「エロカジ」を中国語にすると
中国のファッション誌、「端麗」で三か月集中連載を始める。私が日本語で書いたエッセイを、先方が中国語訳して、ふさわしい写真を選んでレイアウトしてくれるのだが、あま…
「本当に<腹が減った>という思いをしたことはあるか」
先週、11日(木)に宮内淑子さん主催の「21世紀ナヴィゲーターズ・コミッティー」に参加したときのメモ。このコミッティーはなんと17年目になるという。私はほんの数回…
アレクサンダー・マックイーンの訃報
英デザイナー、アレクサンダー・マックイーンの訃報にショックを受ける。11日朝10時に、グリーンストリートのフラットで首を吊った姿で発見されたとのこと。母の葬式の…
ロールスロイス、カントリーの邸宅、そしてサヴィル・ロウ
サヴィル・ロウにお仕立てスーツを作りにくるミュージシャンの話、英「フィナンシャルタイムズ」1月30日付け。いつか役立ちそうな話だったので、備忘録まで。
始まりは…
「花の香りじゃなくて、女の香りがほしいの」(by シャネル)
◇「クロワッサン」の仕事でビューティージャーナリストの倉田真由美さんと対談する@白金のスタジオ。最近注目のブースターコスメがテーマ。
メーカー側としては、手持ち…
美醜の基準をゆさぶるモデル
2009年イギリスの「ベストモデル」に、ミック・ジャガーの娘、ジョージア・ジャガー(17)が選ばれた、というニュース。
http://www.independent.co.uk/life-style/fashion/news/strolling-stone-micks-daughter-named-britains-best-model-1837386.html
「インディペンデント」のコメント欄には、「彼女の顔が<魅力とはほど遠い>ように見える自分は頭がおかしいのか?」というような投稿がのっていた。
やや出っ歯ぎみ(しかも歯の間隔がはなれている)の口元、目じりさがりぎみの目は、パパのミックゆずりかな。ミックだってけっしてハンサムではなかったかもしれないが、そんな基準をけちらす濃厚なカリスマで目をひきつけた。ジョージアも、美人の基準にすんなりおさまる美人ではないからこそ、なにか目を離せないようなこってりしたものを発している(ように見える)。少なくとも、ジョージアの「代わり」はいない。
イギリス発のモデルは、そもそも、わかりやすい美醜の基準をゆさぶってきたからこそ別格なのである。ツイギー。ケイト・モス。アギネス・ディーン。
ジョージアが今後どう化けるか、あるいは消えていくのか。
ベスト・ラベルとしてはバーバリー。納得の受賞である。クリエイティブ・ディレクターのクリストファー・ベイリーは、今年、ほかにもファッション関連の賞をいくつかとっている。
「アウトスタンディング・アチーブメント(傑出した業績)」を評価されたデザイナーは、ジョン・ガリアーノ。ずっとエネルギッシュに先頭を走り続けているガリアーノには、いつも驚かされっぱなし。枯れない才能に感嘆する。
「人生は、息をのんだ瞬間の数で計られる」
次世代産業ナビゲーターズのメンバーのひとり、服部崇さんから『APECの素顔』(幻冬舎ルネッサンス)をお送りいただき、さっそく読む。服部さんは経済産業省の、いわゆる「官僚」さんなのだが、巷の官僚のイメージ(実像を知らないでいうのもなんだが)をこころよく裏切る、さわやか系好青年である(世間の年齢基準では中年かもしれないが)。大学の同じ学部の後輩でもある。
この本は、服部さんがシンガポールにあるAPEC(アジア太平洋経済協力)事務所に勤務していた、2005年から2008年までの3年間の個人的な記録である。
公的文書ではない。かといって、個人的な思いの垂れ流しでもない。APECの活動が、「公人」であり時に「一個人」でもある服部さんの視点から、具体的に描かれる。公的文書的な硬さはやや残るのものの、APECの活動記録の合間合間に、個人としての熱い思いや考えやつぶやきが、ちらりちらりとはさまれる。
個の出し方が控えめである分、「APECっていう組織は、具体的にどのような活動をしているのか?」ということを知りたい一般読者にとっては、いやみなく読み進めることができるAPEC入門書ともなろう。政治・経済に疎い私でも、APECの活動に親しみを感じることができ、「アジア太平洋地域」と一口にいっても圧倒的な多様性があることを思い知らされた。ただ、一物書きとしては、どうせ個人の記録として書くなら、もっと遠慮なく「官僚の胸の内」をセキララに書いてもらってもよかったのに、と(笑)。
知らなかったことがずいぶんあった。以下、とくに勉強になったことをメモ。
・APECでは、参加国・地域を、「エコノミー」と呼ぶ。「国」じゃなくて、「エコノミー」!
・APEC事務局員もチャリティをする。事務局員が、それぞれがもちよった品をガレージセールで販売してお金を集め、それをベトナムの孤児院に寄付したというエピソードにはちょっとじ~んときた。
・ペルーのカソリック教会のマリア像の形状についての話。マリア像はドレスのスカートを大きく左右に広げて、二等辺三角形の形になっていて、さらにマリアの頭上に後光が差しているかのようにつくられているそうだ。これは、「かつてアンデスの山々を崇拝し太陽を拝んだインディオたち被征服民に、カソリック教会のマリア像を礼拝させるために編み出されたもの」であるらしい。
・熱帯のシンガポールでもマラソン大会がある! 気温28度、湿度85度だ。走るか?同僚のアドバイス、として書かれていた三箇条が、ウケた。「1.最初からとばさないで、ゆっくり走ること 2.途中で走るのをやめないこと 3.美女の後を追うようにすること」。
「美女かどうかは後ろからはわからないではないか」という服部さんのぼやきがおかしい。
・オーストラリアのケアンズのナイトマーケットで見かけたステッカーに書いてあったことば、として引用されていたフレーズ。『人生は息をした数ではなく、息をのんだ瞬間の数で計られる(Life…
「手先が器用になると生きるのが不器用になります」
「王様の仕立て屋」4巻~7巻。服×人生のエピソード、よくこれだけ考えられるなあ・・・と感心しつつ、楽しむ。とくに印象に残ったことばをメモ。
・4巻<ミラノの春>
「ナ…
服は、人工臓器
◇「フラウ」12月号発売です。連載「ドルチェを待ちながら」で、近頃浮上してきたサステナブルなキャビアについて書いています。機会がありましたら、ご笑覧ください。
◇た…
「人まじわりしたら血が出る」
開高健『人とこの世界』(ちくま文庫)読み終える。ケンさまが選んだ「人物」12人を、その作品とインタビューを通して描いた、ことばによる肖像画、といった感のあるノンフ…
「人類の発展を阻害してもいい」
堀井憲一郎さんの『落語論』(講談社現代新書)読み終える。ディープに落語について書かれた本ながら、日本文化の見方をめぐるヒントや、広くパフォーマンスや表現に関する…
「好きな服を着てるだけ、悪いことしてないよ」
腑に落ちたことばのメモ。
◇山崎正和さんの「リーダーも熱狂もないまま揺れたポピュリズム選挙」(「朝日新聞」9月2日)より。
「(ポピュリズムの定義として)ここでは…
贅沢の起源に、違法恋愛あり
ヴェルナー・ゾンバルトの『恋愛と贅沢と資本主義』(金森誠也・訳、講談社学芸文庫)読み終える。買ってきてから本棚を見たら、すでに以前に同じものを購入していることに…
「おしゃれな店やブランドに詳しい」は、不必要
携帯サイト連載の最終章のための資料をまとめて読む。婚活とファッション、モテとファッション、エロスとファッションっていうのは、実際のところ、どういう関係があるのか、ないのか。婚活にもモテにもエロスにもまったく縁がない、地味~な書き手としては生活実感を欠いたところからスタートすることになるのだが、それゆえ逆に、「なまぐさく」なく、主観やルサンチマンに流されずに書ける、というメリットはあるかもしれない(なまぐさいのが好きな読者には物足りないかもしれないが・・・)。資料として読んだ本のなかで、直感的に気になったことを覚え書きまで。こうしてメモしておくと、頭のなかで勝手に「発酵」したり、ほかのデータと想定外の化学反応を起こしたりして、あとから思わぬところで生きてくることがあるんです。
○白川桃子・文、ただりえこ・漫画『結婚氷河期をのりきる本!』(メディアファクトリー)。モラトリアム王子と別れ、結婚に対する意識革命を起こし、結婚市場に乗り込み、さまざまな「婚活」をし、自分からプロポーズして「ゴール」にたどりつくヒロインの物語の進行にあわせ、具体的な方法のポイントが解説される。恋愛観・結婚観がひとむかし前とは確実に変わっているんだなあとわかる、楽しい本だった。
「最初のきっかけ作りは『女子から』が基本。狩りに行かなければ、恋人はできません」
「王子様は、ガラスの高い塔に閉じこもっています」
「男の沽券をはずした男子が買い!」
「(プロフィールカードには)男子が話を広げられそうなネタを書くこと。趣味=華道、茶道などは、今どきピーアールにはなりません。それよりも『サッカー観戦が好き』だとか、男子にもわかりやすいものを」
「(お見合いパーディーでは)スカートで行くこと。どんなファッションか迷う人は、こういう時こそ雑誌『Can…
野蛮で優雅な三角関係
◇「ココ・アヴァン・シャネル」の試写@ワーナー・ブラザーズ。アンヌ・フォンテーヌという女性監督による映画で、シャネル役はオドレイ・トトゥ。孤児院時代~キャバレー…
放射能を持った文章
開高健さんの『一言半句の戦場』(集英社)読み終える。単行本未収録の開高コラムや対談などを編集した587ページのぶあつい本。半年以上前からずっと枕元に置いて、眠る…
知識ではなく、知識に執着する人間の狂いこそが面白い
◇地震のときにこれが落ちてきたらぜったい重みでつぶされる、と感じた過去何年分かの資料のスクラップを一部整理。ほんの2~3年前の切り抜きですらまったく「使えない」情報と化していることにガクゼンとする。自分はおそろしく虚しいことに時間を費やしてきたのではないかという徒労感に襲われ、しばし落ち込む。気をとりなおし、ざっと目を通した上で30冊分ほどのファイルを捨てたが、「切り抜きを処分する前にいま一度覚えておきたい」と思ったことがらを、以下に記す。ジャンルは雑多だが。
・藤沢周さんが今はなき「ストレート」に連載していた「独酌余話」の第4回「反・蘊蓄」より――「知識があること。あるいは極言すれば、頭がいい、ということに対する恥じらいを知らない大人は、見苦しく情けない。不惑過ぎれば、嫌でも何かしら一家言持つであろうに、何も衒うほどのことでもなかろう。むしろ、それを隠す所作にこそ色気が生まれるのである。・・・(中略)・・・何より、人間の抱える知識や経験の豊穣に対する面白さは、そこに執着してしまうその人の狂いが面白いわけで、知識なぞ本にいくらでも詰まっている」。
・シチュエーショナル・インティマシー(situational…
四分の四の人生でも
◇東理夫さんの『グラスの縁から』(ゴマブックス)読み終える。いつも持ち歩いて少しずつ読み進め、一か月ぐらいかかってゴール。時間をかけたのは、「この本の世界から離…
忘却と時の試練
外山滋比古さんの『思考の整理学』(ちくま文庫)読み終える。20代のときに読んでいたはずなのだが、きれいに忘れている。というか、たぶん20代のときにはピンときてい…
食品偽装といかにつきあう?
ビー・ウィルソンの『食品偽装の歴史』(高儀進・訳、白水社)読了。「フラウ」連載のネタにと思って読み始めたが、「ドルチェを待ちながら」こんな話題をふられたらぜったい食べる気なくすよな、っていう話のオンパレードで、コワ面白かった。とりわけアプトン・シンクレアの小説『ジャングル』(1906年)のソーセージ工場の描写ときたら・・・・・・。
1820年代、産業革命とともに問題になり始めた、食品偽装の歴史。偽装そのものはローマ時代からすでにあったのだが、大量生産時代に入り、「利益」が追求されるなかで、信じがたいような偽装がエスカレートしていったようだ。
偽装が必ずしも悪とかぎらない、と考えさせる視点も豊富で、「何が善で、何が悪なのか?」と頭がぐるぐる回り始めてくる。それがこの本の面白いところ。
有機栽培でつくられた原料をつかったものには必ず昆虫が一定の割合で混ざることは避けられず、昆虫の入らない製品を作ろうと思えばどうしても殺虫剤を使わねばならない。どっちがいいんだろうか・・・(涙)。
新しいことばもいろいろ学んだ。以下備忘録として、ランダムに記しておきます。
*「深鍋の中に死がある」――19世紀の食品安全運動のスローガン。ピクルスが銅で緑色になっている、胡椒には掃き寄せた床の屑が混ざっている、菱形飴がパイプ白色粘土から作られている、紅茶がリンボクの葉でごまかされている、というような、命にかかわる食品偽装を警告するスローガン。19世紀にはほかに、カスタードに風味を加えるために危険な西洋博打木の葉を使う、チーズの発色をよくするために染料を使う、パンを白くするために漂白剤を使う、というようなことがおこなわれていた。
流通経路が複雑に枝分かれすればするほど、どこに偽装の源があるのかわからくなってしまうのは、現代にも通じる話。
*「買い手危険負担」(caveat…