古典から出発、実験を経て総合へ
昨日訪れた、ドガ展@横浜美術館。「サライ」読者のみなさまとともに、学芸員のレクチャーを20分ほど聴いたあとでの鑑賞。
第1章「古典主義からの出発」、第2章「実験と革新の時代」、そして第3章「総合とさらなる展開」という三部構成になっている。基本をきわめ、実験と革新に入り、晩年にはそれらすべてを総合する表現へ、と昇華していった芸術家の道筋がわかる。
有名な「エトワール」(意外と小さな絵であることに驚き)はじめ、「バレエの授業」、メンズファッションの本に必ず出てくる「綿花取引所の人々」などは、すべて第2章の時期に。
「エトワール」だけが他の絵とは距離をおかれ、別格扱いされていた。初来日とあって、この絵の前にはとりわけ人だかり。チュチュ(踊り子のスカート部分)から光を受けて透ける足のなまめかしい美しさに、見入る。「綿花取引所の人々」は、1873年当時のメンズファッションの「実例」としてしばしば引用される絵なのだが、ゴミ箱に捨てられた紙屑の細部、新聞のレイアウトにいたるまで、細かい仕事がなされていることがわかり、あらためて感心。
第2章では踊り子ばかりを描いていたようにも見えるドガは、第3章では執拗なほどに「浴女」を描く。見られていることをまったく意識していない、無防備に体を洗ったり拭いたりしている裸の女の後姿。「浴後(身体を拭く裸婦)」にいたっては、マニエリスムがいきすぎて頭部がどうなってるのかわからない(その異様なクネクネが魅力になっている)。
晩年は視力が落ちて、彫刻をたくさん作っていたということもはじめて知る。まとまった数のドガの彫刻が、一部屋分。
遺品の展示も含めて、132点。オルセイ美術館からは46点。素描の展示がやや多すぎる感もあったが、「古典」→「実験・革新」→「総合」にいたる芸術家の軌跡は、示唆に富む。女嫌いで独身を通した、というドガの顔の変遷も味わい深く。
20年ぶり、というかなり久々のドガ回顧展になるが、それは顔料が繊細なパステルだから。輸送中にパラパラと落ちるので、海外の美術館はなかなか貸与してくれないのだ。ということを学芸員の話から知る。
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できるかな? アゲイン
ニューヨーク・タイムズの「T マガジン」が、ツイッター 'The Moment' で、ファッションIQテストというのを発信している。私自身はツイッターはまったくやらないが、IQテストがある程度まとまった段階で、不定期にチェックして楽しませていただいている。
マニアックな問題ばかりなのだが、モードニュースがオタク級に好きな人は、挑戦しがいがあるかも? 最近のテストから、比較的簡単なレベルに属するテストを、いくつか抜粋して紹介。
Q.1 次のデザイナーのうち、アルマーニ、プラダ、YSLすべてのブランドで働いたデザイナーは誰?
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偽物が、本物に対する需要を刺激する
◇ロンドン発のメンズ秋冬トレンドとして、テイラードのひざ丈オーヴァーコートが復活、という記事。ファイナンシャル・タイムズ、22日付。
ここしばらくは、冬場でもトレンチとか、ピーコートなどが主流だったが、フォーマルへの回帰の流れか、テレビドラマ「シャーロックホームズ」の影響か、ミリタリーの流れか、今冬はエレガントなロング丈のコートが大きなトレンドになる、と。
日本の市場にもそのうちにちらほら出回るとは思う。でも、スーツにナイロンジャケットが定番、という日本のビジネススタイルには、いつどの程度浸透するのか。こちらはこちらで独立したカルチュアになっている感もある。
ロンドン発のトレンドといっても、作り手にとっては、とにかく「去年とは違う」アイテムを買ってもらわないとビジネスにならない、というのも本音としてあるだろうし。
◇フェイク・ファー人気がリアル・ファーの需要を押し上げている、という記事。インデペンデント、17日付。
テクノロジーの発達で、フェイクファーがとてもしなやかで加工しやすくなり、リアル・ファーとの区別すらつかないくらいに完璧になった。
かくして、いたるところにリアルかフェイクかわからないすてきなファーが気軽に使われるようになる。「ファーは動物虐待に加担」というPETAが作り上げたようなムードは薄まり、文化的にファーはOK、という流れになっている。それが逆に、ヴィンテージ・ファーも含めたリアル・ファーに対する人気を高めることになった、と。
偽物が、本物に対する需要を刺激する。
皮肉だが、本物が真に「ホンモノ」であれば、いろんなケースでこの法則は成り立つように感じる。
◇某女性大臣のヴォーグ出演に関し、英紙の報道を見ていたら、いい格言に出会う。
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「絶好調のときに、足元をすくわれる」
「マッドメン」シーズン3のボックスを観はじめる。まずはDisc1からDisc3まで。第6話の「ガイ・マッケンドリック」の話が衝撃的だった。
ロンドン本社から重役が訪れ、社長を…
動いてしゃべる次郎さん
幻想がくずれそうな気もして保留にしていた、「新潮45」付録の白洲次郎DVD、ようやく観た。
最初の数分は写真による次郎の生涯紹介。つづいてようやく「動く次郎」(!)…
「今ここを生きる人間の似姿のオブジェ」
ガーデンプレイスついでに、東京都写真美術館に立ち寄る。2階で「ラヴズ・ボディ 生と性をめぐる表現」展、3階で「二十世紀肖像」展。
前者の方はメディアでもとりあげられていて、期待が大きかったものの、点数が思ったよりも少ない。とはいえ、衝撃とともに「生と死」を考えさせられる写真と出会う。
ポスターにも使われている「転げ落ちるバッファロー」。デイヴィッド・ヴォイナロヴィッチの作品。生と死の境界にいる、というか死へ転がり落ちていくバッファローの姿が、どこか白日夢のようでもありながら、荘厳な印象。死ぬときはこんなふうに、ふわり、くるり、なんだろうか・・・とか、とりとめなく想像が続いていく。
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保守と大胆のキュートな調和
「ミス・アシダ」2011 S/S コレクション@恵比寿ガーデンホール。
エッジイな洗練とかわいらしさ、正統派エレガンスと茶目っ気のあるハズシ、保守的風味と艶っぽい大胆…
故郷で伯爵夫人よりも、ニューヨークでメイド
「ゴシップガール」セカンドシーズンの後半、BOX2を見終える。いろいろあったハイスクール生活も卒業式を迎え、これで、完。ほっ。
ここにくると登場人物ほとんど全員が「兄…
「英王室御用達マーク」は、ダサい?
「サライ」誌記事のため、「デンツ」のグローブに関するお話を、「リーミルズ・エイジェンシー」の長渕靖社長にうかがう。
一双3万円~5万円の手縫いの革手袋には、なるほど価格だけの時間と手間ひまがかかっていることを知り、納得。詳しくは本誌にて。
「リーミルズ・エージェンシー」はデンツのほかにも、ジョン・スメドレーのニット製品、ジョンストンズのカシミア製品、パンセレッラの靴下などなど、スノッブな英国ブランドを数多く扱っていて、ちょっとした興奮続き。下の写真はジェイムズ・ボンドも愛用のパンセレッラ。英国仕様のカラフルな柄や、「脛が見えない」ロングホーズもそろう。この靴下についてはまたあらためて取材したくなる。
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人道的人間ぶると、生気を失う
◇現存する唯一の「白洲次郎」秘蔵映像DVD、という付録にひかれて「新潮45」購入。DVDはなんだかもったいないくてこわくてまだ見る気になれない。本誌には、これに合わせて…
「死なないまじない」
堀井憲一郎『江戸の気分』(講談社現代新書)読み終える。落語を通して、江戸のリアルな気分のなかにひたって、江戸の庶民になった感覚を想像してみよう、という趣旨の本。…
「限界を乗り越え、美を刷新する力」
◇「大人のロック!」特別編集「永遠のクイーン」(日経BPムック)発売です。来年度のカレンダー付き。フレディ・マーキュリーのファッションについて語っております。機会がありましたら、ご笑覧ください。
◇ゼミ生とともに、「きらめく装いの美 香水瓶の世界」展@東京都庭園美術館。
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ナチュラルなNYの妖艶なヴァンプ
オーガニック・フレグランスの最先端をいくパルファン・オノレ・デ・プレから新しいライン、"WE LOVE NY"コレクションが登場。
<マグノリア・ベーカリーでの朝のコーヒー>風の紙カップに入った、いまどきニューヨークのナチュラルスタイルを体現する香水。なかでも「Vamp…
「国王の笏を受けよ。国王の権力と正義の印を」
「ナガホリ」秋の創美展@帝国ホテル。「孔雀の間」にひしめく豪華な宝石の数々に目の保養をさせていただく。「スカヴィア」や「レポシ」などの遊び心のある大胆なデザインのジュエリーを目にすると、いつもながら、脳内を電気が走る感じ。スケールと歴史と発想が違う。値札には「0」が数え切れないほどついているのでチェックする気にもなれない。ひたすら美術品として崇める。
今回、感動的な出会いだったのは、「ロイヤル・アッシャー」のダイヤモンドである。なんでも「セックス&ザ・シティ」に登場してからアメリカでの売り上げが急上昇したというダイヤモンドなのだが。もとよりそんなミーハーなブランドではない。
1854年、オランダのアムステルダム発祥、創設者は技術者のアイザック・ジョセフ・アッシャー。1907年に、史上最大のダイヤモンド原石「カリナン」(3106カラット、621.2グラム)のカットを、当時の英国王エドワード7世にゆだねられる。
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普遍性のある優雅
「ジュン アシダ」2011 S/S コレクション@グランドハイアット東京 ボールルーム。
永遠のエレガンスの模範だなあ、とあらためて感動。流行を超えてコンサバティブだけど…
「困った 内容がない」
「北原照久の超驚愕現代アート展」@六本木ヒルズ森アーツセンターギャラリー。
精巧でキッチュな、おどろおどろしくて驚きあきれる現代アートの世界。山下信一のフェティッシュなフィギュア、荒木博志のロボット型巨大オーディオ、逆柱いみりの少年白日夢的世界、堀哲郎の正確すぎるドールハウス、松井えり菜の「ブキミながら、なるほど」な「ふたつのきもち」の絵、武藤政彦のSFちっくな自動人形からくり箱、柳生忠平の妖怪画、山本高樹の超リアルな昭和の心象風景・・・・・・。ぶっとんだ発想そのもの、それを実現するテクニックや執念(!)、認めてくれる人(=北原氏)との出会い、すべてをふくめて「才能」だなあ、と感じ入る。
巨匠・横尾忠則は期待を裏切らず力強く、加山雄三、石坂浩二というマルチな才能のスターの作品も味わい深い。
唐沢俊一が逆柱いみりの「赤いタイツの男」という本の帯に書いたというコピー、「困った 内容がない」に笑いつつ共感する。
なんだか得体のしれない電磁波のようなものを深いところまで浴びた気分がする。
森美術館のほうでは、「ネイチャーセンス展」。体感型のアートな空間を歩く。こっちはどちらかといえば「癒し」系アート。でもちょっと歩き疲れる。
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成長などしない、「らしく」なっていくだけ
「ゴシップガール」2nd season Box 1、見始めると止まらなくなり一気にDisc 5まで。ファーストシーズンよりも過激にパワーアップしている。
新しい人物が現れると必ずなにか裏があ…
「絵は、もうひとつの現実」
講義終了後、シャガール展@東京藝術大学大学美術館。終了間近だからか、雨なのにたいへんな混雑。入場制限にひっかかり、およそ20分待ちでようやく入場できる。
強い色彩で描かれた、幻想的というか白日夢のようなシャガールワールド。超有名な「ロシアとロバとその他のものに」(1911)はやはり圧巻で、しばらく絵の前で呪縛にあう。
1966年から67年にかけて、シャガールがニューヨーク・メトロポリタン歌劇場のために「魔笛」の舞台美術の仕事をしていたということを初めて知る。舞台の背景幕の下絵もシャガール印の濃厚さがうずまいてこってり楽しいが、シャガールによる衣装デザイン画の数々がなかなかかキュートで、思わぬ拾いものをした気分。
ただ期待が大きすぎたせいか、肝心のシャガールの作品の点数が少なかったことと(ほかのロシア前衛芸術家たちとの出会いもそれなりによかったけれど)、関連ドキュメンタリー映画を観たかったのに、立ち見の人が外まであふれていてまったく観られなかったことが、残念。52分の上映なので、交替まで小一時間も待たねばならないのだ(待てません)。この映像だけDVDで発売してないだろうか。
そんなわけで若干の不完全燃焼感は残るものの、戦争やら革命やら亡命やら愛妻の急逝やら再婚やらのさまざまな劇的なできごとを経ながら描き続け、90歳でなお傑作「イカルスの墜落」を完成させているシャガールの画家人生に、静かに励まされた。
藝大周辺は、独特の雰囲気のあるところで、しばし散策。雨にけぶる「旧東京音楽学校奏楽堂」のたたずまいも、味わい深い。
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「男は年とともに賢くなるわけではない」
◇「サライ」11月号発売です。連載「紳士のもの選び」で白山眼鏡店のメガネについて書いています。機会がありましたら、ご笑覧ください。
◇次号で扱う、数種類の絵柄トランプたちをひとつひとつチェックする。テーマごとに54枚のカード(ジョーカー含む)に異なる絵がついているというジャンルのトランプ。詳しくは本誌で紹介するが、そのなかのひとつ、「クラシックムービースター」のトランプにあったセリフから。
スペードの4、クローデット・コルベールのポートレイトに「パームビーチ・ストーリー」(1942)のセリフ―'Men…
「貧者の富者に対する思いやり」
◇何ヶ月か前に、まったく別々に予約注文していた「マッドメン」シーズン3のボックス、「ゴシップガール」シーズン2のボックス1、「ビートルズアンソロジー」のボックス…

