
パレスホテル東京「エステール」でアラン・デュカス氏を囲む昼食会
パレスホテル東京のレストラン「エステール by アラン・デュカス」が5周年を迎えました。おめでとうございます。来日中のアラン・デユカス氏を囲む昼食会が開かれました。
エステールの料理には、フランス料理のDNAと日本的な繊細さが共存しており、自然の恵みを尊重する「職人としての料理人」というデュカスの哲学が根底にあるそうです。料理は模倣ではなく、自然や文化からのインスピレーションを経て創造されるべきものであり、それが「唯一無二の体験」として記憶に残るとデユカス氏は語りました。
<ラグジュアリー>
せっかくの機会でしたので、デュカス氏のラグジュアリー観も質問しました。「ラグジュアリーとは、職人が手がけた一点物である」という信念を語り、日本の職人文化を「世界最高峰」と称賛。長年モナコで腕を磨いた小島景シェフを「フランス人であり日本人である、理想的なブレンド」と表現し、日仏の融合を体現する唯一無二の存在として信頼を寄せていたのが印象的でした。お二人の長年にわたる強い絆を感じました。
また、料理だけでなく、器、空間、サービス、人の気配。そうした無形の素材こそが、記憶に残る贅沢を生むと強調。「デリシャス」という言葉には「心地よさ、美しさ、優しさ」が含まれており、五感と心に響く体験の提供こそが自身の使命である、と語りました。
<未来の構想>
デュカス氏は、「美味しい食事とは、単なる栄養摂取ではなく、美しい思い出を生むもの」と定義したうえで、ベジタリアンを基本とした新しい大衆食堂「サピド」を構想中であることも紹介しました。ソウルへの進出や、フランスでの歴史建造物の再活用(ジャン・プルーヴェ設計「メゾン・デュ・プープル(MDP、メゾン・デユカス・パリの頭文字にもなる)」の再生計画)など、社会的・文化的インパクトを伴う食のあり方を追求する姿勢に、彼が料理人を超えた文化人として敬われる理由を見る思いがします。
若い才能の発見にも積極的で、シリアやメキシコなど困難な状況から生まれる料理人にも注目。「明日はより良い日になると信じなければならない」という言葉に象徴されるように、不確実な時代だからこそ前を向いて進むべきだという、力強いメッセージを最後に残されました。
<一流と超一流を分かつもの>
一流の料理人は多いけれど、超一流となると限られてくる。その違いはどこで生まれるのか?とも質問してみました。デユカス氏の答えは「情熱と意欲」。なるほど、分野をとわずこれを持続させることができる人が、突き抜けていくのでしょう。
美食を超えた文化の料理のあり方を再考させる、永く記憶に残るであろう時間でした。前日には書籍も発売されたばかり(祝!)、参加者ひとりひとりにサインを入れて手渡してくださいました。
パレスホテル東京の総支配人、渡部勝さんはじめスタッフのみなさま、ありがとうございました。スタッフひとりひとりが、マニュアルではなく、お気持ちのこもったサービスをしてくださるんですよね…。渡部勝GMは、「トラベル+レジャー」の2025年アジアパシフィックの読者投票にて、総支配人部門で日本の1位を獲得しています(祝!)
Esterre…

「ブリティッシュ・アイビー」GQ記事 ウェブ転載されました
近年、日本で耳にする「ブリティッシュ・アイビー」なるファッショントレンド。
GQに寄稿した記事がウェブ転載されました。
イギリスではあまり聞かない表現なのですが(植物のアイビーのことかと思われる)、その源流を解説しました。
「アイビー」はアメリカで確立されたスタイルですが…

人文学が工芸を救う
北日本新聞別冊連載「ラグジュアリーの羅針盤」Vol. 32は、「世界観を編む叡智 人文学がローカルな工芸を救う」
雅耀会でお迎えした立川裕大さんの講演から連想を広げ、世…

闇をくぐり抜け、光をまとう セルジュ・ルタンス「ルペルスヴァン」
セルジュ・ルタンスの紹介と新作「ルペルスヴァン」を発表する資生堂のプレゼンテーション。
セルジュ・ルタンスは、「香水のクリエイター」という枠に収まりきらない。写真家、映像作家、ディオールや資生堂のクリエイティブディレクター、何より、香りに人生のすべてを託す「語り部」として、独自の美学を貫いてきたマエストロ。
1942年、フランス北部リールで婚外子として生まれた彼は、幼少期から孤独と疎外を抱えて育った。母に置き去りにされ、いじめのような目にもあった少年時代。その痛みはやがて、優しさと同等の感覚になって、香りという形に昇華されていく。
14歳で美容師としてキャリアを始めたのち、ヴォーグ誌のビューティー部門に見出され、やがて資生堂のイメージ刷新に寄与。自身のブランドを立ち上げたのは、60歳目前という遅咲きの決断だったが、込められた緻密さと深さは群を抜いて別格だった。
そして2025年、彼が世に問うた最新作が《ルペルスヴァン》。「風を突き抜けるもの」を意味するこの名は、ルタンス自身が創り出した造語であり、一篇の詩でもある。
この香りは、人生の嵐の中で、一瞬の安息と希望を与えるものに近い。雪を破って咲くスノードロップ(雪割草)に着想を得たという名前と香りは、前例がなく、なにげないのに強い。
ムスクを基調に、果実と花が交錯し、ルタンスが独自に名づけた「モヘア」というファミリーに属するこの香りは、肌に寄り添うように変化し続ける。主張することなく惹きつけ、密やかな対話を誘うような存在感。内面と静かに響き合う香りです。
ルタンスにとって香りは、言葉では届かない感情を伝える仲介者であり、時には救済そのものだという。《ルペルスヴァン》の静かな佇まいの背景にも、彼の人生の大きな転機となったモロッコでの体験が息づいている。
1968年、カサブランカの地に降り立った若きルタンスは、オレンジの花の香りに包まれて、自らの傷と向き合う時間を過ごした。以後、モロッコは彼にとって「光と再生の国」となり、多くの香水に影響を与えてきた。
《ルペルスヴァン》は、彼のそんな人生の集大成ともいえる作品。傷つきながらも前を向くすべての人に、光を届ける。そんな祈りのような神聖な感覚のある香り。個人的にはこの夏の記憶の一部はこの香りと結び付けようと思うほど魅了されました。
Serge…

半年間のラグジュアリーゼミナール
While education and discussions around luxury are gaining momentum in many countries outside Japan, the topic is still often avoided or met with indifference here.
Each time I’ve been invited to speak at various venues, I’ve advocated…

ラグジュアリーは、装いによって自己と文化の形を変える力である
新著『「イノベーター」で読むアパレル全史 増補改訂版』、全11章の各章の扉につけた格言風のことばのなかから、たとえば第6章「ラグジュアリーブランドの系譜」の扉につけた次の言葉をちょっと補足させていただきたい。
Luxury…

Not to cover. To reveal meaning. That is apparel. 「覆うためではなく、意味をあらわすため。それが装いだ」
『「イノベーター」で読むアパレル全史 増補改訂版』本日、発売です。
ご協力を賜りました方々に、あらためて、厚くお礼を申し上げます。
各章扉につく格言(英語・日本語)も、著者の私が作成いたしました。先人の名言をもっともらしく引用するのはもう十分、やりつくされた感もあります。自分が新しく言葉を作ってもよいのではないかと思い、挑戦しています。
西洋と日本、ハイブランドから日本の先駆者、裏原から伝統工芸まで、100人の変革者を通してアパレルの今を概観しました。
初版にあった口絵の年表をはずし、代わりに、LVMH、ケリング、リシュモン、それぞれの傘下にある全ブランドを一覧にしました。エルメスの家系図もつけております。巻末には日本のファッションブランド一覧をつけました。参考文献、参考映画一覧も整え、全494頁です。
“The…

十三夜の不完全な美 銀座・和光 展示会
銀座・和光2025秋冬展示会。
時計、宝飾、皮革製品、ファッション、スイーツ、伝統工芸まで、日本の職人が創り上げたユニークなストーリーをもつ品々。
「日本文化の発信」を明確に掲げ、文化イベントも多々企画しています。
ジュエリーのモチーフにはとりわけ日本の洗練された思想を感じさせるものが多く、たとえば「十三夜」と名付けられたジュエリーは、少し円が欠けた月の形。しぶい…。
ルームフレグランスも「墨の香り」など、なかなか斬新な日本的発想を感じさせるものがあり、多々刺激を受けました。
和光は、モノを超えて、物語を手渡す場所。「和の光を未来へ」とつなぐ銀座の灯台のような。
WAKO…

ラグジュアリーの価値観をアップデート MEN’S EX 2025 SUMMER ISSUE
Men's EX 2025年夏号は、ラグジュアリーライフ特集。マテリアリスティックな話が多い誌面ではありますが、そのなかで「ラグジュアリーの価値観をアップデートする」というテーマで取材を受けました。ラグジュアリーの歴史の概要から最新のトレンドまで。大雑把な年表つきです。ラグジュアリー文化を考える糸口になれば幸いです。
The…

ケリングCEO交代
日曜の夜にフィガロ紙がさらっと第一報を報じました。ケリングがルカ・デメオ氏を新CEOに起用するようです。自動車業界出身という異色の人選ながら、デメオ氏はフィアットや…

ブルネロ クチネリ2025秋冬 「直感と理性」
前半はまるで文学部の講義のような展示会でした。2025年秋冬のブルネロ クチネリ・ウィメンズコレクションのテーマは「直感と理性」。
単なる抽象概念にとどまらず、それを表現するビジュアルとして「乗馬」と「英国モチーフ」へと昇華されていました。
乗馬の世界を思わせるテーラリングやカシミアケーブルのジャケット、メタルボタン、しなやかなコーデュロイ、プリンス・オブ・ウェールズ・チェック(=ガレス)など。英国のカントリーと紳士文化に根ざした素材やシルエットには、18世紀にルソーが唱えた「自然に帰れ」という思想の余韻が漂っています。
しかも、すべてのモチーフが大胆にアップデートされているのです。シャイニーなプリンス・オブ・ウェールズ・チェックには心奪われました。
このコレクションは、都市の理性に対する感性の回復、つまり人間性を取り戻すためのカントリーライフ礼賛の現代的再解釈とも言えるでしょう。その思想的基盤を18世紀のルソーから抽出している、というか。
そんなコレクションに通底するのは、合理性と官能性、構築と緩やかさのバランス。厳格すぎず、甘美すぎない。自然と文化の調和を志向する美意識は、まさに「人文学的ラグジュアリー」の体現になっていました。
世界観を築くために、人文学の深みが必要とされる時代に、ブルネロ…

「レースが紡ぐ美と社会の物語」Precious.jpに転載
クワイエットラグジュアリーへの反動からでしょうか、今シーズンはレースが華やか。
手間暇がかかり、高い技術を要する稀少品であったこともあり レースはラグジュアリーの象徴でもありました。それゆえに、階級とラグジュアリーが結びついていた時代には…

千總「絵と着物」日経ウェブ版に公開されました
Nikkei The STYLE 掲載の千總に取材した記事が、ウェブ版に公開されました。
会員登録なしで全文お読みになれます。
江戸幕府による贅沢禁止令で華やかな刺繍が禁じられ、 「…

『「イノベーター」で読むアパレル全史 増補改訂版』(日本実業出版社)
新刊『「イノベーター」で読むアパレル全史 増補改訂版』の見本が届きました。質・量ともにオリジナル版から大幅にパワーアップいたしました。社会にインパクトを与えたクリエイター、経営者、ディレクター、エディター、学芸員まで、西洋と日本を広くカバーしています。変革者の情熱と功績に焦点を当てながらファッションの推移をたどる、類のないファッションの近現代史です。
ご協力を賜りました多くの方々に、厚くお礼を申し上げます。
The…

S. S. Columbia in Disney Sea
ディズニーとのささやかなコラボ仕事が決まったどさくさにまぎれ、
ディズニーシーの中の数少ないおとなのスペース、SSコロンビア号の中のラウンジでプチお祝い会をしてい…

戦争、格差、分断のもとでのラグジュアリーとは
戦火のもとで、刺繍は希望と人間性の証となる。
ガザの女性たちが難民キャンプで縫い上げたパレスチナ刺繍と日本の帯が出会い、 紡がれた、新たな美とラグジュアリーの形。
「溺れている人に、国籍を問うか?」この言葉がずっと重く心にのしかかると同時に、かすかな希望にもなっています。
戦争、格差、分断の時代におけるラグジュアリーの意味とは。
日経新聞連載「ラグジュアリー・ルネサンス」第3回は「戦火のもとでの美と共創 海超えた刺繍と帯の融合」です。
中央の女性が掲げているのは、ガザの避難所のなかで作られたばかりの刺繍。
English…

派手婚、地味婚、ナシ婚
明治神宮大全に収録予定の「婚礼のモード」のための研究メモその2です。石井研士先生『平成以後の結婚式の併用と儀礼文化の現在』を関連事項に絞って要約。
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神前結婚式からチャペルウェディングへ
明治神宮大全に寄稿するための「婚礼のモード」をテーマにしたエッセイに、目下、鋭意取り組んでいます。大量の文献を読みこんでいるのですが、そのいくつかの要約を備忘録として残しておきます。以下は、國學院大學神道文化学部教授…

雅耀会 立川裕大さん講演@帝国ホテル
雅耀会第3回、立川裕大さんをお迎えした会、「伝統工芸の未来への糸口 ミドルウェアという立場からの実践」が盛況のうちに終了しました。
経産省、メディア、大手ラグジュアリーコングロマリット、クリエーター、ジャーナリスト、伝統工芸従事者、ブランディング専門家、大手百貨店など多様な業界において最前線で活躍する方々が参加され、ご参加者の一人の言葉をお借りすると「エネルギーの強い時間」を共有させていただきました。パッションあふれる立川さんのお話そのものにも引き込まれたのですが、質疑もまた発見の連続で、濃厚な時間を過ごさせていただきました。
長年にわたり日本の伝統工芸技術をラグジュアリー領域で通用する製品、ホテル、インテリア、空間デザインに応用してきた立川さんの目から見た、日本の伝統工芸を巡る現状と、そこに潜む課題や未来の可能性。なかでももっとも重要と思ったことに関しては、後日、記事化します。
帝国ホテルのスタッフにもきめ細やかに場を整えていただきました。
立川さん、主催者、ご参加の皆様に心より感謝いたします。(今回は序と結びを中心とするコメンテーターを務めさせていただきました)
The…

「着物と絵の深い関係」Nikkei The STYLEに寄稿しました
6月1日(日)付け日本経済新聞The STYLEで、千總×加藤泉「絵と着物」を展開する千總の礒本延社長にインタビューした記事を書いています。
京友禅のはじまりが、贅沢禁止令…

