NewsPicksではプロピッカーを務めておりますが、以下、本日ピックしたニュースにつけたコメントです。高校生にも話すことでもあり、過去のエッセイにも書いておりますが、転載し、補足をつけます。

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文章を書く仕事をしていますが、高校は理数科でした。いまの仕事に最も役に立ったのが数学です。

ひとつの数学の問題を解くのに、黒板いっぱいに数式を書いて正解を導いても、それは「エレファント」として却下されました。問題の本質を捉えてすっきり一行でおさまる数式を書いたとき、それがエレガントな解として認められたのです。「E=mc²」みたいな解ですね。

ファッションや生き方、文章におけるエレガンスも同じことかと気づいたのは、ずっと後になってからのことです。Eleganceは、Election (選挙)やElete(選び抜かれたエリート)と同じ語源から発生しています。選びぬくことがエレガンスの本質。つまり、必要な要素だけを選び抜き、本質をシンプルに表現することがエレガンスですが、それを教えてくれたのは数学だったのです。

直接、役に立たないように見えることでも、敬意を持って向き合ってみることで、あとから予想を超えるところで影響がもたらされることの醍醐味、こと数学にかぎったことではありません。何かを短絡的に役に立つ立たないの基準で切り捨てることは、未来の豊かな可能性をみずから切り捨てることと同じで、もったいないことと思います。

 

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これまでのささやかな経験を振り返っても、チャンスや転機はまったく予測もつかなかった過去の「圏外」の領域から飛んできました。共通するのは、当時「無関係」に見えていたとしても、決して排除したり軽視したりはしなかったということ。今日向き合うことや出会う人が、未来の可能性の種になるという確信は強くなっています。人に対してひどい態度をとれば利息付きで報いが返ってくるだろうし、敬意をもって接すれば(媚びることとは全く違います)遠い未来に思ってもみなかった恵みが降り注いでくることもあります。

 

CFCLとバレエダンサーのコラボが始まりました。デザイナーの髙橋悠介さんと対談しました。今の「日本らしさ」や西洋ファッションとバレエの関係、身体と衣服の話など。髙橋さん世代にはすでに洋服が当たり前のオリジンとしてあるんですよね。「和」にこじつけない日本オリジン、再考する機会になりました。CFCLの公式ウェブサイトに掲載されています。

ソーシャル・コーヒー・ハウスにお招きいただき、令和時代の新ラグジュアリーについて講演しました。オーディエンスは20代から30代、新ラグジュアリーととても相性のいいコミュニティでした。

たくさんの質問、コメントをいただきました。「日本はもうダメなんじゃないかという絶望感がありましたが、日本発のラグジュアリーを世界に届けるためにがんばっている人たちの話を聞いて希望がわいてきた」というのがあって、かえって衝撃を受けました。若い人に絶望感を与える社会ってなんなのか? 大人はそれでいいのか? 自分の利権ばっか、縄張りばっか大事にして、次世代から希望を奪うってなんなのか?

理想論すぎるのは重々承知の上で、私みたいな何の利権も権威もない人間が理想を語っていかないとダメなところまで日本は来ているのか?

権威のある偉い人は、若い人に希望を持たせる振る舞いもノーブレス・オブリージュとして遂行してくださるよう切に願います。

日本の未来、あなたの未来は大丈夫だよと明るい方向を示すこと、それも大人の義務なんじゃないかと気付かされた時間でした。

オーガナイズしてくださいましたソーシャル・コーヒー・ハウスのスタッフの皆様、メンバーの皆様に感謝します。

7月31日18:00~ Social Coffe House にお招きいただき、新ラグジュアリーについて話します。オンラインです。

詳細、お申込みはこちらから。

きもの専門店やまとが、賃金問題はじめ伝統工芸をめぐる社会課題解決のために龍郷町と「ソーシャル・アクション・パートナー」協定を結んだことについて、29日付けの日経連載「モードは語る」で書きました。社長の矢嶋孝行さんに取材しました。

企業と自治体、できないことを補いあいながら大島紬を未来に繋ぐ努力をしています。産地の職人、都心のビルで働く社員、関わる人みんなが幸福であることが「新ラグジュアリー」的スタンスです。「それを作った職人は幸せであったか?」まで考えるラスキン的立場。

電子版はこちらです。

エレガンスと車の歴史の前口上から始まりますが、富士スピードウェイホテル&モータースポーツミュージアムの取材記事を書きました。JBpress autograph の連載です。
お時間ゆるすときあればご笑覧くださいませ。
「富士スピードウェイホテルで深まる、ラグジュアリーとモータースポーツの関係」

やまと2023秋冬展示会にお招きいただきました。伝統的なきものも美しく展開しているのですが、Double Maison や Nadeshiko 、Y & Sons といった各ブランドの斬新な解釈にもワクワクします。総レースのきものは同色の帯と合わせてドレス感覚で講演の機会などに着てみたい(スポンサー大募集(笑))。

インバウンドの延長で、広義での日本のファッションにも関心を引きつける大チャンスが到来しています。きものの可能性はこれからますます開花しますね。
大島紬をめぐる地域との協力のお話が興味深く、近日中に記事化します。

『新・ラグジュアリー 文化が生み出す経済10の講義』、重版となりました。皆様に感謝します。

内閣府、経済界、月刊事業構想、東洋経済、日本経済新聞、日経ビジネス、東京経営者会議、東京大学工学部、はじめ多くのメディアにとりあげていただいたり主要機関に講演や講和にお招きいただいたりいたしました。多方面での影響力を実感する一年でした。

 

Forbes Japan 連載「ポストラグジュアリー360°の風景」を更新しました。「ラグジュアリービジネスと日本、『翻訳不能』な国の勝ち筋は」

羽田未来研究所社長の大西洋さんにインタビューしました。後半は安西洋之さんが「これが日本文化だからと押し付ける儀礼は、海外の人にはコミュニケーションを絶たれた翻訳不能の世界」に見えることがあると指摘。

一万字くらいの長い記事なのですが、日本発ラグジュアリーや地方創生、日本文化の海外からの見え方に関心のある方、ぜひご一読ください。

写真©羽田未来総合研究所

JB press autograph 連載記事を更新しました。「地域ブランディングを成功させるために今、必要なこと」。富山県のクリエイティブディレクターに就任した高木新平さんにインタビューしました。