
「ラグジュアリーの優勝劣敗を分けたもの」コメント協力しました
NewsPicks冨岡記者から取材を受けて「バブル終焉、ラグジュアリーの優勝劣敗を分けたもの」という記事にご協力させていただきました。最後の方にコメントが引用されています。
少しだけ補足するならば、エルメスにおいて一部のバッグを手に入れることは「特別な体験」を超えてもはや神話化しており、稀少性から二次流通でも高価格を維持しています。このように供給を絞る戦略と一貫したブランドイメージのコントロールを徹底し続けていることが、時代を超えるラグジュアリーブランドとして不動の地位を保っていけるシンプルな秘訣でしょうか。
ラグジュアリー領域で強みを発揮するには、大胆なプロモーションよりも「いかに顧客がブランドを体感し、敬愛し、長く愛着を持ってくれるか」を重視する姿勢が、継続的な信頼を築きます。
ほんとに蛇足もいいところですが、長期戦を闘うラグジュアリーブランドのあり方を研究するというのは、人の生き方を考えることにもつながります。各ラグジュアリーブランドの浮沈を観察することで、変わり続ける世界にあって、ブランドの世界観と伝統を損なわずにどれだけインテグリティを保ち続けられるかが長いスパンで見て勝負の分かれ目になるという教訓を、(人のあり方として)学ぶこともできるかと思います。
平たく言うと
・安売りするな
・時代にも客にも媚びるな
・時代がどうあれ、一貫性を保つべきところは誠実に保ち続けよ
・(精神の)自主独立を保て
・唯一無二のレアカードになれ
・高品質を極めることができる構造(日常)を作れ
・大声でPRするな
こういうことをエルメスを筆頭とする強いブランドの長期的強さから教訓として抽出できます。もちろん、理想実現にはハードルが高いのですが、心にいちおう、指針をもっているだけで、日々の選択や行動に違いが生まれてきます(たぶん)。
Don't…

「スーツの歴史」「世界のスーツ」解説
KASHIYAMAさんの動画サイトBE SUITS! 内の「服学」講師としてお招きいただき、「スーツの歴史」「世界のスーツ」について解説しました。
写真は撮影前に現場を調整するスタッフ…

『「イノベーター」で読むアパレル全史 増補改訂版』6月20日発売です
2020年に発売した『「イノベーター」で読むアパレル全史』ですが、おかげさまで、増補改訂版を出版できることになりました。
とはいえ二年がかりの大増補改訂、約500頁にな…

本質を見きわめて、起源をどこに置くかを考える
歴史家の仕事の一つは、現在の姿の本質を見極めて、「その起源をどこに置くか?」を考えること。
たとえばスーツだったらそのシステム、精神、かたちにおいてたどると少なくとも3つの起源を求めることができる。
・1666年10月 チャールズ2世の衣服改革宣言。「この服はもう変えることはない」という美と倫理の呪いをかけた。5つの構成要素からなるスーツのシステムの起源
・1810年代前後 ブランメルによるダンディズム。「通りを歩いていて振り返られたらあなたの装いは失敗だ」。抑制・消去・無彩色によりカット&フィットで際立つというスーツの精神の起源。連動して高度なテーラリングが発達
・1860年代前後 ドレスコードの厳格化により「くつろぎ」のためのラウンジスーツ誕生。ミシンの発明により大量生産が可能になりラウンジスーツが普及。スーツのかたちの起源。
細部の起源(着用マナーとかドレープの有無とか)を言い出したらさらにいろいろありますが、大きなポイントはこの3つかなあというわけで来年はスーツ(のシステム)生誕360年なのです。
*写真は2017年のロンドン取材の際に撮影 ジャーミン・ストリートを見守るブランメルの像
One…

Fashion Frontier Program 今年も講師を務めます
「FASHION FRONTIER PROGRAM(FFP)」において、今年も講師を務めさせていただくことになりました。
このプログラムは、ファッションデザイナーの中里唯馬氏が2021年に創設した、ファッションの未来を切り拓く人材を発掘・育成するためのプログラムです。単なるコンテストではなく、社会的責任と創造性を兼ね備えた衣服のデザインを通じて、ファッション業界全体、さらには社会全体の変革を目指しています。
FFPの特徴
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なぜLVMHがこれほど日本に注力するのか?
LVMHがいま、なぜ日本にこれほど大きな注力をしているのか?
中国市場が揺れる中、「ラグジュアリービジネスの未来」を模索するうえで、日本の文化的成熟度と消費者の洗練性が、かつてないほど重視されています。
アシュレー・オガワ・クラーク氏によるVOGUE…

半導体業界から伝統工芸界へ
北日本新聞「ゼロニイ」連載「ラグジュアリーの羅針盤」Vol. 31. 「半導体業界から伝統工芸の世界へ」。伊勢型紙に魅せられ、LEDの技術を活かして伊勢型紙を照明化するという「…

王道の確かさと静かな挑戦 jun ashida / TAE ASHIDA 2025AW
イタリア製の上質な素材(リサイクル素材を含む)を中心に、王道ラグジュアリーの確かさと、静かに大胆な挑戦が共存するコレクション。
アシンメトリーなカッティングや、異素材に見える一体布地のトリック、そしてヴィンテージ感覚の色彩ミックスなど、細部にまで仕掛けが潜んでいます。着たときの心地よさ、立ち姿の凛とした美しさ。その両方を叶える服。
A…

伝統工芸は、成長産業である
5月31日(土)開催の会に備え、立川裕大さんの編阿弥庵を再訪し、打ち合わせをおこないました。
「伝統工芸は、ブルーオーシャンで、成長産業である」と言い切れるのは、長らくラグジュアリー業界のなかで日本各地の伝統工芸をプロデュースしてきた立川さんならでは。いま、またとないチャンスが来訪しています。
ものづくりの価値とは、技術だけで測れるものなのか。
日本の方がよい製品を作っているのに、なぜヨーロッパのラグジュアリービジネスが「強い」のか。
そして日本は、なぜ「世界観」を育てるのが苦手なのか。
ラグジュアリービジネスの「語られない」部分とも深く関わってきた立川氏とともに、伝統工芸・プロデュース・デザイン・文化経済圏をめぐる、鋭い対話の時間をお届けします。
職人と文化が、産業になるために何が必要か。立川氏の実践と言葉の中に、ヒントが散りばめられています。
「伝統工藝の未来への糸口 ミドルウェアという立場からの実践」
5/31土14時~16時
帝国ホテル 松の間
https://gayohexplore-03-gentei.peatix.com/
In…

ホテルの部屋ごとに異なる香り LABSOLUE
イタリア発のフレグランス、LABSOLUE(ラブソルー)展示会。
ここのラボラトリーは、ミラノにある世界唯一のパルファムホテル(!)「マグナ・パルス」に隣接。そのホテルにある68室の一部屋一部屋のためにスター調香師がオリジナルの香りを生み出しているというユニークなパフュームブランドです。
香水の番号は、部屋の番号とリンクしている。アメニティだけでなく、部屋のデザイン、イメージもコレクションごとに創りこまれていて、忘れがたい香りの体験を提供するのだそうです。泊ってみたい✨
比較的ストレートな名前がついています。 15ラベンダ、23ネロリ、16ウード、など。とはいえすべてに絶妙にイメージを裏切るひねりが加えられており、上質で洗練された空気を醸成してくれます。
6月18日に発売されるのは、
7…

職人のレガシー The LOA
国宝級のマスターテーラーの一人、廣川輝雄さんが(英ロイヤルミュージアムでも作品発表、BBC放映)、このたび、超優秀な若手とともにThe LOA(Legacy of Artisan)設立。
女性の…

人間に立ち返る贅沢 日経連載「ラグジュアリー・ルネサンス」
日経連載「ラグジュアリー・ルネサンス」の第二回。
成熟した社会においては、ブランド表示や物質的豪華さはラグジュアリーの知覚とはほど遠くなっていく。ではそれに代…

欲望を「クラフト」する ロエベが体現するラグジュアリーブランドの新戦略
ラグジュアリービジネスにおいて、もはや「体験型マーケティング」を採用するか否かは議論の対象ではない。問われるべきは、その体験がいかに戦略的に設計され、刹那的な感動をいかに持続的なブランド資産へと転換するかという点である。
ロエベの「クラフテッド・ワールド」展(東京・原宿にて開催)は、この問いに対する一つの鮮やかな解答を示したと思う。
本展は、まず視覚的な迫力によって来場者を圧倒する。なかでも、話題を集めたスタジオジブリとのコラボレーションの部屋は幻想的で、赤ちゃんの撮影室と化していた(笑)。巨大な植物モチーフ、シュルレアリスムを思わせるクラフトのインスタレーション、細部まで計算された空間演出、アートとして並べられたドレス。いずれも「思わず写真を撮りたくなる」衝動を巧みに喚起される(写真撮影は自由)。撮影された写真は、ソーシャルメディア上で無数に拡散され、ブランドは広告費を一切かけることなく、圧倒的なプロモーション効果を手にすることになる。現代のラグジュアリーブランドに求められる最も洗練されたマーケティングの形であろう。
とはいえ、この寛大さを装った体験の背後には、取引構造が隠されている。入場は無料だが、チケット取得時に個人情報の登録が求められる。来場者は、一瞬の感動的な体験、写真をSNSに掲載する承認欲求の満足と引き換えに、自らのデータを自発的に提供しているのである。この取引はあまりに巧妙で、消費者はその対価にすら気付かないまま、ブランドにとって貴重な行動データと心理的ロイヤルティを残していく。…

ラグジュアリーブランドは日本で文化的影響力の再構築をめざす
LVMHによる日本へのてこ入れが積極性を増してますね。4月に2025年フォールコレクションを京都の世界遺産、東寺で開催したり、大阪万博のフランス館に協賛したり、村上隆とのコラボを復活させたり、ロエベの〈Crafted…

ヨコハマ薔薇祭り2025
すっかり恒例となりました、ヨコハマの薔薇の記録。5月7日の山下公園、海の見える丘公園、イギリス館あたりですが、薔薇の良い香りのなかを歩くのは至福です。おそらく母の…

レースが紡ぐ美と社会の物語 プレシャス6月号
「Precious」6月号発売です。レース特集の巻頭で「レースが紡ぐ美と社会の物語」を見開き2ページにわたり書きました。
歴史的にラグジュアリーの象徴とされてきた装飾的な布ではありますが、であるからこそ、社会情勢の影響をもろに受けてきました。
奢侈禁止令の対象となり、フランス革命では迫害され、産業革命では階級闘争を激化させ、アイルランド飢饉を救い、現在のかわりゆく価値観のなかで再発見されています。レースを通して読む歴史、ほんとうに駆け足ではありますが、お楽しみいただけたら幸いです。
The…

ご視聴ありがとうございました BSフジLIve「PRIME NEWS」
5日(月)20:00 ~ 22:00 放送のBSフジLIVE PRIME NEWSに出演しました。ご視聴ありがとうございました。
2時間の生放送でしたが、話したりないことも多々あり、あっという間でした。
…

吉田茂のスーツに見る戦後日本の決意
吉田茂元首相のスーツ姿は、敗戦後の日本の外交理念と国際的な矜持を体現していた。
彼のスーツは単なる個人の趣味を超え、敗戦国・日本が再び国際社会に復帰するための、「装いによる国家戦略」であった。
吉田は戦前、駐英大使を務めた経験を持つ。1936年から1938年にかけて滞在したロンドンでは、外交儀礼のみならず、英国紳士の装いの作法を徹底して学んだ。サヴィル・ロウの仕立て文化に触れた彼にとって、スーツとは、知性・品位・信頼を象徴する「教養の外皮」であった。そこには、戦後日本が「文明国」として再出発するにあたり、欧米と対等な文化コードで交渉を行うという、深い戦略的意図が込められていた。
帰国後、吉田が愛用していたとされるのが、東京・銀座の老舗「テーラー神谷(かみや)」である。同店は明治から昭和にかけて、英国式仕立てを忠実に守り続けた名門であり、多くの政財界人や文化人が顧客として名を連ねる。吉田は、ダブルの三つ揃いスーツを好み、クラシックで重厚なラインを崩さなかった。加えて、外出時に携えたステッキや控えめなポケットチーフは、英国紳士の名残を感じさせ、敗戦直後の日本において異質とも言えるほどの威厳と洗練をまとっていた。
このような装いは、講和条約や安保条約といった歴史的交渉の場において、極めて有効な視覚的言語となった。そして、視覚におけるこの「同調」と対をなすように、吉田は言語において「ずらし」の戦略を取る。1951年のサンフランシスコ講和会議において、彼は英語を完全に操るにもかかわらず、あえて日本語で演説した。そこには「自国の言葉で主権を回復する」という強い意思が込められていた。姿は西洋の形式を纏いながら、言葉はあくまで日本語。まさに日本という国の立ち位置そのものであった。
服装により「国際社会への復帰の意思」を示し、言語により「文化的主権の堅持」を宣言する。その両方を同時に成立させることで、吉田は敗戦国・日本の再出発を強いメッセージとして打ち出したのだ。
注目すべきは、そのスーツが流行を追うものではなかったという点である。生地、ラペル、シルエット、どれもが永続性と格調を重視した選択であり、一過性の時流とは一線を画していた。混乱期にあって、吉田の装いが放った静かな重みは、国民に知的な安定感と、国家としての成熟した自己像を示すものだった。
彼の装いは、戦後日本が掲げた「外交による再建」という道のりにおいて、視覚的信頼の基盤を築いた。それは今なお、日本の政治家がスーツに込めるべき意味を問い続ける遺産でもある。
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ロシア・中国・北朝鮮 服装政治学
外交や儀礼の場において、国家指導者が何を着るかは、体制の正統性、歴史との向き合い方、そして対外的なメッセージを可視化する記号として機能する。とりわけ旧共産圏諸国における「伝統的人民服」の扱いを見比べると、その違いは際立っている。
たとえば中国や北朝鮮の指導者は、今なお人民服(中山装やその亜種)を重要な儀礼の場でまとい続けている。単なるノスタルジーではない。彼らの国家体制そのものが、いまもなお「革命政党の支配」という枠組みにあり、人民服は体制の成立過程と不可分な象徴だからだ。すなわち、服装を通じて彼らは、「革命は終わっていない」というメッセージを発信していると見える。
一方、ロシアの指導者が公式の場で伝統的な民族衣装やソ連時代の制服を身にまとうことは、極めて稀である。プーチン大統領をはじめとする現政権は、国際標準に則ったビジネススーツを着用し、過去の体制的な衣装とは距離を置いている。この違いは、ソ連崩壊という「体制の断絶」がロシアにおいては歴史的事実として明確に位置づけられていることによる。1991年以降、ロシアは国旗・国章・国歌のいずれにおいても「帝政への回帰」を選択し、ソ連時代の象徴を公的装いから排除することで、新生国家としてのアイデンティティを確立しようとしてきた。
つまり、ロシアにとって服装とは「過去との距離感を測る手段」であり、中国・北朝鮮にとっては「過去との連続性を誇示する装置」なのだ。
加えて、民族主義と服装文化の文脈も異なる。中国や北朝鮮では、西洋的装いから距離を置くことが「自立と誇り」の表現とされやすい。対してロシアは、帝政、共産主義、資本主義と体制が大きく変遷してきたため、特定の服装に統一された国家的アイデンティティを託すことが難しい。結果として、最も中立的かつ現実的な装いであるスーツがデフォルトになっていった。
近年、プーチン政権はソ連的な記号や英雄像を部分的に再評価しつつも、それを服装として再現することはほとんどない。そこには、イデオロギーではなく現実主義に基づく対外戦略の姿勢が透けて見える。
Photo: William…

「人民服」から「スーツ」へ 金正恩の装いにみる外交戦略
北朝鮮の金正恩総書記が何を身にまとうかは、彼の政治的スタンスと国際社会へのメッセージを視覚的に象徴する。2018年の米朝首脳会談においては人民服、2023年の露朝首脳会談ではビジネススーツを着用した。この服装の違いは、北朝鮮の外交戦略の変化を如実に物語る。
2018年6月、シンガポールで行われた米朝首脳会談。金正恩氏は、父・金正日も好んだ黒の人民服で登場した。人民服は社会主義国家の指導者にふさわしい「反西洋」の象徴であり、資本主義の権化たるアメリカに対する北朝鮮の独自路線を強く印象づけた。この時期、北朝鮮は核・ミサイル問題をめぐる緊張のただ中にあり、人民服はあえて「国家主権を譲らない」という意思表示として機能した。相手がいかに強大な国であっても、北朝鮮の体制と思想は不変である。そんな強硬な自画像を、彼の人民服から読み取ることができる。
一方、2023年9月のロシア訪問では様相が異なる。極東アムール州で行われたプーチン大統領との会談において、金正恩氏はダークスーツにネクタイという、いわば国際標準の装いだった。この選択は、人民服に込められた体制の象徴性を意図的に脱ぎ捨て、「実利を求める交渉者」としての顔を前面に押し出したものと解釈できる。経済制裁下にある北朝鮮にとって、ロシアとの軍事技術協力や物資支援は切実なテーマである。スーツという現代的で合理的な装いは、こうした現実的利害を共有する同志としての立場を演出する。
装いは、多くを語る。人民服を選んだとき、彼は体制の正統性を視覚化し、権威とカリスマを内外に示した。スーツを選んだとき、彼は外交ゲームのプレイヤーとして、共闘と取引のテーブルに着く姿勢を表現した。
この二つの装いの対比は、北朝鮮外交の二面性──理念と実利、孤立と連携、硬直と柔軟──を浮き彫りにする。服は、国家が世界とどう向き合うかという立場をまとう鏡になっている。
Photo:…

