
オリジナルの風格までは、マネできない。
◇DVDで「死刑台のエレベーター」。ルイ・マルのオリジナル版のしっとりノワールな雰囲気には遠く及ばなかったが、ハラハラ感はそれなりに楽しむ。
ストーリーはリメイクすることができても、雰囲気をリメイクすることは難しい、とあらためて感じる。洋服やバッグのコピーにおいて、カタチだけなぞることはできても、「本物」が漂わせる風格までは決して再現できないのと、ちょっと似ている。そっくりであればあるほど、本物の格が上がっていく。「コピー歓迎」と言っていたココ・シャネルは、正しかった。
◇DVDで「悪人」。原作の哀感、複雑な人間像をみごとに視覚化。俳優陣がそろって力強くすばらしい。クライマックスにおいて、被害者の父、加害者の祖母、逃亡する二人のカットをそれぞれ短くつないで感情をぎゅーと盛り上げていく手法も絶妙で、世間の高評価にも納得。
「遠距離恋愛」を観たときに、「遠距離恋愛中に、会いたいときに会えないことの地獄の苦しみ」が吐露されていて、その苦しみと、まったく一人であることの平穏と、どっちがマシなのだろう?とつらつらと思っていた。
「死刑台のエレベーター」を観た時にも、「愛のために殺人に走る甘美な地獄」と、愛がないゆえの平穏と、どっちがマシか?と思わされた。
「悪人」のヒロインは、閉塞しきった日常の平穏な砂漠よりも、「愛のために危険な逃亡をする地獄」を選んだ。「愛」が幻想だったかもしれないとしても、たぶん、そっちのほうが「生きている」実感は大きいのだろう。
愛のための地獄>愛のない平穏。すくなくとも虚構の世界においては、そうじゃないとドラマにならない、ということはあるが。
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重苦しい現実と、美しい虚飾の世界の間で
◇「メンズプレシャス」2011 spring号発売です。特集「奥深き"御用達"名品の真実」において、扉の記事と英国王室御用達についてのエッセイ、2本を書いています。機会が…

よく訓練された子供たちはいるのに
◇日々少しずつ数字が加算されていく死亡者数。日々状況が悪化する原発。ついに東電は低濃度の(っていう表現もごまかされているようで気持ち悪い)汚染水を意図的に海へ流し始めた。高濃度の汚染水の流出も止められないまま。茨城ではコウナゴ汚染。
シャングリラホテルの休業。外国船の日本への寄港忌避。農業と漁業への長期的なダメージ。
じりじり、じりじり、と事態が悪化していくことに対し、不思議なことに、最近は、当初のような不安を覚えない。長期間こういうのが続いて、心身が<日々、悪いことが加速していくこと>に慣れてしまったようなのだ。それとも感覚がマヒしたのだろうか。「関心がなくなった」とか「ニュースに飽きた」ということとは違う。「冷静になった」「楽観するようになった」というのとはもっと違う。毎朝NYタイムズやウォールストリートジャーナルの記事と日本政府の発表を読み比べては、腹を立てたり疑問を抱いたり、<気にしすぎない努力>をしたりしている。ただただ、身体が「不安に慣れた」としか思えない状態。
大戦中、空爆の恐怖をどのように人々はしのいだのか、と常々不思議に思っていたが、ここにも「不安や恐怖に対する、慣れ」のようなものが、ひょっとしたら生まれていたのだろうか? 憶測にすぎないが、ある程度の慣れによって、極度のストレスから心身が守られるということもあるのではないか、と感じる。
あるいは、来るかもしれないより大きな恐怖に備えて、心身が自発的にエネルギーを消耗させないようにしているのだろうか? との思いもよぎる。
◇大学の同僚、森川嘉一郎先生のツイートより。あまりにすばらしいので引用させていただく。
「今回の地震対応に対する海外の報道を見ると、日本という「国家」には、よく訓練された子供達(国民)がいる一方、責任を担う大人達がいないという、既成の日本観をさらに戯画化したようなイメージが醸成されつつある。他方でそうした自国の戯画を笑えるかどうかが、文化的成熟の一つの指標でもあるが」。
さすがの洞察。…

「こんど食事でも」「いつにする?」「1000年後」「急だな」
◇「メンズファッションの教科書シリーズ vol.7 The Coordinate」(学研)、発売です。本書の中で、小さなコラムですが、スティーブ・マックイーンのスリーピース・スーツの…

「作戦ではなく、祈り」
絶望に近い状況をなんとか「なだめる」べく、必死に放水をしつづけるというアナログな作業を、NYタイムズの記者は「作戦(plan)などではなく、祈り(pray)である」と表現していた…

被災地の「平等」、平穏地の早い者勝ち
買い置きをなにもしなかった。食糧・生活に必要な備品・仕事に必要なA4の紙、すべて入手がままならない。ガソリンも尽きたので外食にも遠方への買い出しにも行けない。
被災…

「Operation Tomodachi」
ガソリン売り切れ、映画館休館、イベント中止、一部の棚が空っぽになったスーパーマーケットも早めの閉店、となにか「映画で見たような戦争中」のような空気を感じた日曜だったが、朝起きて、知人から「拡散希望」として回ってきたメールに心が洗われるような思いをした。アメリカ大統領が、日本へ救援に向かう兵士に向けて語った演説の要約とのことだった。
☆☆
おはよう、諸君。…

感情は、伝播する
「激甚災害」という指定基準があったこともはじめて知ったが、人が想像しうる「激甚」の基準をはるかに超えている。
被災された方々の苦しみや悲しみをいくら思ってもその…

非常時の善意に、感謝。
家で仕事中だった。ゆら~ゆら~と揺れ始め、やがて部屋全体が平行四辺形になって揺れてこれは危ないと思って外へ出たら、足元が定まらず、電信柱もぐるりぐるりといった感…

ムーア現象&「お元気ですか」のNG
とりたてて話題にすべきほどでもないんだけど、ちょっとひっかかった言葉のメモ。。
◇その1 「ムーア現象」。
クレアトゥールでヘアエステ中に流れていたDVDのなかに、'Flirting…

きれいごとの羅列は、人を退屈させる
◇「英国王のスピーチ」観る。予想していたよりも堅実で抑制のある印象。英国史では、エドワード8世&ウォリス・シンプソンをめぐる一連のスキャンダルが脚光をあびがちだ…

ガリアーノからの「ラブレター」
◇ロイヤルウェディングにタイミングを合わせ、4月末発売の「25ans」でロイヤル婚大特集が組まれるとのこと。歴史上の英王室のドラマティックカップル4組分+総論を寄稿する…

モードのサイクルは、天才を自己破滅行動に追い込む?
◇やはりガリアーノの解雇は免れなかったようだ。先週木曜の暴言事件(2月25日の記事を参照してください)につづき、新たなスキャンダルが飛び出し、これが解雇の決定的要因となった。
昨年12月にパリのバーにて携帯で撮影されたという動画が、ネット上に投稿された。日本から動画で見ると、問題部分はビープ音がかかっているが、英「インデペンデント」3月1日付の記事は、そこで交わされた会話の問題部分を掲載している。酔っぱらったガリアーノはこんなことを言ったとのこと。
Galliano:…

うまい似顔絵のコツ
次男をダシにして応募した「リリー・フランキーのイラスト講座」、応募者多数ということだったが運よく当選、「保護者」として参加する@慶応義塾大学日吉キャンパス、ワークショップ・コレクション。
「生徒」は21名ばかりの小学生。それぞれが作文を書き、それに合わせたイラストを描く。ひとりひとりの作品が、リリーさんのコメントつきで紹介される2時間のワークショップ。
リリー先生が登場したとたんに空気がほんわかとなごむ。保護者席(リリーさんの言葉を借りれば、「おかあさんち」)の熱気がすごかった。やはり応募するのは(私も含め)、リリーファンの保護者だから当然か。
いい文章のコツ、というリリー先生の指導――「本当に思っていることを書きなさい。きらわれてもいいし、お母さんにおこられてもいいから、本当のことを書く。人にこう見られたいとか、こう思ってもらいたいとか、これを書いたら売れないだろうな、とかいうよけいな思いが入ると、つまらなくなるんです。こんなものを書いたら恥ずかしい、くらいのほうがちょうどいいんです。そもそも表現をするとは恥ずかしいこと。恥ずかしいことを書くからこそ、いいんです」
「書くことがないひといますか? 書くことがない人は先生といっしょにタバコすいに行きましょう」などなど、ぼそっとつぶやく何気ないことばにいちいち爆笑していたのが「おかあさんち」(おとうさんも大勢いらっしゃいましたが)のほうで、生徒のほうは「なにがおかしいのか?」という顔で、けっこう真剣にとりくんでいた。
うまい似顔絵のコツ、というリリー先生の指導――「だいたいがね、似てるのか似てないのかわからない顔になります。ほらね。そういうときは、絵の隣にその人の名前を書くんです。<ハマ>とか。プロはさらにそこに矢印を入れます(といって、名前から顔のイラストに向かって矢印を入れる)。そうすると、その人だってわかります」
かなりオトナな裏ワザの指導である。っていうかそれ、リリー先生じゃなかったらサギじゃん(笑)。
作品一つ一つに対するコメントにも、笑いと愛情があふれていた。ほめてるのか茶化してるのかわからないコメントも多々あったけれど(「このミッキーはカダフィ大佐みたいだね」とか)、最後は必ず生徒のキラリと光るところを見つけて、勇気を与えて作品を返してくれる。「遅刻ぐらいで腹を立てる友達はほんとうの友達じゃありません」という楽屋オチのコメントもぴょんぴょん出てきて、やはりそういうのは「おかあさんち」だけでウケていた。
最後は、リリー先生も予定外だったみたいだけど、ひとりひとりの似顔絵を、サイン入りで描いてプレゼントしてくれた。予定時間を大幅にオーバーして。リンパ腺が腫れているとかで、体調は必ずしもよくなかった様子なのに、一人として手抜きはなかった。誠実な方である。
どさくさにまぎれて「エコラム」にサインしていただく。「こんな下品な本を読んでくださってすいません・・・」と言いつつ、おでんくんのイラストつきのサインを書いてくださった。「おかあさんち」のひとりとして、リリー先生の人柄にふれた楽しい時間だった。ありがとうございました。
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これを「絆」と呼ぶのなら
ポン・ジュノ監督『母なる証明』DVDで。キム・ヘジャが母、ちょっと知的に障害をかかえるらしいその息子をウォンビン。
殺人事件の容疑者にされた息子の無実を信じ、警…

ガリアーノの「反ユダヤ的暴言」
懸案の原稿を2つ、精魂こめて書き上げてぐったり脱力していたところ、ジョン・ガリアーノ逮捕(?)のニュースが飛び込んできた。木曜夜、パリのマレー地区で大酒を飲み、ユダヤ人カップルを侮辱するような暴言を吐いたとのこと。
ディオールのボス、シドニー・トレダノは冷たい。「反ユダヤ人的な発言、態度は断固として許さない。取り調べの結果が出るまでは、ガリアーノを仕事に就かせない」と即表明。
ステージでのロックスター的パフォーマンス上手の彼は、バックステージではシャイなことでも知られる。いったい具体的にどんな暴言を吐いたのか?
あるニュースサイトには、英語でこんなふうに言ったとラジオで引用されていた、とあった。:…

濃くて大きな瞳は語る
「瞳の奥の秘密」DVDで。アカデミー賞最優秀外国語映画賞を受賞したスペイン=アルゼンチン合作映画。監督はファン・ホセ・カンパネラ、主演にリカルド・ダリンとソレダ・ビジャミル。
美しい若妻が残虐な殺され方をした事件。終身刑になるはずの犯人は当時の腐敗政治のなかで釈放されてしまう。被害者の夫。犯人を逮捕した検事。その美人エリート上司。25年経って、うやむやになっていた事件のその後、検事の個人的な想いに、決着がつこうとしている……。謎と愛、過去と現在がうまくからみあった、重厚な余韻に酔える映画。特殊メイクの技術なのか、若々しい25年前と、老境にさしかかった現在を演じわける俳優たちの風貌の違いが、あまりにもリアルで驚く。
タイトルが示すとおり、人物たちの「瞳」が語る。黙っていても、瞳がほんとうのことを語ってしまう。写真に映る瞳もそうだし、さりげない一瞥、まばたき、伏し目、すべてに意味が宿っていて、それを読み取る相手が次の行動を起こしていく。彼らがラテン系の濃くて大きな瞳の持ち主だからこそかなあ、という感も(笑)。
なかでも、容疑者が自分に向ける視線から真犯人と直感し、男としてのプライドを侮蔑することで挑発して自白をさせてしまう美人上司のやり方に度肝を抜かれる。
TEMO(怖い)…

会話や散歩にテマ、ヒマかけると、優雅に映る
家の前周辺の雪かきをしてから、銀座で仕事三件。取材を受ける・取材をする・原稿の打ち合わせ。なぜか銀座には雪の痕跡がない。
取材を受けたのは、英国王室の純愛をめ…

パキスタン初のファッションウィーク
2011年の「ファッション事件」として記録されるべきイベント。パキスタンのイスラマバードで、はじめての4日間にわたるファッションショウが開催された。英「ガーディアン」1…

できるかな? その2
「ニューヨークタイムズ」がツイッターでやっている「ファッションIQテスト」、以前にもご紹介したが、またオタク魂をくすぐる問題がぞろぞろ出ているので、最近の問題のなかから、ご紹介。
A.…

