたことを悲しく受け止めています……。

ご冥福をお祈りいたします。

基礎化粧品会社イービーエムが展開する銀座のエグゼクティブメンテナンスサロン「ブルームオーラ・ザ ジャーニー」のことは、何度か本ブログでもご紹介しておりますね。

このたび、期間限定のトリートメントプランが提供されます。2020 年2月 16 日(水)~3 月 14日(土)まで、「売り切れ続出のガトーショコラ」KEN’S CAFE TOKYOとコラボレーションしたプラン。

(予約申込み期間:2020年2月 6 日(木)~2 月 29 日(土)、定員となり次第受付終了)

実は私も即、予約いたしました! ……のであと9名様、あるいはさらに激戦となっておりましょうか。

ブルームオーラ・ザ ジャーニーは、心と身体のバランスを整え、癒やしとエネルギーチャージを叶える、心身のメンテナンスサロンを謳っています。オールハンドによるトリートメントにより、心身の奥から解きほぐされるという印象です。テーマは「七感、輝く旅」。七感とは心がリラックスして自由な状態の時に、 直感や閃きが得られる感覚をさします。

ホワイトデー企画で、大切な方とご一緒に、あるいは大切な方へのプレゼント……と想定されておりますが、Self-Partneredであるワタクシは休みなく働いている(?)自分にプレゼント、というか、さらにたくさん仕事をするための必須のメンテナンスです。笑

 

 

 

☆KEN’S CAFE TOKYO コラボレーション☆ 限定トリートメント

『ブルームオーラ・ザ ジャーニー120 分エクスペリエンス』 通常価格 71,500 円⇒特別ご優待価格 22,000 円(税込)

<メニュー内容>ボディトリートメント 100 分+デトックス SPA20 分
EBMの「ローズガルヴァーニ」を使ったトリートメント。「ローズガルヴァーニ」 は、昨年 12 月、アジア優秀企業家連盟が主催する国際表彰『Asia Honesty Award 2019』にて「商品賞」も受賞しています。

全身の疲れやストレスが消えない、という男性にも 。

【ご予約】下記ご連絡先までメールまたはお電話で。 E-mail: info@journey-ginza.jp TEL: 0120-815-855 担当:元良さん 田中 さん

<店舗情報> ブルームオーラ・ザ ジャーニー

住所:東京都中央区銀座 3-4-1 大倉別館 4F 営業時間:11:00~21:00(最終受付 18:00) https://www.journey-ginza.jp/

*今回は、「売り切れ続出のガトーショコラ専門店」として人気の高い、氏家健治シェフが手がける 「KEN’S CAFE TOKYO」とのコラボレーション。限定プランを利用すると、「特撰ガトーショコラ」を 1 本プレゼントされるそうです。

 

 

 

 

?The Rise of Red Carpet Dandy.  レッドカーペットのファッション特集が女性のドレスだけだった時代は過去になった。ディナージャケット(タキシード)を捨て、思い思いにドレスアップするジェンダーフルイド、ジェンダークィア。もうジェンダー云々言う方が古いことになりつつあるのかもしれません。こちらでお写真をお楽しみください。

 

むしろ私はもうあれこれ悩まなくていいディナージャケットだけで通したいくらいだけどなあ……笑

 

 

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青山ブックセンターで先週の4位だそうです。多謝。

 

 

Have a nice week.

キリアンから4月5日に発売されるLove Don’t Be Shy Eau Fraîche を試香させていただきました。


グルマン系の真骨頂、食べてしまいたくなる恋の香り。白とゴールドの光のオーラはまさしく恋の高揚をイメージさせます。

黒バージョンのLove Don’t Be Shyは妖艶な夜闇に似合う。

これで何も起きなかったらまちがっているというレベルの誘惑力。中毒性があります。神話からインスパイアされたという柄の、鍵つきケースも魔力を感じさせます?

ヘビのケースはGood Girl Gone Bad のもので、クラッチにもなる。アダムとイヴの物語をイメージ。


香りだけでキリアンの耽美世界にずぶずぶ溺れそうなひとときでした?

キリアンは、アートとしてのパルファムを謳うブランドです。

プロデュースするキリアン・ヘネシー氏は、セクシーな超美男。コニャックで有名なヘネシー家に生まれています。幼少期はヘネシー家の城で過ごし、コニャックセラーに漂う芳醇な香りに包まれて育ったそうです。ソルボンヌ大学を卒業するときに執筆した論文は、「神や運命との共通言語としての香り」。創る香りの次元が違う。ファッションブランドの香水(ももちろん悪くはないのですが)と一緒に語ってはいけない別格感があります。

香水の奥深き威力を知りたい方、一度キリアンの世界を試してみてください。

ロンドンファッションウィークメンズ開催中。デイヴィッド・ベッカムが一部所有するケント&カーウェンは、戦前ドラマ「ピーキー・ブラインダーズ」とコラボしたコレクションを発表しました。詳細は「ガーディアン」のこちらをご参照ください。


Special Thanks to Photograph: Jamie Baker for the Guardian

極太ストライプの上着、固結び調のネックウエア、なかなかかわいい。

Peaky Blindersはいま話題にのぼることが多いBBCドラマです。1919年のバーミンガムに生息したギャングのストーリー。この時代のコスチュームって凝っていて、美しいんですよね。

BBCのHPより。Peaky Blinders

写真を見ているだけでテンションが上がります。多くのデザイナーがそう感じたようで、インスパイアされるブランドが多々。

マーガレット・ハウエル、ドルガバ、アレキサンダー・マックイーンなどがこの時代にインスパイアされたコレクションを発表しているという記事はこちらをどうぞ。

イギリスのコスチュームドラマは脚本も衣裳も俳優もセットもレベルが高くて、影響力が大きいですね。ダウントン・アビーの映画版ももうすぐ公開になるし、1920年代(前後)ブームは今年、しばらく続きそうですよ。

アメリカの議会における歴史的瞬間。初のムスリムの女性、初のネイティブアメリカンの女性、最年少の女性……。晴れやかでファッショナブルな多様性は未来の希望を感じさせる。「男性のスーツに準じる」服を無理に着る必要なんてまったくないのだ(そういう服を着て安心するならもちろん着ればよいのですが)。NY magazine CUTに紹介されるこちらをご覧になってみてください。

それぞれのアイデンティティに根付いた装いと、人柄を伝える心からの笑顔、過不足のない優しい自信に満ちた振る舞い。「着るものがない」とお悩みの女性エグゼクティブのみなさん。ここに何らかのヒントがありませんか。


Congresswoman Rashida Tlaibのインスタグラムより。彼女は 下院議員になった初のPalestinian-American woman。

上のドレスはアメリカの政治史に残る服になるだろう。感慨深い。

ケンブリッジ・アナリティカ問題をご記憶でしょうか。2016年のアメリカ大統領選挙において、トランプ陣営がデータ解析企業ケンブリッジ・アナリティカの協力を得て、Facebookのユーザー5000万人分の情報を不正利用していた問題。ユーザーのデータに基づいて、その人の投票行動に影響を与えるような個別の政治広告を配信していたとされます。

その告発を内部から行ったのが、クリストファー・ワイリー(当時28)でした。髪をカラフルに染めている、ゲイのカナダ人で、データオタク。ゲイは流行や時代の流れを敏感に読んで取り入れるアーリー・アダプター(新しもの好き)であることが多く、ワイリーもその点でケンブリッジ・アナリティカ創業者たちに好かれて仲間入りしたようです。

 

そのワイリーが、Business of Fashion のVoicesで、ケンブリッジ・アナリティカがユーザーのファッションブランドの好みをどのように彼らの投票行動に利用したかというおそろしい話を語っております。こちら。

ナイキ、アルマーニ、ルイ・ヴィトンを好む人は、開放的、良心的、外交的、愛想がよく神経症的で、そういう性質を利用し、ケンブリッジ・アナリティカは政治的メッセージを送っていた。

一方、アメリカのヘリテージブランド、たとえばラングラー、LLビーンなどを好む人は、開放度が少なくて保守的で、トランプを支持しようというメッセージにより反応(賛同)する傾向があったという。

醜悪なものであっても、データに基づくインターネット上の心理操作によって、それを好もしいと思えるように導くことは、可能なのですね。たとえばクロックス。あのビニールのサンダルです。どう見ても美しくはないものですが、サイオプス、すなわちサイコロジカル・オペレーション(心理操作)によっていくらでも好もしいものに変えることができるのだ、と。(実際、そうなりました)

大衆に、トランプ大統領やブレグジットを選ばせたものが、まさにこの類の操作だったと彼は告発するのです。醜悪なものがどんどんトレンドになる仕組みと、醜悪な政治リーダーが選ばれる仕組みの背後には、このような背後の力による心理操作があったとは……。

ミウッチャ・プラダは「醜さを掘り下げることは、ブルジョア的な美より興味深い」と語っています( T magazine)。醜悪さってたしかに新鮮でもあるんですよね。醜悪なファッションを時折楽しむ分にはいいですが、醜悪な政治を選んでしまうと、取り返しのつかないことになる。情報操作は、まさに大量破壊兵器になるんですね。

ワイリーに戻ります。

ファッションブランドの好みというユーザーのデータが、ブランドも知らないうちにこのような情報操作&行動を促すことに利用されていたことが分かった今、逆に、ファッションブランド自身が方向転換することによって、人々の行動をよいように導き、文化を守ることもできる、と彼は示唆します。

 

いやしかし、そうなればなったで、さらなる新しい情報戦争が仕掛けられるのだろうな。好きなものを自発的に選んでいるつもりが、実は背後の大きな力によって選ばされている、そんな時代に生きる空恐ろしさを感じます。

「ファッションは服を売るビジネスではない。ファッションはアイデンティティを売るビジネスである。人間の根源的な問題<私は誰なのか? 社会のどこに所属したらいいのか?>に答えるツールを提供するビジネスである」。

だからファッションの問題はおろそかにするわけにもいかないのです。

 

 

 

 

(ここでニュースが入ります)

V&Aが来年4月からマリー・クワント大回顧展をおこなう、というニュースです。ガーディアンの記事、こちら

 

これはもう、呼ばれている気しかしない。

 

喜んで取材しますので掲載メディア大募集ですよ(笑)。東大の卒論でマリー・クワントについて書き、教授陣から大バッシングを受け、しかし資料をマリー本人から直々に送ってもらったという手柄で周囲をけむに巻いてどさくさのうちに認めさせたという私がたぶん最強の書き手だと思うぞ。

ラグジュアリーファッションとサステナビリティについて学びたい方へ。

ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション×ケリングが提供しているオンラインコースというのがあります。こちら

もちろん全部英語、イギリス英語ですが、無料コースでトライしてみて、さらに学びたくなったらアップグレードという手もありますね。アップグレードしても$59なので、勉強のための投資としては安いくらいでは。

ファッションとサステナビリティという話題について議論するときに、少なくともどういう観点から議論がおこなわれているのかを知っておくのは、基本でしょう。

無料コースでは以下のトピックがあります。

  • Week 1 – Why Sustainability in Fashion?
  • Week 2 – Contextualising Sustainability for a Changing World
  • Week 3 – Material Dimensions: Sourcing for luxury fashion
  • Week 4 – Informed Decision Making: Tools and methods
  • Week 5 – Creative Possibilities
  • Week 6 – Creative Realisation

かくいう私もアウトプットの仕事ばかりでなかなかまとまった時間をとって新しいことを学べないので、移動など細切れの時間をどうやって使うかが試されるところです。

 


(17世紀の病院をリノベーションした、ケリング本社)

行きたい展覧会シリーズ。11月10日から、Downton Abbey: The Exhibition がパームビーチで開催されます。詳細こちら

ニューヨークでの好評開催を終えて、今度はフロリダへ。

この展覧会、日本にも来ないかな~。誰か招致してくれないかな。ZOZOの前澤社長とか。

 

ダウントン映画版の製作も進行中とのことで、今から公開が楽しみですね。New York Times の記事はこちら。写真では、現代の服を着たキャストが勢ぞろい。コスチュームプレイのキャストを見慣れていると、不思議な感じがしますね。

 

 

ニューヨークのFITのミュージアムではヴァレリー・スティールがディレクションするPink: The History of Punk, Pretty, Powewrful Color 展が行われています。

ピンクという色をめぐる歴史に焦点を当てたファッション展。これもぜひ見たい展示。

podcastではヴァレリー・スティールの話も聞けます。英語で、30分くらいですが、こちらです

ヴァレリー・スティールは、私が大学院生だったころからファッション文化に関する刺激的な本をたくさん書いていた方で、追っかけておりました。今なおFITの名物教授として、ファッションに対してアカデミックに向き合っていらっしゃる方です。この人がいなかったらファッションで論文を書こうとは思いもしなかった。最近のインタビュー、紹介記事はこちら

ファッション・ジャーナリズムではアメリカのワシントンポストのロビン・ギヴァン。ピュリッツアー賞受賞者です。

こういう仕事をきちんとリスペクトして、社会的な貢献の場を与える土壌がアメリカやヨーロッパにはありますね。日本にはない……と嘆く前に努力が圧倒的に足りないのだろうけれど。

 

 

昨日のCampというトレンドとも関わってくるのですが、グッチはここまでキャンプになっているという話。

グッチのテイラリングキャンペーンの動画が発表されましたが、舞台になるのはイギリス北部のThe Campというフィッシュ&チップスの店。

(Gucciの新作を着てチップスを食べるハリー・スタイルズ)

生きた鶏を抱えたハリー・スタイルズがお店にブラっと立ち寄り、フィッシュ&チップスを注文して地元の子?と並んで立ち食いしてます。

BGMはビートルズの「ミシェル」。

ハリー・スタイルズがイギリス人なのでイギリス的な状況で撮りたかったらしいのですが。

最後にGUCCIのクレジットが出てきて、その絶妙な違和感にやられます。

顧客の先入観やイメージを脱力的に裏切り続けていくアレッサンドロ・ミケーレ。やはりアーティストですね。

プロモーションフィルムは、グッチHP、スーツコレクションのこちらからご覧ください。

こんなの見てしまうと、「スマートな、できる男」や「洗練された、ダンディぶり」なんかを強調したスーツのPRが、もはや響かなくなりますね(いやスーツの種類が違うし着る層も違うという異論があることは了解)。グッチ&チップスの破壊力、どこまでいくのか。

 

来年のMET Costume Institute 展示テーマが発表されました。Camp です!

わくわくしてきた。キャンプというのは、芝居がかかっていたり、皮肉が入っていたり、誇張があったり、悪趣味だったり、でもそこが素敵!というファッション感覚。20世紀には、ゲイ好みの感覚と言われてましたが、今はみんな好きね。

キャンプな人を挙げてみます。エルトン・ジョン、グッチのデザイナーであるアレッサンドロ・ミケーレ(そして彼のグッチの作品すべて)、レディ・ガガ、セリーナ・ウィリアムズ(あのチュチュのテニスウエア!)、そして多分アナ・ウィンターも。古くはオスカー・ワイルドとかルイ14世もそうであったかも。私がファッション史講座でキャンプを解説する時には、必ず「プリシラ クリーン・オブ・ザ・デザート」の写真や映像を使います。


思えばたしかに今、キャンプの時代なんですね。グッチがあんなにヒットするのだから。無難でキレイなものは飽き飽き、キャンプな感覚がぐっとくる、というところが確かにあるんです。

来年のメットガラは5月6日。キャンプファッションが勢ぞろいする光景はどんなでしょ。出席してみたい。笑

それにしても仕掛け人アンドリュー・ボルトンの毎年のテーマ設定がうまい。ニクイ。すばらしい仕事ぶりですね。リスペクト。

Gucci 2019 SS.

よい気分で朝起きたらあらゆるロイヤルウェディング情報が出そろってました。こちらから情報をとりにいかなくても勝手にどんどん流れてくる。便利な時代になりましたね。もうロイヤルウェディングはお腹いっぱいというほど。

いくつかのニュースメディアからピックアップした情報を、(ほとんど自分のためですが)ランダムにメモしておきます。裏をとるべきものも混じっています。きちんとした考察は25ans で話す予定なので、しばしお待ちくださいね。

こういう情報洪水の時代には、「専門家」と呼ばれる人には、その情報をどのように見るのか?という視点と表現力が問われることになりますね。しかも誰もが「評論家」になれる時代なので、無難な(客観的な)ことを言っても誰も耳を貸さない。独自の芯が通っていないと存在価値もなくなる。特異な方向にエッジをとがらせ続けないと生き残れないので、「好き」でやってる人しか残らない。だから「変人」にはいい時代だ、きっと。

 

・通常、ロイヤルウェディングでは花嫁は馬車の右に乗るのに、メーガンは左側に乗っていた

・ヘンリー王子は 花嫁のベールを上げるのを10分忘れていた

・メーガンのネイルはEssie のBallet Slippers という色だった。8ドル

・ゲストのスーツ姿でひときわ際立っていたのはデビッド・ベッカム。ブランドはディオール・オムだった

・ヘンリー王子が着用したのは、イギリスの近衛騎兵連隊ブルーズ・アンド・ロイヤルズの制服。髭をそってなかったのはいつものヘンリーらしいと逆に好評。ページボーイたちが着用していたのも、ブルーズ・アンド・ロイヤルズのミニチュア版だった

・祭壇までメーガンをエスコートしたチャールズ皇太子。実はメーガンが皇太子に一緒に歩いてくれるよう依頼していた

・メーガンのウェディングドレスはジバンシイのクレア・ワイト・ケラー。ケラーはイギリス出身。デザイナーはイギリス出身者、しかしブランドに関してはアメリカでもなくイギリスでもない、フランス。このようなブランドを選んだのは彼女なりの配慮??

・ヴェールのデザインもクレア・ワイト・ケラー。長さ5mだった。ドレス本体はシンプルだったが、ヴェールにはお約束のイギリス連邦53国、それぞれの国の花が刺繍されていた

・メーガンのティアラは、メアリー王太后(エリザベス女王の祖母にあたる)のダイアモンドバンドティアラで1932年に作られたもの。ブレスレットとイヤリングはカルティエ

・ブーケ製作はフィリッパ・クラドック。使用した花の一部をケンジントン宮殿の庭園でつんだのはヘンリー王子。ダイアナ妃が好きだった「フォーゲットミー・ノット」のほか、スイートピーやスズランがアレンジされていた

・シャーロット王女のドレスもジバンシイのクレア・ワイト・ケラー。靴は「アクアズーラ」

・誓いの言葉からは「obey」がカットされていた(ダイアナ妃もキャサリン妃もカット)。誓いの言葉を言う時、2人が手をがっちりとつないでいたのはロイヤル婚では前例なし。(ウィリアム王子は上品にキャサリンの手をとっていたが、ここまでがっちりとつながなかった)

・美男のチェロ奏者はなんと19歳のシェク・カネー=メイソン。2016年にBBCヤングミュージシャンのコンクールで優勝した新人。メーガン自ら電話で演奏を依頼していた

・二人の結婚指輪を制作したのは、クリーブ・アンド・カンパニー。メーガンの結婚指輪に使われているのはウェールズ地方だけでとれる貴重なウェルシュゴールド。王室では、このゴールド100%の結婚指輪をおくるのが伝統。ヘンリー王子のそれはプラチナである

・レセプションのケーキも前例やぶり。「ヴァイオレット」のシェフ、クレア・タックがデザイン。シチリア産のレモンやオーガニックの卵を使ったフレッシュなケーキ。これまではドライフルーツや洋酒を使った長期保存できるものだった(それを一周年に食べる)

・セレモニーの間、ウィリアム王子のとなりが空席として開けられていたが、それはダイアナ妃のための席だった?

・レセプションのために着替えたドレスはステラ・マッカートニー。指にはダイアナ妃がつけていたアクアマリンの指輪

・メーガンのまとめ髪はいつもどこかほつれているのだが、今回もほつれていた(見直してみて発見)。イギリスのタブロイドを見ると、”Fashionably messy updo”  あるいは”Messy bun” なんていう表現がされていた。なるほど。そばかすを隠さないナチュラルなメイクも、肩の力が抜けていて斬新

・レースもパールもフリルもついてない、素材のよさと構築性だけで見せるドレスは、自信にあふれた抑制と呼びたくなるもの。ワシントンポストのロビン・ギヴァンはこれを”Confident Restraint”と表現。さすがうまいな

 

・ダイアナ妃が残した言葉 ”If you find someone you love in life, you must hang on to it and look after it, and if you were lucky enough to find someone who loved you then one must protect it.”  こういう母の教えをハリーは守ったのね。

・批判をごちゃごちゃ書いてる人もいたけど(こういう人はいつでもいる)、いや、この時代に必要な「多様性の統合」のこの上ない象徴として最高だったと思う。英王室はいつだって「統合の象徴」なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハリー王子とメーガンの結婚式。完璧な晴天のウィンザーにて。Royal Family が最初から最後までSNSで動画を配信してくれたおかげで、細部までしっかり全部見ることができた。ありがたい。

なんかもう、何もかも美しすぎて目が腫れるほど泣きっぱなしだった……。笑 サセックス公爵夫妻となったおふたり、ほんとうにおめでとうございます。

このロイヤルウェディングについて25ans でコメントする仕事が控えているため、明日以降、もう少し冷静になっていろいろ考えると思うが、とりあえず動画をオンタイムで見ながら直感で感じたことだけメモとして列挙しておきます。明日になって読めば「なんだこれ?」と思うようなメモもあるような気がする。

 

・”I do” じゃなくて ”I will”なんだ!

・メーガンのお母様、メーガンそっくり

・スキャンダルやら病気やらいろいろあって結婚式を欠席することになったメーガン父に代わり、一緒にバージンロードを歩くチャールズ皇太子! ファミリーみんなであたたかくハリー王子とメーガンを守ろうとする感じが伝わってきて泣けた

・のどかなウィンザーでおこなわれた結婚式は、ロンドンの聖ポール寺院でのロイヤルウェディングほどの威厳や格式はないけれど、あたたかでくつろいだ空気があって、肩の力が抜けて風通しよく、何よりもこの二人にふさわしく、愛に満ちていた

・イギリス文化とアメリカ文化の融合

・黒人のプリ―チャーがアツくLove Love LoveとLoveの尊さを説く。最初は感動したがやや長すぎて少し飽きた

・黒人ばかりのコーラスがStand By Meを歌う。ゴスペルが流れている。メーガンへの心遣いか、感無量

・黒人の弦楽器の演奏家によるアヴェ・マリア。美しい。

・シャーロット王女がもうあんなに大きくなって立派に務めを果たしてるんだ。ジョージ王子もかわいすぎる

・ブーケが意外と小さい

・「Suits」の共演者たちもいて、ドラマの続きみたい

・ジョージ&アマル・クルーニー夫妻、デヴィッド&ヴィクトリア・ベッカム夫妻、エルトン・ジョンなども列席していて、王室の格式よりもむしろセレブリティの華やかさが目立つ

・人種の分け隔てをしなかったダイアナ妃のスピリットがハリー王子のなかに生きている

・女王は「God Save The Queen」を歌わないんだ

・メーガンのドレス。本体にレースが使われていないデザインで(ヴェールのレースがいい感じでドレスにかかっている)、鎖骨がきれいに見える。彼女に似合っている

・教会内でハリー王子がずっとメーガンの手をにぎったりさすったりしている。本当に愛し合っているんだなということがわかって、微笑ましい

・沿道にI Want to Marry Harry と描かれたTシャツを着た美女軍団がいて、ハリーに手を振っている。笑

・アメリカではまたしても高校で銃乱射事件が起きていたり、中東では戦争していたり、イギリスではスコットランドが離脱しそうだったり、日本では政治が完全に崩壊していることに国民がマヒしていたり、なんだか世界が変な方向へ行きそうな暗雲がたちこめていたところに、今回のロイヤルウェディングがおこなわれた意味はとても大きい。人種や国や階級の違いによるバッシングや家族の不和によるスキャンダルなどあらゆる障壁を乗り越えて愛によって結婚した二人がなんだか人間社会の救世主に見えて、ほっと穏やかで幸せな気持ちに包まれた。いろいろあって不幸も困難も乗り越えてきたエリザベス女王率いるロイヤルファミリーは、愛を貫くカップルを守ろうとしており、それをあたたかい目で見守り祝福する国民も優しい。やはりイギリス王室は最高。God Save the Queen!

 

 

 

 

 

朝日新聞1月17日(火)、オピニオン欄「若手政策の乱」。
koizumi

小泉進次郎氏はやはり人の心に届くことばの使い手だとわかる。Men’s Exの先月号でも、シャツの着こなしのお手本として小泉氏を挙げた時、一部、業界関係者からは不服の声もあったようなのですが、スタイルアイコンはやはりルックス(着こなし)だけではなく、語ることばと行動とともに総合的に見るべきという考え方は変わりません。

「僕は政治を職業だと思っていない。生き方だと思っています。自分の意志でこの道を選んで本当によかった。もし親から跡を継げと言われて政治の世界に入っていたら、おそらく途中で心が折れていたんじゃないかな」

「いまも苦しいとき、自分の能力の限界を感じることもありますよ。でも最後は自分がこの道を選んだという事実が力として返ってくる」

「将来を考えたら、どんどん課題は大きくなる。経験知を積んでおかないと、次の高さは跳べません」

確かな口調と目力で語られるこんなことばの力があり、行動が伴い、信頼感が生まれる。そうすると見る人の目には、「美しく」見えてくる。

かっこよさだとか美しさは、単独で、鏡の中に存在するものではなく、あくまで、周囲の、その人を見る心の中に生まれる。心が幻滅すれば、どんなイケメンやダンディだって、よく見えるはずはない。

 

La La Landが7部門を受賞したゴールデン・グローブ賞。ライフタイム・アチーブメント賞を受賞したメリル・ストリープのスピーチに、引き込まれる。こちら、ワシントンポストのサイトでも聴くことができます。

トランプの名前は一度も具体的に出さなかったけれど、明確なトランプ批判。

 

“Disrespect invites disrespect, violence incites violence. When the powerful use their position to bully others, we all lose.”

(「軽蔑は軽蔑を招き、暴力は暴力を招きます。権力者が地位を利用して他人を迫害すれば、私たちはみんな負けに追いやられる」)

“As my friend, the dear departed Princess Leia said to me once: ‘Take your broken heart and make it into art.

(「私の友人、故レイア姫がかつて私にこう言いました。『こわれた心を拾い集めて、そこから芸術を作るのよ』」)

 

これに対して、ドナルド・トランプ氏がムキになってメリル攻撃のツイートを。

“Meryl Streep, one of the most overrated actresses in Hollywood, doesn’t know me but attacked last night at the Golden Globes.

“She is a Hillary flunky who lost big

(「メリルはハリウッドでもっとも過大評価されている女優のひとりだ。オレのことわかってないくせに、昨夜ゴールデングローブでオレの批判をした」「そういえばメリルは大負けしたヒラリーにへつらっていたな」)

次期大統領、小さいしセコいし。どうしようもなく品がなさすぎる……。こういう動物的な行動に出る人の気持ちはわからないでもないが、最高権力者になる人、大人のふるまいの見本になるべきなのに。へんに深読みされて、ロシアとの関係から国民の目をそらす戦略的ツイートだと評価されたりするのは、幸いなのかな。笑

(ロシアとの関係の報道も……黒いものから「金色」のものまで出てくる出てくる)

メリル・ストリープのスピーチに戻ると、コメンテーターのメーガン・マケイン(父は共和党のマケイン上院議員)が、こんなツイート。

“This Meryl Streep speech is why Trump won. And if people in Hollywood don’t start recognizing why and how – you will help him get re-elected”

(「このメリルのスピーチこそトランプを勝たせた要因よ。ハリウッドのセレブがいったいなぜトランプが勝ったのかをわかろうとしなければ、彼の再選を許す」)

 

「恵まれている」ハリウッドのセレブリティが、「正しく」トランプ批判をすればするほど、皮肉にもトランプ人気が高まるという構造ですね。まさしく昨日書いた、Post Truth。

ハリウッドで起きていることは日本でニュースになりやすいのでアメリカの大部分のように聞こえたりすることもあるけれど、実はそれはごくごく一部の、特殊な、特権的な人々の世界、ということが、続くツイートをチェックしてみるとありありとわかってくる。

それでもやはり。メリル・ストリープは良識、ヒューマニティに訴える、勇気ある行動をしたと讃えたい。言葉が美しいし、スピーチはお手本にしたい。

 

 

 

またしても日本ではまったく報道されていないので、いちおう概要だけでも知っておきたいファッション事件として、ごくごく簡単にご紹介しておきます。

9月中旬におこなわれたNYコレクションで、もっとも物議をかもしたのが、マーク・ジェイコブズでした。

白人モデルが黒人文化の象徴であるドレッドヘアを、カラフルなかつらとして「盗用」したことで、Twitter上で大々的なバッシングが起きました。

VogueやDazed & Confusedなどのモード系の雑誌は、そんな「言いがかり」などスルーしてジェイコブズ賛。他文化からの「盗用」など気にし出したらファッション史など成立しないので、この態度は正しいと私は思っています。

Timeなど一般紙は「編み込みヘアの議論などどうでもいいじゃないか。アフリカン・アメリカンが置かれているシビアな現実をもっと直視せよ」と。(この態度は、圧倒的に正しい。)

その後、ワシントンポスト紙で、ピュリッツアー賞受賞のファッションライター、ロビン・ギヴァンが、マーク・ジェイコブズを擁護する記事を書きました。すると今度はギヴァンまでがバッシングの対象になりました。

植民地支配を受けたことがなく、文化に「上」も「下」もつけず、よい「舶来」のものはどしどし取り入れて自国の文化にしてきた日本人には「はあ?」という問題なのでしょう。ほとんど日本で報じられていませんが、昨年の「ボストン美術館キモノウェンズデー事件」で引き起こされた「文化の盗用」問題は依然、くすぶりつづけているようです。

昨年のボストン美術館キモノウェンズデー事件に関しては、こちらに寄稿しております。

無理解と不寛容は日本ばかりでなく、もっとも愛と寛容の世界であるはずのファッション界にも広がっているというのがなんとも悲しい。

どんどん最新ニュースが更新されていますが、今の段階までのおおよその流れは、こちらをご覧ください。

marc-jacobs

 

Japan In-depthに掲載された記事のバックアップです。

投稿日:2015/11/29

[中野香織]【ファッションにおける「盗用」「誤用」の効用】~ボストン美術館「キモノ・ウェンズデー中止事件」~

 

今年の夏から秋にかけて、海外のファッションニュースに頻出したキーワードの一つが、「文化の盗用(cultural appropriation)」でした。発端は、7月のニューヨークで起きたボストン美術館の「キモノ・ウェンズデー中止事件」です。ボストン美術館は、「東方を見る:西洋のアーチストと日本の魅力」展をおこない、キモノ・ウェンズデーというイベントを企画していました。

1876年にクロード・モネが描いた「ラ・ジャポネーズ」という名画がありますね。モネが自分の妻に赤い打掛を着せて見返り美人のポーズをとらせている有名な絵です。来場者は、モネの絵に描かれたような豪華な打掛を着て、絵の前で写真を撮ることができることになっていました。NHKも打掛を用意するという形で協力していました。

SNS時代らしい「着て、撮って、アップ」したくなるイベントです。ところが予期せぬ出来事が起きたのです。アジア系アメリカ人の若い抗議団体がプラカードをもってキモノ・ウェンズデーにやってきました。「アジア人を侮辱する、文化の盗用」などと書かれていました。同時に、抗議団体はソーシャルメディアを駆使して、美術館に対する激しい批判を続けました。要は、「白人至上主義的な上からの目線で、アジアの文化を表層だけ都合よく盗用するな」という抗議でした。

7月7日、美術館はキモノ・ウェンズデーのイベントを中止しました。BBCとニューヨーク・タイムズがこの経過を報じると、こんどはイベント中止に反対する抗議が起きました。

カウンター・プロテスター(抗議団体に反対する人)たちの議論は、わかりやすく言えば、次のようなものです。抗議団体のなかに日本人はいない。抗議者たちは、アメリカにおけるアジア人のアイデンティティを主張したいがために、このイベントに便乗して乗り込んだだけだ。キモノ・ウェンズデーは、日本とアメリカが協働しておこなった文化交流のイベントであり、それに対して「白人至上主義目線から見たアジア人蔑視」という議論をふりかざすのは、筋違いである、と。

あおりを食ったのは、日本のキモノ関連産業です。社会問題に意識の高い、善良なアメリカ人のなかには、キモノに魅力を感じても、着ればひょっとしたら「文化の盗用」としてバッシングを受けることになるのではないかとおびえ、着ることを控える人が出てきました。ユニクロが世界的にカジュアルキモノや浴衣を展開しているタイミングで、です。

ハロウィーン前にはさらに議論が過熱しました。「ゲイシャ」の仮装をすることが「文化の盗用」になるのかどうかと心配するアメリカ人の声が高まり、私にまで問い合わせがくる始末。もちろん「どんどん着てください」と答えましたが。

百歩譲って、キモノをその本来の着方を無視して都合のよいように着ることが「文化の盗用」にあたるのだとしたら、19世紀にヨーロッパへ渡った武家の小袖こそ、いいように「盗用」された顕著な例といえるでしょう。なんといっても、小袖がヨーロッパでは部屋着として着られたのですから。当時のヨーロッパの女性服は、コルセット着用を前提としたもので、小袖は、コルセットをはずした私室でリラックスウエアとして着られていました。今でも英語の辞書でkimonoをひくとroomwear (室内着)とかdresssing gown(化粧用ガウン)なんていう意味が出てきます。まったく誤用されていたわけですね。

ところが、ほかならぬそのキモノにヒントを得て、20世紀初頭のデザイナー、ポール・ポワレが、コルセット不要のドレスを創ります。それ以降、西洋では数百年間続いたコルセットの慣習は廃れ、西洋モードが花開いていきます。

文化がその本来の文脈から切り離されて「盗用」され、時には誤解されながら、予想外の新しい創造が生まれ、その成果がまた元の文化に還ってくる。そうしたダイナミックなやりとりのなかでファッション文化は発展してきました。

とはいえ、それは様々な文化を「上」「下」の意識なく、鷹揚に受け入れてきた日本人の「正論」なのかもしれません。差別や迫害を受けてきたという負の記憶が消えない人たちにとっては、「優位」に立つ側が、「下位」にある文化の表層のいいとこどりをするのは、「盗用」に相当する。私たちにはピンと来なくても、そのような感覚がいまだに世界には根強くはびこるのだという現実も、頭の片隅に留めておいたほうがよいのかもしれません。

殺伐としたニュースが続く闇の中、かすかな一筋の希望の光のように見えているのが、イスラム圏におけるムスリマ・ロリータのひそかな流行です。イスラム教徒の女性たちによる、日本のロリータファッションの「盗用」です。パステルカラー、フリルを多用したヒジャブ姿の女性たちのなんと「カワイイ」ことか。

私の眼には、日本のロリータファッションに対する彼女たちからのラブコールにしか見えません。「上」「下」の意識なく、過去への禍根なく、素敵と感じたものを軽やかに「盗用」しあう感性が、なんとか世界を平和に変えていけないものかと、祈るように、思います。

海外ではノックオフ(模造品)の裁判を頻繁にやっているけれど、日本はノックオフ天国、だれも裁判をおこさないことをいいことに、やりたい放題がまかり通っていた。

そこに歯止めをかけたマッシュ社長、近藤広幸さん。快挙。というか「これと同じものを作ってくれ」と工場にもちこみ、廉価でECサイトで販売して、何年もの間、年間70億円も儲けていたというGio が悪質すぎる。記事は、WWD 7月13日号、Vol.1870.img137しかもGio側は開き直り、Viviなどのメジャーなファッション誌で、親和性の高いタレントを使って広告まで出していたという。テレビCMまで始めていたとなれば、消費者だってパクリかどうかなんて疑わないだろう。

その背後には、ファッション業界全体にはびこるいいかげんな慣習があった。デザインをぱくってもおとがめなし、消費者も同じであれば安いほうを買う、と意識が低すぎた(というか、そもそも消費者はそこまで深く考えて買うわけではない)。雑誌編集側も、思慮がなさすぎた。広告費さえ入ればなんでもいいのか。

img138

商品形態模倣という不正競争防止法違反で刑事告訴が受理され、逮捕されるのは、日本初のことだそうです。近藤社長の冷静で粘り強い証拠集めにも頭が下がるし、警察もよい仕事をしてくださったと思います。デザインの模倣は犯罪となる。こういう意識が、商品を提供する側、消費する側、メディア、社会全体に広まることを期待したい。

それにしても日本のデパートの売り場にも赤いソウルの靴が増えてきましたが。側面と底面がコントラストをなす場合に限り、赤い靴底はクリスチャン・ルブタンの商標ですよ? 大丈夫なんでしょうか。2012年にルブタンがサンローランとやりあった裁判でそのような認知が徹底されたと思うのですが。国境を越えたら模倣もおとがめなし?

ルブタン裁判の詳細な経緯に関しては、こちらをお読みください。

 

2015ミス・ユニバース・ジャパン富山大会は、昨日お知らせした講演会の11日後、12月3日に行われます。

ミスコンにはいろいろ批判もありますが、ミスユニバースには、アスリートの競技会のような感動を覚えます。持って生まれた資質を最大限に生かすべく、ウォーキング、ファッションセンス、スピーチ、コミュニケーション、あらゆる自己表現を磨きぬいた女性たちが舞台の上でその人ならではのパフォーマンスを発揮する。スピーチのレベルの高さにも感動します。フェミニスト(が今ミスコンに対してどのようなスタンスなのかは知りませんが)が何と言おうと、今年も私は審査員として、ストイックに鍛え続けてきた女性たちの努力を、讃えたいと思います。

以下チケット情報です。

☆☆☆

 前売チケット
【開催日時】2014年12月3日(水)
      開場18:00 / 開演19:00 / 21:00~アフターパーティー
【開催会場】オークスカナルパークホテル富山(富山県富山市牛島町11-1)
【チケット種類】
・選考会のみ 前売 5,000円(当日 6,000円)
・選考会+アフターパーティー 前売11,000円(当日13,000円)

【購入方法】
・店頭販売 ※取扱店は、下記参照
・注文フォーム→郵便代金引換 ※受付期間:2014年11月26日迄
https://business.form-mailer.jp/fms/9938556737449
・QRコード(添付画像)→注文フォーム

【代金】チケット本体+送料(書留)512円~/代金引換手数料(一律税込260円)

【配送時期】受付完了より1週間以内に発送。

【お問合せ先】
2015ミス・ユニバース・ジャパン富山大会実行委員会
〒930-0036 富山県富山市清水町3-2-8-101 READATZ内
TEL.076-422-5336
jimukyoku@muj-toyama.com 

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昨年度のアフターパーティーでの写真です。中央が富山グランプリの高橋映さん。左が、今年もともに審査員をつとめるモデルの池端忍さん。

朝日新聞11日付夕刊、ブリオーニと千總のコラボが紹介されていました。

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千總さんはリシェスの仕事で取材に行きましたが、第二次世界大戦中の、友禅染などとてもありえない困難な時期にも、ぎりぎりの企業努力で伝統技術を継続させてきた、すばらしい会社です。

究極のリシェス・オブリージュの精神が発揮された、「腰から下だけのキモノ」を紹介したリシェスの記事の反響も大きかった!

職人さんの高齢化、着物需要の低下で、友禅染の中間工程の廃業も相次ぐ中、職人の伝統技術を次世代に伝えていくことが難しくなっています。そのなかでのヨーロッパブランドとのコラボは、また新しい希望となるはず。

「職人にとって、継続的な仕事とプライドの維持が課題」という磯本さんのコメントがリアル。

それにしても、京都は元気。京都GO ONのメンバーの海外での活躍もめざましい。茶筒の開化堂の八木隆裕さんの作品も、ヴィクトリア&アルバート・ミュージアムに飾られている。

伝統技術を継続させるのが厳しいという現状を嘆かず、グローバルに活路を見出して奮闘し、めざましい活躍を見せてくれる頼もしさ。ワクワクし、励まされます。

H&Mのカンボジア工場で働く、およそ300人の労働者が劣悪な状況下で倒れた、という記事。英「インデペンデント」29日付。

http://www.independent.co.uk/news/world/asia/hundreds-of-workers-collapse-at-cambodian-hampm-clothing-factory-2345537.html

2日間にわたって二度、トータル284人が気を失った。組合の代表は、工場の劣悪な状況を非難。「中はきわめて暑く、悪臭もひどく、工場からの煙も入ってくる」。それでめまいや頭痛が起きたり、息苦しくなるのだという。

一方、警察側は「集団ヒステリー」と。「一人が倒れると、他の人間まで気分が悪くなるのだ」。

International Laber Organizationは、栄養状態の不良を指摘。

H&Mは、調査を開始した、と発表。

カンボジアには、ほかにマークス&スペンサー、テスコ、ネクスト、インディテクス(ZARAのオーナー)の工場もある。

記事のダイジェスト、以上。

多くの労働者の卒倒。直接の原因に関しては、正確な調査を待たねばならないが、ひょっとしたら、労働者による「ストライキ」のような意思表示かもしれない。先日も、ザラの工場でおこなわれていた児童労働を含む非人道的労働のニュースを紹介したが(8月22日付)、いずれにせよ、安価な服には、「理由」があるのだ。

日本でこういうニュースがほとんどといっていいほど報道されないのは、たぶん、多くの媒体が、こうしたチェーンの広告を掲載しているからではないか。広告主に不利益なことはできないのである。その意味では、原発報道と似ている。マスメディアは東電から膨大な利益を得ていたので、マイナス面を報じるわけにはいかなかった。

福島、および周辺の農作物の汚染は、いまどのような状況になっているのか。日本では曖昧な情報しか入ってこない。ドイツのある公共テレビ番組によって、ようやくはっきりと知ることができた。

内容に愕然とすると同時に、日本でこういう報道が行われないことに、さらに怒りがこみあげる。

(追記:フェイスブックで多くの人にシェアされた動画を上に紹介したのですが、翌日、動画そのものが削除されました。なんらかの黒い力が働いたのではと勘繰りたくもなるのですが……。字幕全部を書き記していた方がいたので、そちらを紹介しておくにとどめます。http://www.windfarm.co.jp/blog/blog_kaze/post-6085

「プチプライス」の服の背後に広がる悲惨な状況の数々が報道されないのと、同じような理由がありそうだ。(もちろん、福島の問題はこれとは比較にならないくらい大きくて複雑である。だれかの利益のために報道規制がおこなわれているらしい、という点において似た匂いを感じるというほどの意味である。)

安価な服の背後に広がる諸問題をすべて了解したうえで、それでも着るならそれでいいと思う。「しかたがない」「選択肢がない」という側面は、たしかにある。ただ、まったく何も知らずノーテンキに、雑誌のグラビアがあおるままに「ブーム」とやらにのせられている人々の姿を見ると、3・11以前に「原発はクリーンエネルギーです」という甘言に何の疑いもさしはさまずにエネルギーを享受していた私たちの姿が、ほんのちょいと重なって見えてしまうのである。

クリスチャン・ルブタンが、赤いソールをめぐってイヴ・サンローランを訴えていた件。NYで第一回目の判決が下されました。(「テレグラフ」10日付 Christian Loubtin loses round one of red sole battle with Yves Saint Laurent)

ラウンドワンにおいては、ルブタンの敗け、でした。判事はヴィクター・マレロ。

赤いソールをトレードマークとするルブタンは、2011年リゾートコレクションで赤いソールを展開するYSLに対し、100万ドル以上の損害賠償を求めていた。これに対し、YSL側は、赤いソールはすでにルイ14世や、「オズの魔法使い」のドロシーがはいており、ルブタンが最初ではない、と主張していた。さらにYSLは、赤いソールを独占的に不正に使いすぎ、とまで非難していた(写真は「オズの魔法使い」のドロシーがはいた、ルビーレッド・ソールの靴)。

Wizard_of_oz

これに対し、判事は、レッドソールはルブタンのみに許されるブランドの刻印なのかどうか、証明することは難しいとして、ルブタンの訴えを退けた。

YSLの弁護士は、法律事務所Debevoise & Plimton のデイヴィッド・バーンスタイン。

「いかなるデザイナーも、服飾アイテムにおいて一つの色を独占すべきではない、というわれわれの主張に対し、判事マレロが同意してくださったことを感謝します。YSLのデザイナーはアーチストであり、ほかのデザイナーと同じように、各シーズンのファッションをデザインするときには、あらゆる色彩を使う権利があるべきです。YSLが当初から指摘してきたとおり、ルブタンによる赤いソールのトレードマーク登録じたい、認められるべきではありませんでした。この登録が取り消されるべきであるというわれわれの主張に、判事が同意してくださったことをうれしく思います」

とはいえ、これで終わったわけではない。YSLは2011年のリゾートコレクションの販売続行を許された段階であり、裁判は来週も続く。お楽しみに(?)。下は、とりあえず「救われた」(?)YSLの靴。

Ysl_red_shoes

「民族・信仰・出自を公然と侮辱した」(=ユダヤ人差別発言をおこなった)かどで訴えられているガリアーノの裁判が、パリで昨日おこなわれ、そのリポートが各紙ファッション欄に一斉に掲載されている。以下、数紙から抽出した概要を大雑把にメモ。

もしこの訴えがみとめられれば、6か月の禁錮刑と2万ポンドの罰金が科せられるはずだった。が、この日は7時間におよぶヒアリングののち、3人の判事は9月8日まで判決を保留することにしたという。

ガリアーノは、バーでのユダヤ差別発煙に関しては、「まったく記憶していない」と答弁。というのも彼は、経済的・感情的なプレッシャーにぎりぎりまで押しつぶされ、アルコールとヴェイリウム(精神安定剤)と睡眠薬の三重中毒に陥っていたから。

ネットに流れてしまった例の「アイ・ラブ・ヒトラー」事件に関して、ガリアーノはあの動画に写っている人物は「自分の抜け殻」でしかない、と主張。「あの男はジョン・ガリアーノではない。あれは限界まで追い詰められているジョン・ガリアーノという男の、抜け殻だ」と。2005年に彼の父が亡くなり、2007年に親密な友人が亡くなった後、彼は巨大なプレッシャーにさらされてきたと告白。ディオールのための休みない仕事を続けるため、精神安定剤と睡眠薬を大量にとりはじめた。

「クリエイティブ・ハイの後は必ず、ひどく落ち込み、そのたびにアルコールの助けを借りてきた」とガリアーノ。その過程で、ディオールに巨万の富をもたらしてきた、とも。

ガリアーノは、ユダヤ人差別発言は、こうしたプレッシャーによる三重中毒がもたらした別人格が言ってしまったことで本心から出た言葉ではないことを強く主張。ただ、こうした行為がもたらした混乱に対しては謝罪をしており、アリゾナのリハブで治療を受けてきた。

……というわけで、判決は9月まで保留になったが、「ただの酔っぱらいの言い訳」とはとても思えない重たさ、切実さが伝わってくる。この人自身が、どっちかというと、差別と闘ってきた人なのだ。モードのサイクルは早すぎる。デザイナーをここまで追い詰めるほど早く回して、誰が幸せになるんだろう? (社長だけ?) 天才にもう一度、適度にゆとりのある環境でよい仕事をしてもらいたいと願っているファンは世界中にいるはず。これでつぶされてしまわないことを祈る。

ディオールに空いた穴のあまりの大きさを示すかのように、次のデザイナーがまだ決まっていない。アズティン・アライアにオファーが来たが、プレッシャーの大きさに断ったという(ガーディアン報)。アライアは加速する一方の容赦ないスケジュールに対して、公然と批判しており、ショウをやめて自分のペースでビジネスをしている。

◇やはりガリアーノの解雇は免れなかったようだ。先週木曜の暴言事件(2月25日の記事を参照してください)につづき、新たなスキャンダルが飛び出し、これが解雇の決定的要因となった。

昨年12月にパリのバーにて携帯で撮影されたという動画が、ネット上に投稿された。日本から動画で見ると、問題部分はビープ音がかかっているが、英「インデペンデント」3月1日付の記事は、そこで交わされた会話の問題部分を掲載している。酔っぱらったガリアーノはこんなことを言ったとのこと。

Galliano: ……  I love Hitler and people like you would be dead today.  Your mothers, your forefathers, would all be fucking gassed and fucking dead.

Females: Oh, my God.

Female 2: Do you have a problem?

Galliano:  With you — you’re ugly.

Female 2:  You don’t like peace? You don’t want peace in the world?

Galliano: Not with people, like ugly peole.

Female 2: Where are you from?

Galliano:  Your asshole.

ガリアーノに容疑がかかっているタイミングに、昨年撮られた動画がアップされるのは、弱いものいじめのようなもんではないかとも思うが、この新スキャンダルで、ガリアーノの反ユダヤの立場が確認されたかたちだ。少なくとも、酒癖の悪さは。動画がアップされるまでは、彼の処分はまだ保留されていた。動画が世界的に広まったことで、ディオールのイメージダウンは決定的となり、解雇となったのだ。

これはまるで、インターネット裁判である。

25日の記事で、人種差別的暴言に対するフランスの法律はどうなっているのかだれか教えて、と書いたが、同記事に答があった。フランスの法律では、人種差別的発言は19,000ポンドの罰金と6か月の禁固刑が科せられる、と記事にあった。

◇一連のガリアーノ・スキャンダルに関し、英「テレグラフ」のヒラリー・アレクサンダーは「堕ちたアイドル」と題した記事のなかで、悲しみと同情を表明。これまで20年間ガリアーノの天才ぶりを追い、涙するほど感動することもあったという記者は、いま、別の種類の涙を流している、と。

アレクサンダー・マックイーンの自殺から一年。常に新しい商品を世に送り続けなければならないプレッシャー、ストレスは、(彼の場合と同じような)自己破滅行動を招く、とヒラリー。

ガリアーノの行動は今のところ弁護の余地なしとはいえ、一つだけ確かなことがあって、それはガリアーノが助けを必要としている、ということである、とヒラリーは結ぶ。今こそ彼が、これまで彼が貢献してきたファッション業界からの支援と愛をうけとるべきときだ、と。

ヒラリー・アレクザンダー、この「ゼロ・トレランス(人種差別主義者に対しては断固たる態度をとる)」のムードのなかで、よくぞ言ったと思う。マックイーンもガリアーノもイギリスが生んだ天才デザイナーながら、繊細なところがあり、グローバルモード界の容赦ないサイクルに巻き込まれて自己破滅行動をとったような感がたしかにある。ガリアーノは、いまこそリハブでもなんでも、助けを必要としている。だけどやはりトレダノとアルノーは容赦しなかった。

◇オスカー授賞式で、この時期にあえてディオールを着た大女優がふたり。ニコール・キッドマンとシャロン・ストーン。でもガリアーノを弁護する言葉は誰からもでなかったそうである(英「ファイナンシャルタイムズ」)。セレブ世界の「お友達」関係なんて、その程度のものか。

主演女優賞を獲得したナタリー・ポートマンは、ディオール社の香水「ミス・ディオール・シェリ」の顔でもあるが、ロダルテを着用(ロダルテは「ブラックスワン」のバレエコスチュームをデザイン)。「ユダヤ人であることを誇りに思っている一人として、今後一切ガリアーノとかかわりたくない」とコメントしたという記事が、英「ガーディアン」に出ていた。

ガリアーノはケイト・モスのウェディングドレスをデザインしている最中だった。

懸案の原稿を2つ、精魂こめて書き上げてぐったり脱力していたところ、ジョン・ガリアーノ逮捕(?)のニュースが飛び込んできた。木曜夜、パリのマレー地区で大酒を飲み、ユダヤ人カップルを侮辱するような暴言を吐いたとのこと。

ディオールのボス、シドニー・トレダノは冷たい。「反ユダヤ人的な発言、態度は断固として許さない。取り調べの結果が出るまでは、ガリアーノを仕事に就かせない」と即表明。

ステージでのロックスター的パフォーマンス上手の彼は、バックステージではシャイなことでも知られる。いったい具体的にどんな暴言を吐いたのか?

あるニュースサイトには、英語でこんなふうに言ったとラジオで引用されていた、とあった。: "Dirty Jewish face, you should be dead" and "Fucking Asian bastard, I will kill you."

ガリアーノの弁護士は容疑を否認。とはいえ、ガリアーノは相当酔っぱらっていたというから、本人は「覚えがない」のもムリはない・・・。弁護士は逆に、このような容疑をかけられたことに対して訴訟をする、と強気。

3月4日にディオールのショウが予定されている。ガリアーノなしのディオールなど考えられない。どうなるのか。

ガリアーノが言ったとされる暴言を読んでいて、ひっかかったこと。こんな種類の言葉は、日本ではその辺の居酒屋なんかでけっこう耳にする。へたするともっとひどい暴言がシラフのまま駅員に向かって投げられていたり、教室で生徒が教師に向かって言っていたりする。それって日本だと逮捕の対象にならない(逮捕されたことを聞いたことがない)と思うが、フランスだと(実際に暴力をふるわなくても)暴言だけで罪になるのだろうか? 

それとも、同じ民族どうしで暴言を投げつけていたらOKだけど、相手がユダヤ人だったから「人種差別的な攻撃をした」ということで逮捕の対象になったのだろうか? 人種差別に敏感なところだから、どうもそうらしいのだが。

知らないことが多すぎる。だれかフランスの法律に詳しい人、教えてほしい。

パリコレの会場外でエディターやモデルの「私服」を撮影する日本人カメラマンが増加しているという記事、「ニューヨーク・タイムズ」10月4日付。byエリック・ウィルソン。

大勢の日本人カメラマンが、デザイナーや作品を撮ることを目的としているわけではなく、パリコレの会場の外で何時間も待って、おしゃれエディターやモデル、とりわけ彼女らの「靴」「バッグ」「コート」などをターゲットに「ストスナ」の題材を撮りまくっているという記事は、やや冷笑的。コミカル、とまで書かれる。「Spur」誌は「日本のストリートスタイル・マガジン」と紹介されている。モード誌だと思っていたが、海外と認識に大きな違いがあるようだ・・・。

日本はまだ外気温35度だが、カレンダーの上ではようやく「ファッションの秋」到来、ということで、夏枯れ状態だった各紙スタイルニュース欄に、記事が目白押し。印象に残った記事をピックアップ。

◇ロンドンの「紳士の聖地」ジャーミン・ストリートで、4日、12時から5時まで、交通規制のもと「ジャーミン・ストリート・ガーデン・パーティー」がおこなわれた模様。

フォスターズ&サン、チャーチ、T・M・ルーウィン、ハウズ&カーティス、ヒルディッチ&キイ、デュークスホテル、ダヴィドフ、フォートナム&メイソン、パクストン、そしてリッツなどのセント・ジェイムズ界隈の名店が参加。「ブリティッシュであること」をテーマにショウやピクニックやパーティーなどの形式を通じて、イギリス的商品のプロモーションをおこなうという趣旨。あー行きたかった。

このイベントにちなみ、テレグラフ紙(1日付)では、チャールズ皇太子をイギリススタイルを象徴するアイコンとしてあらためて称揚していた。ここ数年「ワグズ」とかスーパーモデル的なものとかがもてはやされていたけど、やっぱりイギリススタイルの変わらぬ骨格は、チャールズ皇太子にあるよね、と。

皇太子は昨年、エスクワイア誌の「世界のベストドレッサー」の第一位に輝いていた。不況とエコトレンドも後押ししてたのかもしれないが、「40年前の靴をリサイクルしてはく」という態度が、シック、ともてはやされている。

ジャーミン・ストリートには、そんなチャールズ皇太子が御用達とする店舗も目白押しだが、もともと王室の庇護のもとに発達してきた。記事によれば、1664年にチャールズ2世(「衣服改革宣言」をおこなった王様だ)が、宮廷用品をそろえることができる地域としてこの一帯を開発する権限を、ヘンリー・ジャーミンに与えたのがはじまり、という。サヴィル・ロウはスーツの聖地だが、ジャーミン・ストリートは総合パッケージ。テイラー、シャツメイカー、革製品店、香水店、帽子店、理髪店、食品とワイン専門店、レストラン、ホテル、王室の趣味にかなうものがすべてそろう。

ぎらぎらせず、適度に控えめで、守るべき分をわきまえたほどよい堅実さ。伝統と趣味のよさと高品質。自己主張しない慎み深さの魅力が、再認識されている。過激な方へ行ってはまたこっちに戻る、みたいな繰り返しなんだけど、そうやって戻ってくる基本が何百年も淡々と存在し続けていることじたいが、素敵だと思う。

カタロニアの議会が闘牛を禁止する、という記事。「ガーディアン」28日付。

2011年末をもって、バルセロナからカタロニアの北東部にかけて、闘牛が見られなくなる。闘牛は動物虐待、という時代の勢いが、ついにここまできたのか、という感じ。

この決定に反対する人の声も多数。闘牛は残酷なスポーツなどではなく、芸術である、と。

自由に対する侵害である、という声も。子供たちや若い人は、怒れる牛に対する対処の仕方を学ぶ。見に行くか、行かないかは個人の自由であって、一方的に禁止するのはおかしい、など。

長い歴史をもつ文化的遺産か。断ち切るべき野蛮な慣習か。「倫理的」であらねばならない時代の流れにあっては、闘牛に対して後者の見方をとる人が圧倒的に多かった。

見られなくなる前に、ぜひ一度見ておきたいと思うが。

イングランドのサッカーチーム「チェルシー」が、選手の公式スーツと「私服」のデザインを、イタリアの「ドルチェ&ガッバーナ」に依頼したというニュース。「インデペンデント」28日付。服装だけではなく、スタジアム内のスペースも改装し、「ドルチェ&ガッバーナ・ラウンジ」と呼んでいるという。

ドルチェ&ガッバーナはすでに二回、イタリア代表チームのデザインをしているし、「ACミラノ」の選手たちのスーツも作っている。が、外国チームのデザインは初めてになる。

濃紺の艶っぽいスーツで、シャツがダークカラー(白とかブルーではなく)であることが目立つ特徴。そこはかとなく「遊び人」っぽいムードを醸しだす。

ドル&ガバの得意とする、「男の自信を誇示するような男らしさ」が、サッカー選手に好まれているということか。少なくとも、イギリス的な「アンダーステートメント」(控え目表現)はそこにはない。

男の服ならイギリス製が格上、と思いたかったが、もうそんな時代でもなくなったのかもしれない。サッカー選手が自由で色気と勢いのある服をグローバルに求めたら、ドル&ガバにいった、という印象。

それはそれでいいことだと思うが、サッカー選手のライフスタイルが憧れと模倣の対象になることを思うと、英国男子もイタリア男のようになっていく風潮が強くなっていくのかな……(18世紀にもイタリアかぶれの「マカロニ」男子などが、いたわけだが)。

エリザベス女王もドレスを「リサイクル」、との報道。英テレグラフ7月6日付。

昨年秋、トリニダード・ドバゴで着用した白いドレス(同国の象徴の鳥の装飾がつけられていた)を、鳥の飾りをとり、スワロフスキーをたっぷりとあしらうことで「リサイクル」して、トロントでの晩餐会に着用したそう。今回はカナダに敬意を表し、スワロフスキーでメイプルリーフ(同国の象徴)のモチーフが形作られた。

この「リサイクル」ドレスに貢献したのは、女王のスタイリストでパーソナルアシスタントの、アンジェラ・ケリーのチーム。

白いドレスにきらきらのクリスタルのメイプルリーフが流れるような光を添えて、女王のシルバーヘアーと調和している。政治的メッセージ、時流への倫理的配慮(セレブだって同じ服を着まわし)が感じられるばかりか、なによりも、迫力の美しさ。女王、クールである。

http://www.telegraph.co.uk/fashion/fashionnews/7873996/Queen-wears-recycled-dress-to-banquet-in-Toronto.html

表面上は華やかで幸福そうな人々ばかりに見えるモード界であるが、その中で働く人々の心の闇を考えざるをえない事件もときどき起きる。

メンズのミラノコレクション真っ最中の18日に、「バーバリー・プローサムの顔」として活躍してきたモデル、トム・ニコンが飛び降り自殺した、という記事。英「ガーディアン」21日付。22日には「インデペンデント」も同様の報道。

トム・ニコンはまだ22歳。ルイ・ヴィトン、バーバリー、ヒューゴ・ボスなどのモデルをつとめており、ヴェルサーチェのリハーサルから帰った直後、アパートの4階から飛び降りた。最近、ガールフレンドと別れており、それによる鬱が原因では、とのミラノ警察の報告。

ニコンばかりではない。以下、「ガーディアン」が報じた、最近のモード界における自殺および自殺未遂者。

先月にはマークス&スペンサーのモデル、ノエミー・ルノワール(30)がパリで自殺未遂。昨年11月には韓国のモデル、ダウル・キム(20)が首をつった。今年4月にはアメリカのモデル、アンブローズ・オルセン(24)が死亡。2月のアレクサンダー・マックイーンの自殺も記憶に生々しい。

4月にはコロンビアのモデル、リナ・マルランダが飛び降り自殺。2008年にはロシアのモデル、ルスラナ・コルシュノヴァがNYのアパートの9階から飛び降り自殺。

自殺する人はどの業界にもいて、プライベートな事情も多く関わってくるから、必ずしもモード業界の仕事によるストレスによるものと結びつけるわけにはいかない。でも、匿名のインサイダーのコメントから、モデルたちが受けるストレスの実態がうっすらと伝わってくる。

「オーディションに行くと、ディレクターたちが一目だけ見て、却下するんだ。その後ずっと、いったい自分のどこが悪かったのか、なぜ自分は仕事を得られなかったのか、と悩み続けることになる」

記事内に引用されていたジョルジオ・アルマーニの指摘が、重みをもって響いてくる。

「この業界はあまりにも若さを重視しすぎていて、22歳で人生が終わってしまうように思わせるのだ。私たちは、23歳以降もずっと人生は美しい、ということを若い人々に伝えなくてはいけない」

「絶望はどこにだってある。愛においても。でも、悲劇を招くことなしに、絶望と向かい合わなくてはならない」

帝王、アルマーニ75歳の言葉には力強い説得力がある。アルマーニはパートナーをエイズで失った後、絶望から立ち直り、独力で経営を学んで今の帝国を作り上げている。

死にたくなるような絶望と、悲劇なしに、向いあえ。きらびやかに見える業界だからこそ、求められるものも、厳しい。ニコンの冥福を祈る。

英デザイナー、アレクサンダー・マックイーンの訃報にショックを受ける。11日朝10時に、グリーンストリートのフラットで首を吊った姿で発見されたとのこと。母の葬式の前日だった。まだ40歳だ。

3月のパリコレの準備も進んでいたという。「アンファン・テリブル」と呼ばれた天才の心の奥底まではうかがいようもないが、マックイーンの庇護者でもあり恩師的な存在でもあったイザベラ・ブロウも3年前に自殺している。ブロウを失い、母までも失った悲しみに耐えられなかったのだろうか・・・。真実は永遠にわからないが、なんとも悲しくやるせない。

英各紙には多くの著名人のショックと悲しみのコメントが掲載されていた。

そのなかでひときわ異色ながら強く印象に残ったのが、「タイムズ」に掲載されたカール・ラガーフェルドのことば。

「マックイーンは作品のなかで、常に死とたわむれていた。どういうわけかわからないが、成功して、才能に恵まれていても、それだけでは、幸せになるためには十分ではないということだね。私はいつも彼の作品のなかに、少し人間性がそぎとられたような一面を見ていた。世界や現実から、距離を置こうとするような一面を。ファッションとはそのようなものだ・・・・・・・丈夫な胃袋をもっているわけではないのに、プレッシャーをかけられたら、不安やそのような一面にさらされるのだ」